リビングのソファーに座りながら、私は時間が過ぎる度にため息を吐いた。
いつも、同居人の彼を待つ時間は苦手だ。
寂しさに浸食されそうで、テレビを付けてみるけれど番組が終わると彼のことを思い出す。
まだかな、とつい時計の針を見たり、ソファーに横たわる。
横型の長方形のテレビは身体を横向きにさせても不自由じゃない。
テレビの中では、バラエティー番組の出演者達は笑っていた。
番組を見つめていると身体を丸めてうずくまる。
我慢が出来なくなり、うぅーと小さく唸り声を出した。
私は両手を玄関の方へ向けて、彼が帰ってくるように念じる。
すると彼が来るんじゃないかと思い、玄関に引き寄せられた。
ソファーをおりて廊下を歩く。
玄関先まで来ると外からスタスタと足音が聞こえてきた。
家の前でピタっと足音が止まり、期待が高まる。
ガチャ。
優也が帰ってきた。
待ちに待った人が現れて、嬉しさのあまりに飛び付いてしまう。
飛び付いたあとは優也にしがみついて離れない。
いきなり突進してきた栞那に驚いた優也だが、怒りもせず、優しく受け止めてくれた。
そのあと数分間、玄関先で2人は抱き締め合うのだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。