第16話

ミムラス
51
2018/08/12 13:52
リュークの人間狩りがなくなりつつある頃――
スディ
ーっ!!
ぐぅ...!!
ぽたりぽたりと朱の水溜まりができる。
スディ
はーはーはぁ...
キッチンに異臭と荒い呼吸が響き渡る。


あれからどれくらい切り裂いたのだろうか。
スディの身体はいくつもの穴が空き、ボロボロになっていた。
スディ
(―――全ては、全てはリュークの為...。)
"リュークの為"
そう自分に言い聞かせる。
スディ
(身体の修復も大分遅れてきてるな...)
抉っては治り、そして抉りだすという行為を繰り返してきた為、身体の修復作業が追いつかない。
スディ
(明明後日の分...どうしようか)
ふらつく身体を起こし、ぼーとする頭を抑えキッチンを後にした。
―――――――――――――
スディ
――確かここに...
スディが向かった先は書斎室だった。
色んなジャンルがある中スディが手にしたのは医学書だった。
スディ
(...何か食べる臓器は――)
スディは文字を追ってると―――
リューク
――兄さん、いる?
スディ
―――っ!!
ドサッ
リューク
あっ...!
ご、ごめん!
驚かせちゃって...
スディ
いや。大丈夫だよ。
どうしたの?
リューク
兄さん、最近元気ないからお花買ってきたんだよ!
はい!
リュークが渡したのは"ミムラスの花束"だった。
スディ
(ミムラスって確か――)
『"笑顔を見せて"』
リューク
えへへっ。
花屋さんに聞いたの!
兄さんの笑顔が見たいって言ったらこの花を勧められたんだー!
リュークのささやかな贈り物が
抉られた傷が癒えていく。
スディ
...ありがとう、リューク。
リューク
どういたしまして!
ふんわりと笑うリュークは今日のご飯はオレが作るねーと書斎から出て行った。
スディ
笑顔、か...
スディは渡された花束を撫でながら呟いた。

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