今にも雪に溶けて消えそうな真っ白い彼女が、あまりにも太陽みたいに笑うから。
彼女の周りだけ雪が溶けてしまいそう、とぼんやり見ていたら、当の五条さんが茶化しに来たのだ。
「よっ、何ぼーっとしてるのさ。新人の……蜜ちゃん、だっけ?」
スノーゴーグルを額に持ち上げ、にっと笑ったあの時の五条さんを、たぶん私は、一生忘れられない。
雪を乱反射させるこがねの瞳は、その瞬間、確かに私だけを映してきらきら輝いていた。
私はあまりの美しさにどもりながら、スキー出来ないんです、とこぼした。
じゃあ冬にまたスキー合宿をするから来ると良い、って、私の頭をぽんぽんと叩く。
そのまま五条さんは仲間と連れ立って、颯爽と四月のゲレンデを駆け抜けていった。
結局去年は暖冬で、来年に持ち越しだって言って二人で鍋をつついたっけ。
この白菜はわたしが育てたんだよ、とほんとか嘘か分からない話を聞かされた。
そして、来年こそスキーをしようね、と指切りをして。
五条さん。
私はまたあなたとの約束を思い出しましたよ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。