鎮まり帰った図書室で、恐怖を目にして戸惑い誰もが息を呑んだ。
次はこの中の誰かが自分を殺すかもしれないという恐怖。
現実離れした現実を信じられない、何が原因でこうなったのか?何が引き金になりこの状況が確立したのか。
思い返してみれば単純なのに…私たちは動けなかった。
「うっ、っう…」
床に倒れ込む杏は小さくうめいた。
もう意識は遠のき痛みも感じていないのじゃないかと思いながらも、ゆっくりとしゃがみ杏に近づく。
何もできない。
「噂を…見つけなきゃ」
乾いた口を開き、聞こえるかどうかの声を必死に絞り出した。
恐怖に震えて力が入らない。青くなった唇は小さく震えて、それでも声を絞り出した。
スッと隣に彼方がしゃがんで、私と同じように杏を見つめた。
「あぁ、そうだな。そして俺たちは全員でちゃんと学校を出るんだ…空も含めてな」
「あ…」
恐怖に震えて、裏返った声で海は空のいる本を開いた。
「そ、ら…」
空は悲しそうに唇を噛みながらじっとこちらを見ていた。
「そうだね、全員で元の世界に戻る。絶対」
沙耶香も先程までの恐怖を隠すかのように、力強く言った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。