- chenle side-
ある建物の中に入り、あくびをしながらポッケから物を取り出し事情を受付の人に説明する。何故かオフィスの中で待つことになり、さっきから社員の目線が僕に集中していて少し恥ずかしい。
隣の席に荷物を雑に置き、俺の方に視線をやった女性は時が止まったかのように体が固まったかと思いきや驚いて腰を抜かしてしまった。ロンジュンよりもリアクションがいい。
指でクルクルと遊んでいた社員証を指差し、机に鞄に入れていた物を取り出し始めたその子は僕に早く帰れと言っているようで悲しくなった。
ロンジュンが事情があるかもしれないとヘチャンに言っていたことを思い出した。何年も忘れられない好きな人なんてヘチャンでさえ超えることは無理だろう。ヘチャンは気にしせずにアピールしてそうだけどいざとなったら彼女が悲しむもんな。
そう考えているとその女の子から写真を渡された。
麦わら帽子を被り白いワンピースを広げている女の子の隣にはダボッとしたオシャレなトレーナーを着こなしている男性が写っている。彼女たちの背景の青空とマッチして青春の1ページのようだ。
初恋は実らない。よく言われる言葉だ。でも、実って結婚している人たちもいる。その例外になろうとしていたのかもしれない。僕の初恋は仮面ライダーだったからあまり結婚したいとは思わないが、この写真を見ると3年前ぐらいだろう。下の文字列に2020.5.15と書かれていた。こんな最近に初恋なんて経験したら、絶対に忘れられない人になってしまうだろう。
手に写真を握り、オフィスの外へと出た。音楽番組の待ち時間に抜け出してきたのにこれだとバレてしまう。バレたらヘチャンになんて詰められるか。たまったもんじゃない。
______________
無事ステージに間に合い、片付けをスタッフがテキパキと動きながらしている。僕たちもメイク落としをもらったおかげで今まで通りの可愛らしい顔に戻った。
照れくさそうにそういうマークを強く抱きしめたあとチソン達が座っているソファへと向かう。
ヘチャンがメイクを落としに洗面所に向かっている間にそんな質問をメンバーに投げかける。まだ子どもだと思っているジェミンな呆れたようにロンジュンが言い放った言葉が何故かチソンにダメージを食らわせていた。
チソンが何か文句を言っているが聞こえないふりをして無視をかました。
初恋の話が盛り上がり、メンバーときゃっきゃっする。ソファが変な音を立てるが気にせずに僕はジェミンの腕の中へと倒れ込んだ。
~~~~~~~~~~~
休憩時間に抜け出して会社に行ったこと。ヘチャンが好きな女の子は忘れられない初恋の人がいること。この写真の男だということ。
事細かく説明し、僕は後ろに立っていたヘチャンに気づかなかった。いきなり肩を叩かれ体を震わせると、後ろには絶対に聞かせてはならないヘチャンが立っていた。
絶対に怒っているヘチャンを宥めるマクヒョンにわざとらしく抱きつくヘチャンをただ見つめた。僕としたことがなんというミスを…。
ロンジュン、ジェミンが共に厳しい言葉をヘチャンにぶつける。そのせいか徐々に悲しい顔になってきた。
また冷たい言葉を被せ、ヘチャンが泣きそうな顔で僕を見てきたので優しく抱きしめてあげた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!