第8話

08
738
2023/07/17 06:25
- chenle side-









ある建物の中に入り、あくびをしながらポッケから物を取り出し事情を受付の人に説明する。何故かオフィスの中で待つことになり、さっきから社員の目線が僕に集中していて少し恥ずかしい。








同期
同期
おはよーあなた。ほんと今日行きたくなかったわこの仕事。
チョンロ
チョンロ
…?
同期
同期
…!?!?ち、チョンロさん!?!?!?!?
チョンロ
チョンロ
あ、こんにちわ








隣の席に荷物を雑に置き、俺の方に視線をやった女性は時が止まったかのように体が固まったかと思いきや驚いて腰を抜かしてしまった。ロンジュンよりもリアクションがいい。








同期
同期
今日あの子来ませんよ?
チョンロ
チョンロ
え?
同期
同期
昨日の夜風邪引いたっぽくて家で休んでますよ
同期
同期
私が預かっときますよそれ







指でクルクルと遊んでいた社員証を指差し、机に鞄に入れていた物を取り出し始めたその子は僕に早く帰れと言っているようで悲しくなった。





チョンロ
チョンロ
じゅ、住所教えてくれません?
同期
同期
…もしかして貴方があの不審者さんですか?
チョンロ
チョンロ
いやそれはへちゃ、…
同期
同期
まぁ誰でも良いですけどあの子好きな人いるんでやめといた方がいいですよ。もうずっと引きずってるし…








ロンジュンが事情があるかもしれないとヘチャンに言っていたことを思い出した。何年も忘れられない好きな人なんてヘチャンでさえ超えることは無理だろう。ヘチャンは気にしせずにアピールしてそうだけどいざとなったら彼女が悲しむもんな。









そう考えているとその女の子から写真を渡された。








麦わら帽子を被り白いワンピースを広げている女の子の隣にはダボッとしたオシャレなトレーナーを着こなしている男性が写っている。彼女たちの背景の青空とマッチして青春の1ページのようだ。








同期
同期
これが彼女の好きな人ですよ。写真が嫌いで私が撮ったこの一枚しかないんですけど…
チョンロ
チョンロ
…なんでこの方のこと忘れられないんでしょうか。
同期
同期
初恋なんですよその人が。それだけじゃないでしょうけど…そこまでしかあまり知らないです。
チョンロ
チョンロ
…初恋…ね。








初恋は実らない。よく言われる言葉だ。でも、実って結婚している人たちもいる。その例外になろうとしていたのかもしれない。僕の初恋は仮面ライダーだったからあまり結婚したいとは思わないが、この写真を見ると3年前ぐらいだろう。下の文字列に2020.5.15と書かれていた。こんな最近に初恋なんて経験したら、絶対に忘れられない人になってしまうだろう。








同期
同期
あの、時間やばくないんですか?
チョンロ
チョンロ
ん?あっ!忘れてた!









手に写真を握り、オフィスの外へと出た。音楽番組の待ち時間に抜け出してきたのにこれだとバレてしまう。バレたらヘチャンになんて詰められるか。たまったもんじゃない。







______________






無事ステージに間に合い、片付けをスタッフがテキパキと動きながらしている。僕たちもメイク落としをもらったおかげで今まで通りの可愛らしい顔に戻った。





チョンロ
チョンロ
マークはさ、初恋って覚えてる?
マーク
マーク
なんだ?いきなり
チョンロ
チョンロ
僕の初恋はね、仮面ライダー
マーク
マーク
笑笑。チョンロらしいな。
マーク
マーク
俺はなー、多分幼稚園が一緒だった女の子だった気がする。







照れくさそうにそういうマークを強く抱きしめたあとチソン達が座っているソファへと向かう。






チョンロ
チョンロ
チソンの初恋はいつさ。
チソン
チソン
何怖いよ
ジェノ
ジェノ
いきなりすぎるな。
ジェミン
ジェミン
エギはまだ恋なんてしてないよ?
ロンジュン
ロンジュン
ジェミンもうあいつは二十歳超えたんだぞ








ヘチャンがメイクを落としに洗面所に向かっている間にそんな質問をメンバーに投げかける。まだ子どもだと思っているジェミンな呆れたようにロンジュンが言い放った言葉が何故かチソンにダメージを食らわせていた。






チソン
チソン
んー、小学生の時かな。優しくされて好きになった。
チョンロ
チョンロ
ちょろ
チソン
チソン
お前から聞いたくせになんだよそれ
チョンロ
チョンロ
ヒョン達は?






チソンが何か文句を言っているが聞こえないふりをして無視をかました。





ロンジュン
ロンジュン
俺は…ねねちゃん。あの、クレヨンしんちゃんの。
ジェノ
ジェノ
まじかよ。
ジェミン
ジェミン
僕ちゃんは〜中学校の教師!
ロンジュン
ロンジュン
年上好きよりましだろ。
ジェノ
ジェノ
俺はあんまり覚えてないけど小学生くらいだったと思う。







初恋の話が盛り上がり、メンバーときゃっきゃっする。ソファが変な音を立てるが気にせずに僕はジェミンの腕の中へと倒れ込んだ。




ジェミン
ジェミン
そんなこといきなり聞き出してどうしたの?
チョンロ
チョンロ
実はさ…



~~~~~~~~~~~




休憩時間に抜け出して会社に行ったこと。ヘチャンが好きな女の子は忘れられない初恋の人がいること。この写真の男だということ。



事細かく説明し、僕は後ろに立っていたヘチャンに気づかなかった。いきなり肩を叩かれ体を震わせると、後ろには絶対に聞かせてはならないヘチャンが立っていた。







ヘチャン
ヘチャン
チョンロどうゆうこと?
チョンロ
チョンロ
あ、ヒョン…
ジェノ
ジェノ
やらかしたね〜笑笑
チソン
チソン
とりあえず振られた理由わかったじゃないですか
ヘチャン
ヘチャン
チョンロに感謝しろと?
マーク
マーク
まぁ落ち着けって






絶対に怒っているヘチャンを宥めるマクヒョンにわざとらしく抱きつくヘチャンをただ見つめた。僕としたことがなんというミスを…。




ヘチャン
ヘチャン
その男を越えるしかないだろ。
ジェミン
ジェミン
無理だよ。その人は唯一無二の存在だし、ヘチャンと似ても似つかない。それは相手も同じ。
ヘチャン
ヘチャン
越えれば…
ロンジュン
ロンジュン
越えるってその人に会ったことないのに?
ヘチャン
ヘチャン








ロンジュン、ジェミンが共に厳しい言葉をヘチャンにぶつける。そのせいか徐々に悲しい顔になってきた。




チソン
チソン
でも、忘れられないってどうしてなんでしょうね
ジェノ
ジェノ
今は会ってないってことだろ?
マーク
マーク
じゃあ会ってしまったらやばいんじゃないか…?
ロンジュン
ロンジュン
勝ち目なしだろ。







また冷たい言葉を被せ、ヘチャンが泣きそうな顔で僕を見てきたので優しく抱きしめてあげた。



プリ小説オーディオドラマ