第2話

落ちてくる、紅白の少女
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2022/12/18 14:08





雄英体育祭





1年の表彰も終わり、辺りが熱気に包まれていた頃


上空では、空間が揺らいでいた

誰も気づかないのも無理はない
それは、本当に一瞬の出来事であり、観客の熱気や歓声によって、かき消されてしまう

そしてそこから、紅白の少女が落下していたことも、誰も知らなかった














体育祭は、いよいよ幕を閉じようとしていた
大勢の人々の興奮や歓声が、会場全体を熱く盛り上げている
オールマイト
オールマイト
_____ てな感じで最後に一言!皆さんご唱和下さい!せーの!!
観客
プルスウルトラァ!!
オールマイト
オールマイト
お疲れ様でした!!
観客
え〜!そこはプルスウルトラァウルトラでしょ!オールマイト!!
最後の最後で盛大なブーイングが起こり、締まらぬまま体育祭は幕を閉じようとしていた


突き刺さるような観客の視線から逃れようとしたオールマイトは、会場の屋根にポッカリと空いた穴から空へ視線を逸らした

と、オールマイトの動きがぴたりと止まる
その様子に気づいたミッドナイトも、同じように群青の空を見上げ、固まった
プレゼント・マイク
プレゼント・マイク
huh?どうしたんだ?
イレイザーヘッド
イレイザーヘッド
(空…)
イレイザーヘッド
イレイザーヘッド
…!?
プレゼント・マイク
プレゼント・マイク
なんだ、イレイザー?…空?
つられて空を見上げたマイクは、忽ち驚愕の表情に変化した
プレゼント・マイク
プレゼント・マイク
なっ…、人ォ!?
教員らの視線の先には、人影があった
遥か遠くの、上空に

マイクの声に、観客や雄英生は一斉に上を見上げた
瞬間、辺りは騒然となる
観客
嘘…、人!?
観客
うわっ、マジで落ちてきてるぞ!!
爆豪勝己
爆豪勝己
あ?
轟焦凍
轟焦凍
マジかよ…
緑谷出久
緑谷出久
人、って…、空から…!?
表彰を受けていた爆豪、轟
そして、そばでその様子を見守っていた緑谷ら雄英生は、まさかの事態に唖然と立ち尽くしていた

こんな事態、誰が予想できただろうか
観客
何をどうしたら、あんな高い所から…!
観客
うわ、しかも女じゃない?
紅白の少女と地面との距離が近づくにつれ、だんだんと騒めきが大きくなる
と、オールマイトが、少女を見上げて、ぐっと腰を落として構える
オールマイト
オールマイト
どういうわけかは知らんが、待ってろ少女!今助けるぞ!!
そう言うと、地上に風圧だけを残して、落下する少女の元へと一直線に飛び出す
手を伸ばし、後頭部と両脚を優しく抱えると、勢いを弱め、元いた場所へと着地した

しばらくの沈黙の後、観客席や表彰台の前から、大きな歓声と拍手が沸き起こった
観客
おおぉぉぉっ!!
観客
すごい…!あんな高い所へ、一っ飛びで!!
観客
さすが、平和の象徴!!
プレゼント・マイク
プレゼント・マイク
ふう…、取り敢えず無事か?
安堵の溜息を漏らし、再び腰を掛けたマイクの言葉に、隣のイレイザーは、少女を見つめながら「いや…」と呟く
イレイザーヘッド
イレイザーヘッド
無事ではないみたいだな…
イレイザーの言葉通り、少女は無傷ではなかった
全身の至る所に浅い切り傷があり、意識がなく、顔色も良いとは言えない
オールマイト
オールマイト
こりゃあまずいな…、私はこの少女をリカバリーガールの元へ連れて行く。あとは頼みます
ミッドナイト
ミッドナイト
ええ、わかったわ
一言伝えたオールマイトは、少女を抱えたまま、生徒達の間を縫って去っていく
と、少女の服の袖から、何かが落下した
気づいた緑谷が拾い上げ、オールマイトの方を振り返るが、既に去った後だった

かなり古く所々汚れてはいるが、丁寧に扱われていたことがわかる、古本だった
表紙には、筆記体で〝博麗秘伝書〟と書かれている
緑谷出久
緑谷出久
博麗秘伝書…
ミッドナイトやマイクが観客に落ち着くよう呼びかける中、緑谷の頭には、少女のことでいっぱいだった
その様子や呟きを、少し離れた場所にいる爆豪と轟に知られているとも気づかずに

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