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第5話

俺のために
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2019/07/14 12:11
センラ
センラ
ただいまー...ってあれ?
仕事終わり。家のドアを開けた先に広がるあたたかい光。
一人暮らしをしているため、電気を消し忘れること以外に電気がついている理由は考えられない。
うわぁ、電気消し忘れたんかぁ、と憂鬱な気持ちになりながら重い鞄を降ろし、ため息をつく。
センラ
センラ
あれ、あなた...?
リビングには、机に突っ伏して眠るあなたがいた。
彼女が座る向かい側の席には、ラップのかけられた美味しそうな食べ物の数々。
冷めてはいるようだが、温かな色を放っている。
待っててくれたんか。思わずつぶやく。
腕の隙間から覗くかわいらしい寝顔に、急に愛しさがどっと湧いてきた。
センラ
センラ
あなた、ただいま。
彼女の耳元で囁き、傍にあったブランケットを肩にかけてやる。後でベッドに運んであげよう。
そう思いつつ食卓に着いた時、あなたの耳が真っ赤なことに気づいた。
センラ
センラ
あれ、あなた?起きとるん?
びっくりして声をかけると、彼女は僅かに動いた。
そして、
あなた

...

無言で顔を上げた。無論その顔は真っ赤に茹で上がっている。
え、可愛いんやけど。
思わず素が出るくらいには可愛い。
あなた

おかえり

恥ずかしそうに目を逸らす彼女が可愛くて可愛くて、吹き出してしまった。
あなた

な...!そんなに笑わんでも...!!

必死に顔に風を送り、少しでも熱を冷まさせようとするあなた。いや可愛すぎな。
センラ
センラ
ごめんて。ご飯あっためればええんやね?
輝かんばかりのドヤ顔で言ってくるあなたはとにかく可愛い。普通に可愛い。
俺の家まで遠かったろうにわざわざ来てくれて、夕飯まで作ってくれて、待っててくれて。彼女はそんなことをおくびにもださずにこにこと微笑んでいる。
俺のために頑張ってくれたんやな。そう思うと、彼女への感謝や愛しさが溢れてきて、涙が出そうになった。
俺は慌てて彼女を抱き寄せて、微笑んだ。
センラ
センラ
ありがとう
あなた

どういたしまして!

満面の笑みで答えるあなた。
やっぱり愛してる。

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