あれは段々と涼しさがましてきた10月の出来事だった、
その日は10月なのにやけに寒い雨の日だった
中学生だった私は写真部に入っていた。
父が昔から写真が好きで物心着く前からカメラを触っていたために写真を撮るのは上手い方だった
部活が終わりいつも通り7時くらいに家に着いた
両親は特別仲が言い訳ではなかったが悪くもなかったはず…
なのに…
母「ちょっとこれどういうこと!?」
家に帰ると母はまるで別人のように怒っていて私は怖くて仕方なかったのを覚えている
父「…」
母「何とか言いなさいよ!!」
声がでなかった…
私が止めなきゃって分かっていたのに体は思うように動かず声が音にならないまま消えていった…
あんな感覚になったのは生まれて初めてだった
どれぐらい時間が経ったかも分からなかったがずっと黙っていた父がついに口を割った
父「浮気してた」
え、、
心臓を動かすのも忘れるくらい驚いた…
お父さんは決して家族が最優先ではなかったけど、それでも休みの日にはスイーツを買いに行ってくれたり記念日には旅行に行ったりと私たちのことを愛してくれていたと思い込んでいたからだ…
まさか浮気しているなんて、
その事実を知って真っ先に思ったのは
「これからどうなるんだろう…」
ということだった今更離婚なんてことになったら、苗字が変わったりしたらどうしよう、
もう一生3人で居られなかったらどうしよう…
そう頭をめぐらせていると…
父「離婚してくれ」
母「え、」
父「俺が本当に愛しているのは彼女なんだ、お前じゃない」
母「嘘でしょ…」
父「これ、俺の分は書いてあるから」
そう言ってお父さんはまるでこうなることがわかっていたかの様に離婚届を出して綺麗にまとめられた荷物を持って何も言わず振り返ることもせず家を出ていった
母「どうしてよ!?」
お父さんが出て言った瞬間お母さんはそう叫んで泣き崩れた
母「グスッ…ア”ァーー」
多分あの時からお母さんには私のことが見えなくなったんだろう
それから1週間お母さんはまともな生活をしなくなった…
何を言っても言葉はかえってこないしご飯も食べなければお風呂にも入らない、
そんなことが続いたある日
ガチャ
私はその日も学校からいつものように帰ってきた
先週と同じように…
しかし不幸というのは続くものらしい…
リビングにはやせ細ったおかあさんが倒れていた、、
まるで自分から生きるのを辞めたように、
自ら心臓の動きを停めたような顔をして息を引き取っていた
私はどうすればいいかわからずお父さんに電話をかけた
prrrrr
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!