僕は今、兄と討論している。
と、言うのも兄夫婦が僕の姪・乙音の事をずっと虐待している事について
心変わりをすることが出来ないかと、兄を説得しているのだ。
しかし兄は「人を殺した乙音が悪い」の一点張り。
いくらなんでも乙音が理不尽過ぎる。
そう思って最近はよく訪れていたのだが…
やめて。皆まで言わないで。
バチンッ
気がついたら僕は
兄の頬を叩いていた
聞いたことがある。
ある双子の兄弟を身篭った人が居た。
その人は1日1日を大切にし、
腹の子に大事が無い様に生活していた。
けれど、その人は亡くなった。
腹の子諸共3人で。
子供を産むというのは生死に関わる。
本当は乙音だって、兄嫁だって死んでいたかも知れない。
でも、でも
自分だったら耐えられない。
もしもみるくが死んだ事なんて
乙音が産まれてから何度も思った。
もし2人とも生きていたら?
絶対兄さんだって、義姉さんだって
4人で仲良くする事を望んだはずだ。
だからこそだ。
1度来る筈だった2人の娘の片方を亡くして、
1度決まった4人での生活が壊れた。
2人はそれを認めたくなかった。
信じられなかった。
信じたく無かった。
だから乙音に対し、
僕でも分からない程の憎悪を巻き起こした。
そう言いたいんでしょ?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!