カフェでは、雪音が、強ばった顔で私に聞いてきた
私はまっすぐに雪音や真緒、愛永も相づちを打つ
私は、ぺこんと頭を下げた
雪音が責めるように聞く
雪音は、悔しそうな顔になった
当然だと思う
私の胸にも、急に寂しさが押し寄せてきた
決意して、覚悟したはずなのに
それでも場の空気を和らげるために、私は必死に言った
雪音は、はっとした様子だ
私は苦笑する
雪音は私をにらみつけた
私は苦しくなって黙り込む
真緒が雪音をなだめる
愛永も言った
しかし雪音の怒りはおさまらない
雪音はもう、ほとんど泣きそうだ
私も同じで、瞬きもせず雪音を見つめる
雪音は立ち上がり、なおも言った
私だけでなく、真緒や愛永も黙り込んだ
雪音の気持ちだけが、私には痛いほど分かる
雪音は、がんばったのだ
がんばって、がんばって………望の気持ちを手に入れることが、出来なかった
だから私に腹を立てている
私が、逃げているようにしか感じられないから
全員がしんと静まり返ったテーブルの上で、私の携帯が鳴った
メールの着信だ
画面を見て、私は思わず立ち上がる
望からのメールがトップ画面に映し出されている
震える手で、携帯を取った
望!
心の中でその名前を呼んだ時
再びメールが届いた
写真だ
旭山の丘でバレエを踊る私の写真だ
私は息をするのを忘れて、じっと、その写真に見入った
すると誰かが、私の背中をポンッと押した
雪音だった
私のコートとバッグを手にしている
雪音は微笑むと、頷いた
私は束の間雪音を見つめ返したが、頷き、店を飛び出した
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。