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第33話

暫くは退屈しなさそうだ
200
2022/04/05 13:37
てつや「え、虫眼鏡が.....?」
怪盗TはRから聞かされた事実に目を見開いた
まさか、探られているなんて思わなかった
ただ、怪しいと思われてるだけかと思ったが
りょう「危なかった、...厄介なことはそれ...ごめん、気絶させるしか方法はなかった....」
てつや「......まぁ、だよな.....でも何でRが、ここに」
りょう「お前の猫だよ、アルル...アイツが連れてきてくれた」
後方で二人の怪盗についてきてくれる猫にてつやはチラッと視線を送る
てつや「そっか、わりぃ....少しヤバかった....さんきゅーR、アルルも」
油断したわ、とTが溢す
りょう「にしても、誰だよあの全身真っ赤なおかしなやつ」
てつや「あぁ、最近噂の探偵だとよ...レッドだったかな?他にも何人か仲間がいたから...りょうが来なきゃ逃げるのに手こずったかもしれない、最悪捕まってたな」
Tは何でか知らんが楽しそうに笑っている
りょう「笑い事じゃないだろ.....」
てつや「いやいや、楽しみになってきたよ...笑わずにはいられない」
りょう「?」
RはTを支えながら、一先ず近かった自分の家に避難した
お邪魔しまーす、と気の抜けた声を出す怪盗Tは、帽子と仮面とネクタイを外していき、最後は着ていたジャケットを脱いでその場に座り込んだ
これで東海オンエアのてつやに早変わり
怪盗Rも同じように、布マスクを外してジャケットを脱ぐ
これで同じく、東海オンエアのりょうに早変わり
一つ違うのは、ジャケットを脱ぎ捨てて放っているてつやとちゃんと脱いだジャケットをハンガーにかけるりょうかの違いだけだ
少し疲れているのか、座ったままアルルを撫でるてつやは眠そうだ
りょう「.....で?何が楽しみになってきたの?」
てつやがさっき、楽しそうに笑った理由を知りたかったりょうは単刀直入に聞いた
てつや「んー...日本の警察ってやっぱ甘ちゃんなのよ、簡単に欺けるし...たまにおっ、アイツはすげぇなって警官や警部は見てきたけど、あの探偵は手加減気味の俺を追い詰めかけた...あのチビな体で、大差がある俺を...こりゃ少しは楽しめそうだからな、退屈しねぇよ」
りょう「変なやつ...」
てつや「張り合いって大事よ?やらなきゃなんねぇって気持ちになるし、...気合いが入るから、早々ヘマはしなくなる....今回は油断したけどよ...前の俺からじゃ想像出来ないなぁ~~....」
だいたい相手を舐めているのだが、油断をすることはいままでなかった
今回が初めてだ、相手の力を見誤って...手加減していたのは
そうでなければ、あんなポッと出の探偵たちには手こずらない
てつや「やだやだ、これじゃ近いうち死ぬな俺も」
りょう「縁起でもないこと言うなよ...」
りょう怪訝そうにてつやを見下ろす
てつや「.......死にゃしねぇよ、全てが解決するまで粘ってやる...」
てつやはりょうを見上げ、ニヤッと口角を上げて笑っている
何でそんなに楽しそうに笑えるのかがりょうには理解不能だ
りょう『ほんとに、簡単にいなくなりそうだ......』
死ぬことを恐れていないてつやは、死んだときはそのときだと考えているらしい
俺らに見せていた東海オンエアのてつやは、...所詮偽りなんだな
想像つかないよ、とりょうは顔を歪める
てつや「りょう、どうした....?」
てつやがアルルを膝に乗っけて、さっきから黙ってしまったりょうに話しかける
りょう「.......死なせはしない」
てつや「はぁ?なんて??」
りょう「何でもない、それより今日は何しに行ったんだよ警察署なんかに、捕まりに行くようなもんだろ?」
てつや「??何だかよく分からんけど......別に良いだろ?てか俺の家に来んなって言ったろーが!!聞き分け悪いなお前!!!」
りょう「俺のお陰で虫眼鏡にバレなかったんだからむしろ感謝してほしいね」
てつや「ぐぅ、......ま、まぁ...今回はお手柄だよ...ありがとうなりょう....///」
りょう「っ、.......!」
柔らかい笑顔をりょうに向けるてつやは、嬉しそうだった
口では色々言うものの、りょうが助けてくれて事なきを得たのは事実、しかも裏で探ろうとしていた虫眼鏡を阻止してくれた
何だか染々するなぁ、弟子の成長が...
一方りょうは不意打ちのてつやの素の笑顔を向けられて正気ではない
りょう『やっぱ、笑顔の方がお前らしいよ.....』
難しい顔をしてばかりで、心から笑うような笑顔を素のてつやのときは見せてくれなかった
だから嬉しい、徐々にてつやは俺に気を許してくれているのだと....
りょう『........誰にも譲らない』
こればかりは譲りたくはない、本当のてつやの隣を...
何度もそう思いながら、てつやへの想いを募らせているりょうがふと静かになったてつやを見下ろすと、てつやはソファに横になっている
疲れて寝たのか.....珍しい
りょう「....俺が守ってやるからな......」
大丈夫、死なせはしない...俺が守り抜く
だからもう少し頼ってくれ、てつや...とりょうがてつやの手を持ち上げ、手の甲に軽いキスを落としたあと、毛布をかけてしばらく寝かせてやった
りょう『あ、結局理由聞いてねぇや...』
まぁてつやが起きたらで良いか...別に








虫眼鏡「.......っ、いてて...何だったんだ....?」
急にハッと意識が浮上した虫眼鏡が、首筋を擦りながら起き上がると違和感に気づく
虫眼鏡「僕の家、....は?」
おかしい、自分はてつやの家にいたはずなのに、何故いつの間にか自分の家に戻ってきていたんだ?
虫眼鏡「.......ち、やられたな」
首筋にジンジンと痛みを伴うってことは、そこを叩かれて気絶させられたんだろう
ドラマとかアニメくらいでしか見てないし、実際にやられたのはこれで初めてだから何とも言えないが....
虫眼鏡「てつやの裏に....いるんだろうなぁきっと」
じゃなきゃここにいない...最近てつやと妙に距離が近くて様子が変わったアイツ
虫眼鏡「核心的に変わりつつあるよ、てっちゃん......」
虫眼鏡がまだふらつく足取りで机の上に置いておいた細長い小型の機械を手に取り、カチッとボタンを押すと機械から音声が流れてくる
『...ぁ、...とに良い....よ.....知らねぇぞ?前にも言った、頼りまくるって』
聞き取りずらい音声が段々と正常に音を流してくれる
『もちろん』
二人の男の会話だ...虫眼鏡にとっては聞き慣れすぎている二人の
『むしろ頼れ、東海オンエアのてつやの時も、』
片方の男の声がもう一人の男の名前を呼ぶ
見に覚え聞き覚えのあるリーダーの名前を呼んだ
そして最後に、虫眼鏡が疑問を持ち始めたきっかけの音声が流れたのだ



『怪盗Tのてつやの時も』


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