リュークの人間狩りがなくなりつつある頃――
ぽたりぽたりと朱の水溜まりができる。
キッチンに異臭と荒い呼吸が響き渡る。
あれからどれくらい切り裂いたのだろうか。
スディの身体はいくつもの穴が空き、ボロボロになっていた。
"リュークの為"
そう自分に言い聞かせる。
抉っては治り、そして抉りだすという行為を繰り返してきた為、身体の修復作業が追いつかない。
ふらつく身体を起こし、ぼーとする頭を抑えキッチンを後にした。
―――――――――――――
スディが向かった先は書斎室だった。
色んなジャンルがある中スディが手にしたのは医学書だった。
スディは文字を追ってると―――
ドサッ
リュークが渡したのは"ミムラスの花束"だった。
『"笑顔を見せて"』
リュークのささやかな贈り物が
抉られた傷が癒えていく。
ふんわりと笑うリュークは今日のご飯はオレが作るねーと書斎から出て行った。
スディは渡された花束を撫でながら呟いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!