ボーンボーン……
昼の12時。
店の時計が12回鳴る。
おそ松は、それを聞くと、エプロンを脱ぎ、自分のロッカーへしまう。
いつもは、来る途中でなにかしら買ったり、弁当を持ってたりしているのだ。
財布ぼポケットに入れ、裏口から外へ出た。
外へ出たところで、声がかかる。
カラ松の服装は、いつもの青いエプロンが、なく、黒いパーカーだった。
なんだか、気のせいか、いつもと雰囲気が違うように見えて、妙に緊張する。
本当にこの商店街にはなんもである。
パン屋、イタリアンレストラン、中華料理店、トルコ料理店、本格インドカレー店etc…
ただ、全国チェーンのような店はなく、個人事業店だけだった。
商店街特有だ。
そう言って、ふふっとカラ松は笑った。
そう言っておそ松は、表の方へ歩き出した。
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商店街は、いつにも増して賑わっていた。
それもそうだ。
世間一般では、今日は休日。
接客業だとそうはいかないが、代わりに定休日の平日が休みになる。
右手に、何かが絡まる。
慌てて隣を見るおそ松。
カラ松の左手は、おそ松の右手と繋がっていた。
ぶわっと、顔が熱くなる。
イタズラな笑みを浮かべるカラ松。
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ついたのは、定食屋。
おそ松はドアを開け、2人は店内に入っていく。
店内は、休日のお昼時だが、そんなに混みあってはいなかった。
周りに色んな飲食店があるからだろう。
厨房から、威勢のいい声があがる。
おそ松は、2人がけの席に座る。
おそ松の正面の席につきながら、カラ松は訊いた。
店員を呼んで、注文を伝える。
店員がそばを離れた頃、
にこやかにしゃべるおそ松を見て、カラ松の口調は少し不機嫌そうだった。
なぜ急に不機嫌になったんだろう?
そう言って、ポケットから1枚の栞を取り出した。
上には、青い紐がついている。
そう言って、微笑むカラ松。
良かった、なんとか機嫌を戻せたみたいだ。
声をかけられ、運ばれてきたのはさっき注文したもの。
2人は割り箸を割り、食べだす。
何故か得意げなおそ松。
なんの疑いもなく、口を開けるおそ松。
……この時、ちょっと警戒した方が良かったかもしれない。
おそ松の口の中に、何かが放り込まれる。
放り込まれてきたもの、それは、付け合せのサラダのピーマンだった。
慌てて水で流し込む。
もくもくと、お米を食べるおそ松。
口を渋々開ける。
カリッとしたものが口に入る。
唐揚げだ。
フンフンと音がしそうなくらい、頷く。
カラ松が口を開ける。
そう言ってまた、あー、と口を開ける。
生姜焼きを1枚つまむと、カラ松の口元へと送る。
なんだか、恥ずかしい。
その時、グイッと、カラ松に腕を掴まれた。
パクリ、と、カラ松が箸の先を食べる。
ゴクリ、と喉を鳴らして、
そんな言葉は、キャパオーバーしたおそ松の耳に届いただろうか。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。