私には、最近悩みがある
それは………
騒がしい昼休み
私のクラスに、頬を赤らめながら
数人の友達を連れた女の子が顔をひょっこり出した
彼女の手には
可愛らしいリボンの付いた袋が握られていて
私はこれだけですべてを察す
紙袋を受け取って、その子の顔と交互に見る
この子、やっぱり倫太郎のファンなのか
私は良いよなんて返事はしてないのに
連れの女の子達は「良かったやん!」なんて
肩を叩き合っている
そのまま私が返事をする隙もなく
「じゃあ、よろしくね!」なんて清々しい顔で
去って行ってしまった
“ また ” 受け取ってしまった、
と自己嫌悪に襲われていると
後ろから、ドス と背中をどつかれた
頭ごなしにそう叫ぶ長身で金髪で
一見チャラそうに見えるが精神年齢は低い男
私のクラスメイトであり部活仲間の宮侑だ
負け犬の遠吠えのごとく
くどくどと文句を言ってくる侑を押しのけ
自分の席に座った
私は、
稲荷崎高校バレー部のマネージャーであり
事の発端、私の悩みの種_角名倫太郎の幼馴染だ
稲荷崎のバレー部は
マネージャー希望が殺到する
しかし、それは間違いなく
宮ツインズや倫太郎目当ての下心丸出しの理由で
中々マネージャーが入らない
私は倫太郎の幼馴染だし
宮ツインズなんて興味がないから
マネージャーにしてもらったが
マネージャーになれないからって
私にプレゼントを渡すのはやめてほしい
宮ツインズに渡して、とかだったら
私は特に気にせず渡す
ただ喜んで、双子同士貰った数を
競って喧嘩するだけだから
だけど、倫太郎は……
放課後 部活前__
私は倫太郎のクラスを
重い足取りで訪れていた
彼はつまんなそうにスマホをいじっていたが
私を見るなり大きな欠伸をして
「今行くー」と行ってその場に突っ伏してしまった
仕方なく教室に入って
倫太郎の机を大きく揺らす
ただ、倫太郎の大きな体は
体幹のせいか動くはずはない
そう言っても、倫太郎は顔を上げる気配すら
示さないので もうあきらめることにした
プレゼントだけ置いて先行こう、もう
倫太郎の顔を伺うことなく
机に、今日の昼休みに押し付けられた
倫太郎ファンからのプレゼントを置く
そう言って、鞄を持ち直し
クラスを離れてようとすると
ぐい、と手首を掴まれた
あー、やっぱり……
こうなるから嫌なんだよ、プレゼント渡すの!
やっと机から顔を上げたが
明らかに不機嫌な顔で
目を細めて 眉間にシワを寄せる倫太郎
私の手首を掴む力がぐっと強くなる
倫太郎は、
ファンから貰ったプレゼントを
“ 私から ” 渡されるのをすごく嫌がる
途中から言い訳になってしまう私が
なんだか悔しくて 語尾が小さくなっていると
いつの間にか私の目の前に立った倫太郎が
こっちに向かって歩いてくる
嫌な圧を感じて、後退りしていると
気づけば トン、と壁に背中がついた
わざと私の顔の横に手をついて、
壁ドンしてくる倫太郎
こういう時の倫太郎が1番怖いことは
私が1番知っている
倫太郎の手を退け 体育館までの廊下を歩き出す
彼も、渋々着いてきて 私の隣に並ぶ
歩きながら 何気なくそう聞いた
そう、本当に何気なく
すんなり、そう言う倫太郎に
驚きのあまり足を止めてしまう
倫太郎もつられて足を止め、
私の方へ振り向いた
ほんの、遊び心だった
さっき、驚かされて
壁ドンもされて 何だか倫太郎の一枚上手感が
否めないのが悔しくて
自分でも、結構ガッツリ煽ったつもり
倫太郎が本気になって
好きな人の前に悩む姿、見てみたいやん
そんな言葉を聞いて、
倫太郎はふ、と笑った
この時の私はまだ知らなかった
私の幼馴染、
角名倫太郎の本気が
甘すぎることに
___「 角名くんの本気が甘すぎる 」
next ★×100
♡×50
◇ あなたの名字あなた
◇ 稲荷崎高校2年2組 バレー部マネージャー
◇ クラスメイトの前では “ 角名 “ 呼び
◇ 角名倫太郎の幼馴染 / 宮侑と同じクラス
◇ 角名くんは公式ファンブックにて
愛知県出身で、稲荷崎からのスカウトで
兵庫県に来たことになっておりますが
こちらの小説でもその設定を使うかもしれないし
使わないかもしれません……(微妙)
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。