アンケート
次回の主役は…!
コネシマ
9%
グルッペン
13%
トントン
9%
エーミール
10%
シャオロン
23%
その他
36%
投票数: 332票
ゾムside
俺が総統を殺せばこの楽しい楽しい戦争は終わってしまうだろう。
まあ、でも…油断は禁物と言うし、サクッと殺してしまおう。うん、それが正しい。
バンッ
幹部など総統の護衛を倒し、1人になった総統に問う。
ザシュッ
辺りを見渡す。
総統の部屋を飾る為に重税を課される国民の気持ちを考えて欲しかった。ぐうクズ。
そんなことを考えていると、美しい鏡が目に入る。
…なぜだろうか。すごく気になる。
ちょっと豪華だけと普通の鏡。全身が映る。
…いつもの俺。
この鏡。なぜ総統の椅子の真後ろにあるのだろうか。
椅子と鏡の間は俺がギリギリ通れるくらいのスペースしかない。日常的に使うならば、置き場所を間違えている。
鏡から目を逸らしてダクトから帰ろうとする。あくまでも戦争中やし。こんな所で時間を潰している暇はない。…まぁ、そろそろ決着が着くだろうけど。
足を動かした…その時
ガシッ
振り向いても誰もいない…のに
腕は何者かに掴まれたままで。
鏡の方へと引っ張られて…
俺は鏡へと吸い込まれていった。
…こんな非現実的なこと信じられへん
視界は真っ黒に染まった。
目の前には少し長めの茶髪を後ろで縛っている紫色の瞳の青年が佇んでいた。
身長は俺よりも少し低いくらいで、既視感がある。コイツに会ったことなんてないのに。
よく見てみれば、俺にそっくりだ。
でも、俺の色、黄緑色をネガ反転させたような色合い。容姿はそっくりでも色合いが正反対だから気づけなかったのか。
…マジで意味わからん。
愛用のナイフを「ゾム」に突きつける。
隠し持っていた銃で彼を撃つ。
…が、彼は簡単に避けてしまった。
いや、避けられたというよりは…
「消えた」
という表現が的確だろう。
ゾム(?)side
僕は君。
なのに、君だけなんて…おかしい。
…僕は、、、
ゾムは我々軍の基地へと走っていった。
グルッペンside
死んでどうぞ
に感情がこもっていなくて怖いゾ。
俺がトントンから目を離した、次の瞬間…
ガタン
バン
何者かによってトントンが撃たれた。
なんとか急所は外したようだが、胸には真っ赤な彼岸花を咲かせている。
肩に1発撃たれた。やばい。
かなりの実力者だ。
姿を現さないから、勧誘できない!()
…それ以前に、死んでしまうかもしれない。
トントンが倒れていた所からは下から見上げる感じになるから角度的に見えたのだろう。
…なぜ、ゾムが?
このタイミングで裏切りとは考えづらい。
裏切るならば、敵国総統を殺す必要が無いからな。
だとしたら…洗脳か?
ゾム(?)side
バカバカしい。
バンッ
(・д・)チッ
急所をギリギリで避けられたのは野生の勘のせいか。
バンッ
バンッ
バンッ
ゾムside
ボワッ
急に俺の目の前に彼が現れた。
今の君=俺
今の君≠僕 つまり 俺≠彼
(≠は等しくない。ノットイコールという意味)
彼は「俺=彼」と言った。矛盾している。
フリーの暗殺者として働いていたら、ある日強引な手段を選ばない引き抜きをしようとしてきたヤツらのせいでボロボロになってしまって…
そこをグルッペンに助けられて拾われた?
この過去に何の問題があるのだろうか。
覚えていない。
なぜか思い出せないのだ。
思い出そうとすると頭痛がする。1回それで倒れたことがあって、みんなには無理して思い出すなと言われている。
パッ˗ˏˋ ˎˊ˗
このままでは、みんなが…
ー 殺 さ れ る ー
もう既に手負いのやつが複数人いる。それに、みんな戦争である程度疲労している。
俺は…体の限界を超えてナイフを振るえば手負いの幹部を全員殺すことがきっとできてしまう。
…じゃあ、みんなが殺されるのも時間の問題?
仲間を失う恐怖で体はガクガク震えているのに、頭は冷水をかけられたかのように冷静だった。
みんなが「ゾム」を食い止めることは出来ないと仮定すると………?
「ゾム」をどうにか出来るのは……
俺だけだ。
しかし、今の俺は体の主導権を暴れている本人である彼にとられている。
つまり、実体がないも同然だ。
物理的には何も出来ない俺が出来ること…
それはなんだ?
どこかもわからない暗闇の中、宙を蹴り飛ばす。
…イライラしても何も進まない。タイムリミットはこうしている間にも迫ってきている。
彼は、「昔のゾム」と言った。つまり、ゾムがフリーの暗殺者になる前の記憶を司る人格だ。
…今のゾムは「二重人格」というものだろうか。
いや、ゾムが記憶を無くして俺という人格が生まれた時から二重人格だったのだろう。
人格は2つもいらない。彼を消すべきだ。
価値のない過去なんてしってても何にもならない。大切なのは「今」だ。
どうすれば彼を消せるだろうか。
彼はゾムの…俺の過去の記憶を持っているのに対して俺は過去の記憶を持っていない。
それが彼の存在意義なのだろう。
ということは…?
俺が過去を思い出せば彼の存在意義はなくなる。
消せる?
フリーの暗殺者になる前。
…なぜ俺は「暗殺業」という裏社会の仕事に就いたのだろうか。
なにか普通には暮らしていけない事情があったはず。
それはなんだ…?
人間は、あまりにも辛いことは忘れてしまうのだとエミさんが言ってた気がする。
じゃあ、忘れてしまうほどに残酷な…
逃げるな、俺。思い出せ…!
頭が痛い。
知りたい。みんなを助けたい。
知りたくない。忘れていたい。
痛いのは、苦しいのは嫌だ
しっかりと響いた仲間の声。
目に映るのはボロボロのグルッペンと余裕そうなゾム。
記憶の断片は少し思い出せたんだ。あと少し、あと少し……!
シュッ
ナイフがグルッペンの首の真横を通る。
グルッペン首の皮から飛び出る赤色。
嫌だ!嫌だ!嫌だ!
カラン
バタリ
ああ、みんなはどうなったんやろうか。
ゾムが殺してしまったんやろうか。
彼と俺の問題は解決できたけど…みんなが死ぬなんて嫌や
彼…ゾムが倒れるのと同時に俺も気を失った。
みんな、生きとる…
なんでや?夢だったんか?
後ろを振り向いてみても、あの鏡はない。
…夢でよかったな。でも…過去は思い出した。
彼1人でずっと背負っていたならば大変だっただろう。
まぁ、だからといってグルッペンたちを殺すのは許せへんけどな。
同じ自分なのに、過去の苦しみも知らずに幸せである俺が羨ましかったから、幸せを壊してやろう……みたいな感じやったんかな。頭、悪ない?まぁ、ただでさえあんまり賢くない俺の幼いバージョンやもんな、うん。
…彼、これから幸せになれるやろうな。
彼は俺なんやから!
ほら、嫌になるくらい楽しくて、幸せやろ?
「そうだな」と聞こえた気がした。
【完】
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。