ピピピピッ!ピピピピッ!
カチャ…
そう思いながら俺は兄から貰った目覚まし時計を止めベットを出た。
兄、柊 湊斗は1年前、死んだ
2023年11月16日___
その日は俺の誕生日だった
一緒に外へ出かけてケーキを持って帰って行くはずだった
こういう何気ない会話が俺にとっては救いだった。どこに行っても独りだった俺を兄は見捨てはしなかった。表立って助けてくれることはそれこそなかったが裏で優しく接してくれて、俺の望むことを叶えようとしてくれて。兄が居てくれて本当に嬉しかった。
___けれど
ミャー
タッタッタッタッ
子猫が交差点を通っている時に運悪くトラックが走ってきた…。しかもそのトラックの運転手は気づいている様子はなく、子猫が見えていなかった。
俺は自然と子猫の方へ歩き出していた。
兄の声は上手く聞こえず気づけば俺は___
トラックに轢かれる寸前だった
__でも
バンッ
俺は轢かれてなんかなかった…轢かれたのは…
兄だった__
この時俺は目の前がぼやけてて見えなかった…その時はあまり状況を理解出来ずにいたから気づかなかった…俺は…
泣いていた。
きっと俺の顔は涙でぐしゃぐしゃだっただろう。それに、兄になんか似てない。俺は…兄みたいに綺麗な顔では無い。一重なせいか睨まれてると勘違いされ、輪郭も丸っこくて兄みたいに綺麗では無い。お世辞にも、かっこいいなんて言われる顔ではなかった。でもそんなの…今じゃどうでもいい__
ザワザワ…
そこにいる人誰もが救急車なんて呼んでくれなかった…"ただ1人を除いて"
…次に進む。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!