"またけんとくんと、あしょびたいっ!"
駿佑の熱烈な要望により、今日はコチラから招待する形で親戚である謙杜くんがお家に遊びに来てくれる事となった。
「ママ!けんとくん、もぉくる?」
「まだ、かな?もうちょっと待とうなぁ」
楽しみ過ぎて時間の経過が遅く感じてしまっているらしく、もうずっとソワソワしている駿佑。
やっとインターフォンが鳴るとバタバタと、一目散に玄関まで迎えにいった。
「けんとくん、いらっちゃ〜い♪」
「だぁお!」
「はいはい、今降ろしますよ〜」
相変わらず活発なようで、"動きたいから早く降ろせ!"と手足をバタバタとさせて訴えていて
地面に着くなり廊下を這ってズンズン奥へと進んでいく。
「ママ・・・けんとくん、しんかしてる!?」
「進化(笑)
してるなぁ!赤ちゃんの成長ってホンマ目まぐるしいわ」
3ヶ月振りに会って生後9ヶ月になった謙杜くんは高速なハイハイが出来るようになっていて
自由に動けるようになったという事は、勿論好奇心の赴くまま行動するから
「わっ?!けんとくん、しょんなことしたらアカンねんで!」
駿佑はすっかり振り回されていた。
ティッシュを箱から次から次へと出して散らかすから、慌てた駿佑が元に戻しては謙杜がまた引っ張り出す事エンドレス。
「謙杜がゴメンなぁ」
「ええよ、ええよ全然」
「駿佑くん、赤ちゃんの友達は謙杜だけやっけ?」
「そうやで〜!多分謙杜くんがこんなに成長してるって駿の中では想定外やったんやろな、ワタワタしてて、ウチの子可愛過ぎっ!」
「ふふっ、確かに」
慣れているお母さん達はのんびり構えて、何ならすっかり駿佑の奮闘振りを面白がっている。
いつも恭平のお友達やら、年上に囲まれている事が多い駿佑には謙杜の行動は驚きの連続。
「わ〜?!けんとくん!おちゅくえ、のぼったアカンし、リモコンは、たべもんとちゃうん〜!」
「あぶ?」
「コレ、しゅんのオモチャ!かしたげるから!コッチみて!ほらっ!」
何に興味を持ってくれるか分からないからオモチャ箱をヨイショヨイショ、と丸ごと持ってきて
そのまま豪快にひっくり返してみせると、謙杜はやっと食い付いてきてくれて
「たぁ!」
ひとつを手に取って掲げてみせたから、"謙杜の好きなんあったぁ!"って言ったのかな?なんて思って一安心してみる。
「そっかぁ!それスキかぁ!どれでも、しゅきなんちゅかっていいで!」
「きゃああぁい♪ あぅ〜」
言えば嬉しかったのか、もの凄い勢いで突進してきたから、そのまま駿佑はコロンと後ろに押し倒されてしまって
「おわ?!」
すっかり上に乗られて身動きが取れないから、下から覗き込む形で謙杜の顔立ちを観察してみる。
ママと一緒で睫毛長いなぁ・・・
「むぅ〜…けんとくん、なんか・・・しゅんよりママに…にてる?」
そんな風に思って、またヤキモチを妬きそうになったから
今度は大吾と似てない所を探そうと、またぐっと顔を近付ける。
「あ、駿佑くん!謙杜にあんまり顔を近づけると・・・!!」
「っ?!?」
謙杜のお母さんが飛ばした助言は間に合わず・・・
ブチューと唇を奪われてしまった駿佑。
「ぷはっ!ママどおしよ〜?!しゅん、けんとくんとけっこんしなアカン?!」
確かに普段から"家族よりも、も〜っと大好きって思えた人としかチューはしたらアカンよ"と教えてはいるが・・・
まさか「キス=結婚」と直結させて思っていた事にはビックリで。
「けんとくん、しゅきけど・・・しゅん、ママとけっこんしたかったのにぃ〜〜!!」
と、本気で慌てふためく駿佑の様子にお母さん達は大笑いしてしまうのだった。
END
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このお話はフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。