何で逃げたの。
何で黙ってたの。
何で隣にいてくれなかったの。
言いたい事が沢山あったはずなのに。
ちゃんと言葉にならないまま、距離は一つとして縮まらなくて。
縮まらない。縮まらないから、だから……
僕が近づく。
ゆっくりと足を踏み出して、親友に歩み寄った。
ここは土手。町に流れる川をなぞる土手に、Menは静かに蹲っていた。草を踏みしめる度に柔らかな感触が靴を伝わっていく。
Menは優しいから。人を傷つけることもきっと分かっていて、それでも僕のために隣に居てくれたから。
幽霊だって言ってくれればよかったのに。
僕を頼ってくれればよかったのに。
違う。したいのは、糾弾じゃない。
責めたいわけじゃない。ただ、『何で』を解決したいだけ。
声を上げた瞬間。
どこか静かで、冷静な声が隣から響いた。
おんりーの雰囲気が一変している。
優しげな雰囲気は消し飛び、今は冷酷な死神の顔をしていた。
なんのタイムリミットだろうか。
首を傾げると、Menの顔が蒼白なことに気がついてふと息を飲む。
何かに気づいている。
僕が知らない、何か。
そうして、
おんりーは"死神"として言い放った。
さよならはいつも傍らに。
微笑みを浮かべ、悲しみを隠しながら。
『死』は刻一刻と迫っている。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。