今日は10月30日
エイジの誕生日
今年はバイトして貯めたお金で、
エイジに似合いそうな時計を買った
去年は赤色のネクタイ
いつか会った時にまとめて渡すの
高校生のバイト代だからちょっと安いかもしれないけど、
使わなかったら許さないんだから
私とエイジ、2つのケーキを買って家に帰った
「どうしたの、そのケーキ」
「お父さんに買ってきてくれたのか?」
お父さんとお母さんは私の手に持っていたケーキを見てそう聞く
「今日は2人のケーキはなし!
10月30日は、私の彼氏の誕生日なの」
私がそう言ってにこっと笑うと、
2人は黙って笑い返してくれた
何も言わないでくれる方が助かる
一緒に祝えない誕生日なんてつまんない
「お誕生日おめでとう、エイジ」
LINEでそう送る
あの日から私とエイジの間だけ時間が止まってしまったように
LINEには既読がつかないまま
自分の部屋に入って、
ケーキを2つ取り出してパクッと食べる
ケーキの味と一緒に、
少ししょっぱい涙の味がした
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。