第11話

アンスリウム
131
2020/04/15 04:33
ボーンボーン……


昼の12時。


店の時計が12回鳴る。


おそ松は、それを聞くと、エプロンを脱ぎ、自分のロッカーへしまう。
店長
昼外か、珍しいな
おそ松
おそ松
まぁ、今日持ってくるの忘れたんで
いつもは、来る途中でなにかしら買ったり、弁当を持ってたりしているのだ。


財布ぼポケットに入れ、裏口から外へ出た。
カラ松
カラ松
おそ松さん
外へ出たところで、声がかかる。
おそ松
おそ松
あ、カラ松さん!
カラ松の服装は、いつもの青いエプロンが、なく、黒いパーカーだった。


なんだか、気のせいか、いつもと雰囲気が違うように見えて、妙に緊張する。
おそ松
おそ松
すみません、お待たせしました!
カラ松
カラ松
いえいえ、どこ行きます?
おそ松
おそ松
何食べます?
カラ松
カラ松
何あります?
おそ松
おそ松
なんでもあります
本当にこの商店街にはなんもである。


パン屋、イタリアンレストラン、中華料理店、トルコ料理店、本格インドカレー店etc…


ただ、全国チェーンのような店はなく、個人事業店だけだった。


商店街特有だ。
おそ松
おそ松
好きな食べ物は?
カラ松
カラ松
唐揚げが大好きです!……おそ松さんは?
おそ松
おそ松
特にないですけど……あ、ピーマンは大っ嫌いです!
カラ松
カラ松
ピーマンって……ホント子供みたいです
そう言って、ふふっとカラ松は笑った。
おそ松
おそ松
もう……あ、あそこ行きましょ!
カラ松
カラ松
?どこです?
おそ松
おそ松
ついてきてください
そう言っておそ松は、表の方へ歩き出した。


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商店街は、いつにも増して賑わっていた。


それもそうだ。


世間一般では、今日は休日。


接客業だとそうはいかないが、代わりに定休日の平日が休みになる。
カラ松
カラ松
人、多いですね
おそ松
おそ松
そうですね、でも、すぐですよ……
右手に、何かが絡まる。


慌てて隣を見るおそ松。
カラ松
カラ松
こんなに賑わっているんだもん。こうした方が、離れませんよ
カラ松の左手は、おそ松の右手と繋がっていた。


ぶわっと、顔が熱くなる。
おそ松
おそ松
っ……ほんと、俺の事、子供扱いしてません!?
カラ松
カラ松
それはあるかもな〜
イタズラな笑みを浮かべるカラ松。
おそ松
おそ松
もー!
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カラ松
カラ松
ここですか?
ついたのは、定食屋。
おそ松
おそ松
はい、唐揚げだと、ここしか思い浮かばなくて。中華料理店だと、油淋鶏ユーリンチーもあるんですけど、違う気がして……
カラ松
カラ松
……俺の好きなものでいいんですか?
おそ松
おそ松
いいんです!僕なんでもいいんで……
おそ松はドアを開け、2人は店内に入っていく。


店内は、休日のお昼時だが、そんなに混みあってはいなかった。


周りに色んな飲食店があるからだろう。
店員
いらっしゃいませー……あ、おそ松くん!好きな席どうぞー
厨房から、威勢のいい声があがる。
おそ松
おそ松
はーい
おそ松は、2人がけの席に座る。
カラ松
カラ松
仲、いいんですか?
おそ松の正面の席につきながら、カラ松は訊いた。
おそ松
おそ松
小さい頃からずっとここら辺住んでるから、結構いますよ
カラ松
カラ松
そっか
おそ松
おそ松
何食べます?唐揚げ定食ですか?
カラ松
カラ松
そうですね!
おそ松
おそ松
じゃあ俺は……生姜焼き定食かな
店員を呼んで、注文を伝える。


店員がそばを離れた頃、
カラ松
カラ松
おそ松さんは、どうして本屋で働いてるんです?
おそ松
おそ松
うーん、高校のバイトで入って、そっからズルズル……って感じで今に至りますね。夢とか、特になかったんで。ここに居られればいいかな〜って感じで
カラ松
カラ松
そっか、でもそれ、ちょっと分かります。この商店街、アットホームな感じする
おそ松
おそ松
そうなんですよ。だから、弟達も近くで一緒に暮らしてるんです
カラ松
カラ松
弟さん、ひとりじゃないんですか?
おそ松
おそ松
はい、2人。ただ、そのうちの一人は、都会で働いてて、夜も遅かったり、帰ってこなかったり……
カラ松
カラ松
忙しいんですね
おそ松
おそ松
そうですね、でも昨日は早く帰ってきたんですよ
カラ松
カラ松
……仲良いんですね
にこやかにしゃべるおそ松を見て、カラ松の口調は少し不機嫌そうだった。
おそ松
おそ松
?そうですね……何かありました?
カラ松
カラ松
いーや、別に
なぜ急に不機嫌になったんだろう?
おそ松
おそ松
あ、カラ松さん
カラ松
カラ松
はい
おそ松
おそ松
この前くれた、赤い花あるじゃないですか。あれ、押し花にしたんです
そう言って、ポケットから1枚の栞を取り出した。


上には、青い紐がついている。
おそ松
おそ松
綺麗だったっから、とっておきたいな〜って思っちゃって……
カラ松
カラ松
……ありがとうございます
そう言って、微笑むカラ松。


良かった、なんとか機嫌を戻せたみたいだ。
店員
お待たせしました
声をかけられ、運ばれてきたのはさっき注文したもの。
おそ松
おそ松
ありがとうございます
カラ松
カラ松
いただきます
2人は割り箸を割り、食べだす。
カラ松
カラ松
あ、おいしい
おそ松
おそ松
でしょ?この商店街、ハズレないんですよ
何故か得意げなおそ松。
カラ松
カラ松
そうなんですね……おそ松さん、あー
おそ松
おそ松
?あー
なんの疑いもなく、口を開けるおそ松。


……この時、ちょっと警戒した方が良かったかもしれない。


おそ松の口の中に、何かが放り込まれる。
おそ松
おそ松
!?苦っ!
放り込まれてきたもの、それは、付け合せのサラダのピーマンだった。


慌てて水で流し込む。
おそ松
おそ松
ちょっと!
カラ松
カラ松
はははっ、ピーマン食べられましたね
おそ松
おそ松
ちょっと……もう!
もくもくと、お米を食べるおそ松。
カラ松
カラ松
ごめんなさい……今度こそ、あーってして
おそ松
おそ松
……笑いながらは説得力ないです。もう引っかかりません!
カラ松
カラ松
そんなこと言わないで、あー
おそ松
おそ松
……あー
口を渋々開ける。


カリッとしたものが口に入る。


唐揚げだ。
カラ松
カラ松
おいしいですか?
フンフンと音がしそうなくらい、頷く。
カラ松
カラ松
じゃあおそ松さん、あー
カラ松が口を開ける。
おそ松
おそ松
カラ松
カラ松
唐揚げあげたんです。俺にもなんかください
そう言ってまた、あー、と口を開ける。
おそ松
おそ松
……わかりました
生姜焼きを1枚つまむと、カラ松の口元へと送る。
おそ松
おそ松
……
なんだか、恥ずかしい。


その時、グイッと、カラ松に腕を掴まれた。
おそ松
おそ松
!?
パクリ、と、カラ松が箸の先を食べる。


ゴクリ、と喉を鳴らして、
カラ松
カラ松
これも美味しいですね
そんな言葉は、キャパオーバーしたおそ松の耳に届いただろうか。

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