私が1つ目のピノを食べていると、横からひょいっと蜂楽くんが顔をのぞかせた。
目を輝かせた蜂楽くん。
私は箱の中から1つをつまみ、彼の口元へと持っていった。
そう言って、親指を上に立てた蜂楽くん。
美味しかったらしい。
それは何よりである。
自分の持つ棒アイスをじっと見た蜂楽くんは、ふと私のほうにそれを差し出してきた。
食べて良いということなのだろうか。
良いのだろうか。
食べたいかと言われたら食べたいけど……、と悩んだ後、私は遠慮なくいただくことに決めた。
私は少しだけ口を開けて彼が持つアイスにかじりつく。
口の中に、棒アイス特有のキーンとした冷たさと、パイナップルの味が広がった。
蜂楽くんがそう言ったことで、私もようやく周りの状態に気づいた。
皆が唖然とした様子でこちらを見ている。
私が首を傾げている横では、潔くんと千切くんが蜂楽くんを尋問(?)していた。
私は頭を抱えてしゃがみ込む。閉じたピノの箱を手で持ったまま。
絶対今顔が赤い。私がうずくまってプルプル震えていると、
という羊くんの声が上から聞こえた。
そう決めて、私は立ち上がった。多分まだ顔は赤いけれど。
私はそのまま蜂楽くんに謝った。
気付いていなかったとはいえ、私が口をつけたことには変わらない。
蜂楽くんが嫌だったら私が新しいアイスを買ってこようかと思ったのだけれど、
そんな時は、断ることもできずにもらってそのまま渡している。
お兄ちゃんと凛に彼女がいたことはないと思うから、それが実った子もいないんだろうけれど。
モデルとして仕事をもらえている訳だから、まぁ良い方ではあるのだろうけれど、お兄ちゃん達に勝てるとは思えない。
そう聞かれて悩む。
私は実はモデルやってて、ストーカーされたことあるんだ、なんて言えない。モデルをやっている事自体は別に隠していないけれど、わざわざ公表するつもりもないのだ。
悩んだ末、
私はそう答えた。
謎の沈黙が広がったところで、私は凪くんがこちらをじぃっと見ていることに気付いた。
ちょっと長め。(2400文字強)
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。