そのうちメイクも終わり、スタッフさんが呼びに来てくれるまでまたまたゆっくりとした時間。
座っている俺の前へ徐にやってきたのはめめ。
「どうしたん?」と聞くと、少しだけ吃るような様子でこちら見てくる。
何を言われるのかと身構えてみれば、まさかの謝罪。
予想外すぎて言葉に詰まった。
めめはそんな俺に対しては何も反応せず続けた。
めめのその言葉で、何となく話を理解した俺。
めめは優しいから、なんでも自分のせいかもって思ってくれちゃうんよね。
「俺こそ、気にさせてしまってごめんな?」
と付け足してめめの様子を伺ってみる。
今思えば、昨日めめが俺の分を食べてくれたのはめめなりの罪滅ぼしみたいな物やったんかな。
めめの事が好きだと自覚してから、めめの微笑みや話し方、歩き方なんて言う些細な動作一つ一つに意識がいってしまうようになった。
ほんの少し、気持ち悪いかもと自覚はあるものの、俺にとってはほとんど生理現象に変わりなくてどうすることも出来なかった。
めめは俺が「気にしないで」と言ったからか、静かにラウ達の元へ歩いて行った。
もうちょっと話していたかったな、とは思うけどそれはまた自分の首を絞めることになるんやろうと思って引き止めるのをやめた。
それから10分もしないうちにスタッフさんが来た。
楽屋ひあべちゃんの声が響いた。
めめやなくて、ちょっと残念。
もちろん、舘との撮影は楽しいし好きやけどな!
中々、めめとペアって多いわけやないし…。
見事に図星を突かれてしまった。
ご最ものことをふっかさんに言われてしまった。
俺やって本気で言ってないって。
そうだったら…良かったのにとは思うけど。
ペア撮影だけど、全員でスタジオへ移動することになった。
俺ら、トップバッターやねんけど…。
不安を抱えながらもカメラの前に置かれたソファに俺は腰をかける。
舘はそんな俺の後ろに立つ。
撮影が始まってすぐ、舘から名前を呼ばれた。
メンバーに見守られてる中という少しばかりの羞恥心を隠しながら舘に応える。
撮影のイメージにあったアドバイスやったらしい。
そのアドバイス通り、俺はテロテロなシャツの胸元のボタンを1つ開けてみせた。
計3つのボタンが開いている事により、露出による色気は…出るはず。
お気に召したご様子の舘様。
少し開かせ過ぎかとも思ったけど…イメージがイメージやからね。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。