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第4話

いっぴきおおかみさん
307
2018/11/08 13:19






🐰「……これ、なに、?」




ベンチに座ったままの彼が私の目を

見つめながら聞いてくる。

抵抗しても無駄だと知った私は

手を振りほどくのを辞めた。



何も言わずに俯く私と、

何も言わずに返事を待ってくれる彼。



優しくされてる、なんて自意識なのかもしれない。

でも私には、それが優しさに感じてしまって。

人の温もりなんて久々で。




『……グスッ……うっ、ぅぅ……ッ …グスッ…』




いつの間にか、涙が溢れて止まらなくなった。


🐰「……なんで泣いてんの」


また優しく、問いかけてくれる。

でも……




『あ、なたには…関係、ない……でしよ、…』



なんて口走ってしまった。



せっかく聞いてくれたのに。

せっかく私を気にしてくれたのに。



" 助けて " って…言えなかった。



どうしても信じられなかった。

恐怖の方が強かった。

彼を信じたとしても、クラスメートと同じように

また裏切られてしまうのではないか。



そう思ってしまって……。





🐰「ふーん、あっそ」



彼は私の腕を離して目線を空に移した。


ただ何も言わずに空を見上げる彼。


その横顔が…あまりにも綺麗で見とれた。




🐰「だから、あんまジロジロ見んなよ」



ちらっとこちらを見てふっ、と笑った彼に


なんだか少し、ドキッとした。







🐰「…………名前」


『………え?』


🐰「お前の名前、なんだって聞いてるの」


『……………………』


🐰「早く答えないと襲うから」


『……、!?…は、?!』


🐰「いいから、早く」


『…………あなた…』


🐰「……あなたか………」




何故か私の名前を何度も繰り返し言いながら


嬉しそうに笑う彼。


名前を呼ばれたのなんて久々で、


胸があったかくなる。





🐰「…あなたか!じゃあな」


いきなり立ち上がるとニカッと笑い

扉の方へ足を進めようとした彼。



『……っ、…まって、!』


『あなたの、名前は?』


少しだけ遠くなった背中に叫ぶと、

彼は振り向かずに、



🐰「……ジョングク、」



小さな脳みそをフル回転させて

ジョングクという名を覚える。





………って…え、ちょっと待って…


ジョングクってまさか……、



あの、一匹狼、!?





『あの人…喋るんだ……』


そんなことを呟きながらジョングクさんの

また少し遠くなった後ろ姿を見つめていると、

ジョングクさんは扉の前で立ち止まり

こちらを振り返った。





🐰「なぁーーー!お前またここ来んのー??」


遠くなったジョングクさんが叫ぶ。


『……毎日…』


🐰「なんてーーーー???」


『たまに来ます!!!』


🐰「そっか!!じゃあまた会えるな!!」



そう言うと、ジョングクさんは

扉の中へ消えてしまった。

これで完全に屋上には私一人。

いつもなら慣れてるはずなのに、

今はなんだかすごく寂しい…。


ジョングクさんがいなくなったから?




ていうか……

ジョングクさんって、よく笑う人なんだ…。


噂では、顔はキムテヒョンに並ぶほどイケメン

なのに、いつも誰とも絡まないし、

一言も話さないって噂だ。



いつも無表情で、睨まれたら終わり。


みんなからそう思われている。


それでついたあだ名は


" 一匹狼 "






でも実際そんなことは無くて、


ジョングクさんはよく笑ってよく喋る人だった。


なんだかみんなの知らないジョングクさんを


知れて嬉しいな、なんて笑





そんなフワフワした気持ちのまま時計を見れば、

もう昼休みが終わる時間。

午後の授業のため、あの地獄のような教室に

戻らなきゃいけない…。



幸せだった昼休みが嘘みたい。







あぁ、またジョングクさんと話せたらいいな。

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