此方の様子を伺うようにして 、
金色の瞳を私たちに向けてくる三毛の野良猫 。
警戒してはいるみたいだけど
私たちに近づこうとはしてこない 。
でも私は 、
小さな頃に猫に襲いかかられた経験があって
どうにも足がすくんでしまう 。
嫌いって訳では無いんだけど
怖いって思ってしまうから苦手なんだ 。
彰人 は何も言わずにパーカーのポケットの中で 、
私の手をきゅっと握ってくれた 。
まるで大丈夫だって言ってくれるみたいに 。
慣れた動作で私を背に隠した 彰人 は 、
そのまま歩みを進めていく 。
言われた通りに目を瞑っていたから 、
ものの数十秒にも満たなかったと思う 。
溶けたチョコレートみたいに 、
どろどろと甘い 彰人 の視線に耐えられなくて
恥ずかしさを吐き出すための声を出す 。
左手は 彰人 に繋がれているから
自由な右手だけで顔を隠そうとしている私 。
首を屈めて楽しそうに 、
私の顔を覗き込んでくる 彰人 。
そんな何でもない日の朝の光景 。
そんな当たり前の日常に波乱が起こるだなんて
私は想像すらしてなかった 。
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。