第3話

始まりと終わりのチャイム
30
2020/04/12 14:50
三週間後、少年は目を覚ました。 





リハビリやカウンセリング等、長期間に渡って行うことになった。





ある日のカウンセリング、物語は動き始めた。





少年は語った。


「実は夢を見ていたんです。母や父には言わないでください。絶対に!」


「勿論だよ。事情は把握してると言うか、見てれば分かるからね……」



少し微笑み、カウンセリングの先生は言う。




「ある女の子に会ったんです。最初はうずくまっていて、声をかけたんです。そしたら、身体中に殴り後や切り傷があったんです。すぐに虐待を受けていると何故か分かりました。だから、言ったんです。"一緒に逃げよう"って。そしたら…"ううん、もうすぐ鳥になれるから"って言ったんです。そして、少女は消えてしまったんです。見た事のある顔をしていたような気がするんです。知っているような、思い出さなきゃいけないような気がするんです。大切な約束をその人としたような気がして……」






「それは、叶人くんの前世かな…なんてね」





カウンセリングの先生は少し冗談を言った。




「そんなのありえないですよ、真面目に質問しているんです。」



少年は少し微笑み言った。





「あ、そういえば、ヒントになるかもしれないし、言っておこうかな。お母さんから、サイン会に行ったって聞いたよ。誰かは知らないって言ってたけど、誰のサイン会に行ったの?」



カウンセリングの先生は少年に聞く。







「え、いつですか?」




少年は驚いた顔をしていた。







「事故の日だけど…もしかして覚えてない?」




カウンセリングの先生の顔は一瞬にして変わった。





「はい、まったく……事故にあった日は覚えてますよ?けれど、その日にあったことが思い出せないんです…忘れちゃいけない事だった、絶対に……」



少年は無理に思い出そうとしていた。





「叶人くん!今日は終わりにしよう。それ以上思い詰めては駄目だよ。」




カウンセリングの先生は危険を察知し、カウンセリングを中断した。









とある日、女性は母校へと歩いていた。





女性がいる所からは車でも三時間はかかる。





女性は思ったのだ。




「また、鳥のように飛べたらあの人に会える、きっと待っていてくれているはず……」




女性は昔のように踊った。




全てを捨てる覚悟は出来た。





もう充分生きた、もう満足した。




この世の中が変わることは無いの。



夢は夢のまま。




叶わぬ夢、努力しても、何をしても無理だったんだもの。





ただ、最後に願わせて欲しい。






「少年をもう解放して、もうこの物語は終わりよ、宜しくね、ハッピー……(※ハッピーは不幸な少年と少女の末路で出てきた人物です)」







女性は母校の前で踊りを止め、呟いた。






「終わりよ、サヨナラ少年…いや、叶人くん……」




女性は真っ暗な校舎へと消えていった。






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