『暑苦しい灰谷さん達』
私はいわゆるトラック転生者…ではなく。
自殺して転生しました。
はい。意味がわからないですよねぇ。
私もこの状況を理解してないんですよ。
転生というかモブに成り代わっただけです。多分。
でなければこの状況おかしい。絶対におかしい。
反社怖ぇ…
早口過ぎて何も分からない。いや分かるは分かるが落ち着いて理解ができない。
いくら前世で灰谷蘭(梵天の姿)が推しでも、こういうのは求めてないんだよね…
いやほんとに。
まじで何もしてない。
てか記憶ない。
転生(成り代わりなのか?)してから初の場面がコレだ。
は?私の次の人生詰んでる?
今世死んだ?
はい死んだー。
終わったー。何もしてないのに終わったー。
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…とまぁこれが私と灰谷さんの出会いでして。
あの頃が恋しい(そんなことはない)と思うほどには今が暑苦しい。
何故にこんなに厚かましく育った(?)のか。
それには訳がある。
あの出会いの後、私が放った言葉が原因だ。
はいー。突然の暴露(笑)です。
正直頭も真っ白で何も覚えていないが、私はそう言ったらしい(後の灰谷さん情報)。
『俺の死に方、知ってる?』
いや知らんて____
まだ本誌すら完結してへんぞ?
梵天の最終はどんなんだったっけな…
何も記述がなかったような…。
でも。
はぁ?
死に方訊かれて答えたところで特に利益無くね…。
結局全てにおいて信じられない事案なんだからさぁ…
死に方なんて聞いても信じないじゃん…
わー灰谷さんこわーい。
『チームなんていらねぇよ
灰谷兄弟が六本木を仕切る』
正直いって一言一句間違えなかったのか分からないが、だいたいそんな感じだったはずだ。たぶん。
…と、みるみるうちに男の耳が赤く染まる。
んー、死。
灰谷(弟)さんまで現れるとはまさにここは天国か。
暗転。
あの時完全に気絶した私は貧血だったらしい。
日頃から鉄分取れよと真っ白な髪の人に言われた。
もちろんこの人のお名前は九井一だ。
その人から話を聞くと、顔を真っ赤にした灰谷さん(兄)が私を横抱きに…ではなく、引きずって帰ってきたらしい。
お陰で私のその時履いていたスニーカーのかかと部分が6mmほど消えた。かかと痛い。
灰谷(弟)は灰谷(兄)があまりにも遅いので灰谷(兄)を迎えに来たらしい。
その直後に私の転生者告白を聞かれてしまった。
その後は
しばらく建物の影でそれを覗いていたが、あまりにも長くなりそうだったのでいい加減灰谷(兄)を連れ戻そうと背後に立とうとした時に…
あの小っ恥ずかしい(?)セリフだ。
…消えたい。
回想終わり。
さて。
あの後私がどうなったか、になるのだが…
はい?
灰谷さんってヤンヘラでしたっけ??
鳩尾に1発。
顔面へ1発…は避けられ、
反撃を頭にくらう。
後から聞いた話なのだが、灰谷さん(弟)の方は私の事が好きらしい。
白い髪の人に教えて貰った。
…が。
暑苦しいのが増えてしまった。
安っぽい口説き文句だ。
そこら辺のナンパ男と変わらないと思うのは私だけなのだろうか。
…私は野良猫か?
餌付けされないぞ??
……。
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都内のとあるお店にて。
あの。
どうしてこうなったのでしょうか。
あの後しっかり餌付けされ、「取ーり」された私は黒塗りの車に乗せられどこかへ向かっていた。
私をどこかへ向かわせるために運転をする部下さんには申し訳ない。
灰谷さん達に両側を陣取られているのには多少恐怖を感じた。
んー。絶対に嫌だ。
あの灰谷さん2人に何かを与えられるのは、後に何か響きそうな気がする。
そうでなくても私のプライド(?)が許さない。
しかも向かうは高級店だと灰谷さん(弟)に言われた。
どうやってここから逃げようか。
___と、不意に方を両側から掴まれる。
なんだろー。圧を感じるなぁ。
言葉にせずとも伝わるこの圧迫感は、逃げるなという命令にも感じられる。
大人しく座っていることにした。
さて。
なんだここは。
見渡す限り何桁あるかも分からない有名ブランドのバッグが勢ぞろいする店内を眺めて、私は考えた。
…なんだここは。
私は灰谷さん達から両側を挟まれて逃げ出すことが出来ない。
灰谷さん(兄)については私の手と自身の手を絡めようとしている。なんだこいつ。
お得意のアルカイックスマイルを浮かべて店内を闊歩する灰谷さん(兄)は、お目当てのものが見つかったというように足取りを早める。
目の前に広がるのは何十、何百というドレスたち。
まさか私にドレスを買い与える気だろうか。
…ドレスなぞ与えても着る時がないのだが??
とも思いながら灰谷さん(弟)に尋ねる。
嫌な予感は当たるものだ。
既に瀕死である私は更にドレスの金額に目を剥いた。
結果的に水色系統に落ち着いたドレス騒動であるが、
私がいくら固辞しても懐からブラックカードを取り出す2人には叶わなかった。
ドレスの金額については触れないでおく。
そして突然ドレスに着替えるように言われ、試着室で部下さん(女性)に手伝ってもらいながら着替えた。
正直いって似合わない。
ずんぐりむっくりな私ときらびやかなドレスは壊滅的に相性が悪かった…と私は思うのだが。
わー、お世辞は十分ですー。
そんな真顔で仰らないでください。
そして無言で連写するカメラさんをおさえていただいてもよろしいでしょうか??
オチはどこ。
追記
3200字超えてました。
普段はこんなに書きません。はい。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。