第13話

Private
360
2023/08/04 01:13
自国とは異なる強い日差しとカラッとした空気に、ついに到着したんだなって期待が高まる。
ジンくんとはホテルで待ち合わせしてるけど、空港までガイドさんが来てくれるって言ってたから、海外に慣れていない私でも安心している。

大きなスーツケースを転がしながら到着口に辿り着くと、現地の少し…いや、大分お腹が立派なガイドさんが札を持っていて、"あなた"と私の名前が書かれているのを見て思わず手を振った。

テレビでよく見るやつ、私1人だしちょっと恥ずかしいけど。

握手をして、簡単な挨拶をして、彼が運んでくれる私のスーツケースの後を着いていくと、なんとリムジンが待っていた。
何かの間違いだと思って困惑する。
だって、普通のタクシーを想像してたんだけど…?

英語に自信があるわけじゃないから、ガイドさんに私のフルネームを言って、ジェスチャーで驚いてることをアピールしたら、彼は豪快に笑って「ジンに頼まれたんだ」とカタコトで言った。
…こっちの言葉を喋れるならもっと早く言ってくれと思ったけど、目の前の長い車に圧倒されて突っ込めずに、私は頷いてからおそるおそるその車に乗り込んだ。
リムジンの中は当たり前に広くて、私1人じゃ落ち着かない。
高級そうなシートを撫でたり、つける勇気もないテレビを見つめてみたりして、暫く乗って慣れてきたら窓の外を覗いて街の景色を楽しんでいた。
南国らしくカラフルで賑やかな印象の街を抜けて、暫くすると落ち着いた雰囲気の場所へと入っていった。歩いてる人は見つからない、何台かの車とすれ違ったけどどれもどう見たってピカピカの高級車だった。

私の全く知らない日常が始まることに浮き足立っている気持ちと、慣れない空気に感じる少しの緊張。
胸をドキドキさせながら早くジンくんに会いたいということばかり考えていた。

こんな車に乗ってお姫様気分を味わうのも勿論いいけど、やっぱり2人の時間を楽しみたい。


無事ホテルに到着した私は、ガイドさんから専属バトラーへと受け渡され、何もわからぬまま着いていった。
チェックインなんていう概念は、もしかしてないの…?

不安なまま連れて行かれた扉を開けると、思わず感嘆の声が喉から上がってきた。

プリ小説オーディオドラマ