第8話

【始まりの気付き。】
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2018/12/05 03:17
園長さん
園長さん
ごめんね…いずちゃん。
あなたにちゃんと伝えられなくて。
もっと早くちゃんと
伝えておくべきだったね。
いず
いず
園長さん…
園長さん
園長さん
さっきそうくんがきてね、
『いずが悩んでるんだけど
園長なら分かるよね?って。』
彼も良い顔をしてたわ。
いずちゃんとの出会いが
良い刺激になったみたいね。
ありがとう。
いず
いず
そうが変わることができたのは
そう自身の力だと思います。
私達家族のことは
園長さんが謝ることじゃないです。
私も目を背けてきた事ですから。
それと、両親を呼んでくださって
ありがとうございます。
園長さん
園長さん
いいえ。私も
良い機会だと思っていたの。
園長室で待ってらっしゃるから、
家族だけで話してみなさい。
気持ちが伝わると良いわね。
いず
いず
ありがとう。
行ってきます。
いず
いず
(心臓がバクバクいってるのが
嫌でも分かる。これをきっかけに
ギクシャクしたらどうしよう…)
ううん。
こんなことで私達が気まずくなることは無い。
そんなことは分かってるんだ。
私は…私の思いを伝えるだけ。
もう一回父と母からちゃんと聞きたい。
《《ガチャ》》
泉の母
泉の母
泉…
いず
いず
お母さん…
泉の父
泉の父
泉、ここに座りな。
いず
いず
うん。
泉の母
泉の母
泉……。18年間…かしらね、
今までずっと黙ってて…
言えなくてごめんなさい。
泉の母
泉の母
泉の本当の両親はね、
私達なの。
一度、泉を置いてきぼりにして
今更なんなんだ…って
話だけど…ね。
泉の父
泉の父
泉との今の関係が
変わってしまうんじゃないかって
ずっと言えずにいたんだ…。
すまない。
泉の母
泉の母
でもね…っ
泉のことを世界で一番愛してるのは
私たちなのよ。これは本当。
泉を置いてきてしまってから
3年間。ずっと後悔していたの。
泉の母
泉の母
だから、仕事をもらって
私達で生活できるように
なってから、
泉を迎えに行ったのよ。
だけど…泉はとても傷ついていて
私達のしたことは
とても残酷なことだったのだと
改めて思い知った…。
泉の父
泉の父
だから、引き取ると
いうことにしたんだ。
子供にあんなことを
してしまったのに今更、
本当の親だと名乗ることは
許されないと思ったんだよ…。
泉の母
泉の母
だけどね、
泉がまだ私達と一緒に
暮らしてくれるなら…
まだこれからだって
ずっと一緒にいたいのよ…
泉の母
泉の母
だって…愛しているから…。
愛しくて仕方ない
私達の大切な娘だから…。
いず
いず
ほんと…今更だよ…
泉の母
泉の母
……っ
そうよね…ごめんなさい……
泉の父
泉の父
これからのことは泉が
自分の意思で決めると良い。
僕たちとの生活が嫌なら…それで……
いず
いず
違うよ……っ
ほんと今更だよ…
私だってお父さんと
お母さんのことは世界で
一番大好きなんだもん。
いず
いず
これからだってずっと
一緒に居たいに決まってる。
泉の母
泉の母
泉……
いず
いず
大好きだよ…。
ずっとずっとこれからだって。
いず
いず
私を愛してくれて…育ててくれて…
本当にありがとう。
泉の母
泉の母
ありがとう…。
私がずっと両親との関係のことを
知っていたことはまだ黙っていよう。
大切な両親から聞いてない言葉は
真実を知った…ということにはならない。


だから私は真実のことを
本当の意味で今、始めて知ったことになる。



私達のスタートは今、ここから。
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そう
そう
話せた……?
いず
いず
うん。ありがとう。
そう
そう
目が腫れてるよ…。
モデルと女優業をこなす、
人気絶頂のizuが
そんな顔をしてたら駄目でしょ?
いず
いず
ふふっそうだね!
ありがとう…
いず
いず
そうもすっかりよく喋るように
なっちゃって…
そう
そう
僕はもともとこうなんだよ?
僕も両親とのことが
分からなくなってこんがらがって…
一人じゃどうしたら良いのか
わからなくなってたんだ…。
自分が本当に存在していて
良いのかさえも
いず
いず
今は…?
そう
そう
案外単純だったね…。
自分が必要とされている場所も
自分が自分らしくいられる場所も
ちゃんとあった。
僕が目を背けていただけ…。
一人で勝手に思い込んで
前に進もうとしなかったから。
いず
いず
そうだね。
自分から進んでいけばちゃんと
切り開いていける。
進もうとしなければそれこそ
本当にどこにも
たどり着けないからね…。
私も今やっと気づくことができたよ。
そう
そう
うん。
このドラマの撮影が終わったら
僕もちゃんと向き合うよ。
いず
いず
よし!!明日の撮影も頑張んないと。
私が今日できなかったことも
明日の私は完璧に…それ以上に
こなしてみせるから!!
そう
そう
さすがだね、


私達が悩んでいたことも…恐れていたことも…

案外単純なもので、向き合ってみれば


複雑に絡まっていた結び目も
         簡単にほどけていく。
家族も…友達にも…自分にだって

心の中にある固い結び目をとく力はみんなにある。
この人といたら落ち着く…安心できることが
あるように、

みんなそれぞれ特別な何かを持っているから

自分が他の人と違っていることがあっても
それは当たり前のこと。


自分と同じ人は絶対にいないから…。
いず
いず
(みんな…特別な力を
持っているのかもね……。)
そう
そう
人にはない
変な…特別な能力持ってるから
僕は嫌われて拒まれるのだと
思っていたけどさ…
そう
そう
僕だけじゃなくて
みんなそれぞれ特別なんだよね。
izuが今、思っていたように。
いず
いず
っ!!また心の声を聞いたね?
集中しないと
そんなに聞こえないんでしょ?
そう
そう
人の心をむやみに聞くのは…
今日が最後。
そう
そう
自分が人とは違う力を持っていたから
拒まれるんじゃなくて
自分に自身がなくて卑屈になって
人を傷つけてしまう僕だったから
拒まれてたんだよね。
そう
そう
izuはとても暖かい…
人を暖かい気持ちにさせる…。
あの監督さんも
人を惹き付ける…みんなが
ついていきたくなるものを
もってる。
みんな…みんなが、特別な
ただ一人の特別な力を持った人。
いず
いず
そうだね…。
みんな!特別な人間で
それぞれ生きていく意味があるから。
いず
いず
私もこのドラマで伝えないと!
よし!そうと決まれば
特訓しないとね。
そう、つきあって!
そう
そう
うん。いいよ、


私達は太陽がすっかり姿を見せなくなる頃まで
夢中で台本を読み続けた。
それはあの頃…幼い頃に感じた…
        わくわく、そのものだった。
これから何が始まるんだろう?
まだ見えない
何かに向かって夢中で走り続けていた幼い私。
いず
いず
(これからが本当の始まり。
やっとスタートラインに
立つことができた…。)
さぁ、始めよう。

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