第8話

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2023/11/17 10:10
スキル。
それは持ち主の人生をも変えるこの世界の絶対的「ルール」。
詳しい事は誰も知らない。知りたがらない。何故ならきっと知ったら、消えてしまうから。

少なくともアンジェのスキル───〈ハカイシン〉、名前からして人生を悪い方には変えまい。サルヴィアでは強者が生き残るのみ。強いスキルを持つ者でしか、生きることは出来ない。
サリフィ
そんなの…強すぎる…
そう。全てを破壊出来る、そんなスキル、強すぎるのだ。
───ベルの様に。
バーサーク・ベル
あぁ、俺のスキルみたいだ
エンジェ・アンジェ
ほぅ?
バーサーク・ベル
俺のスキルは〈ソウゾウシン〉。この世のあらゆるものを創り出す
バーサーク・ベル。
前も話したように彼もまた強者チーター。そのスキルは世界で最も神に近い。

何も難しい事は無い。
ベルのスキル〈ソウゾウシン〉はあらゆるものを無から創り出す。
生物以外全てを、思いのままに創る。
人に言わせれば、神に最も近いスキル。
エンジェ・アンジェ
なるほど、面白いな。1度やり合ってみたいものだね
バーサーク・ベル
フフフ、殺してしまいますよ
…もし、夜の方のお誘いなのであれば…
サリフィ
じゃあ、エンジェさん、早速手続きするから、こちらに来てくれる?
エンジェ・アンジェ
ああ
ベルの目論見はサリフィの軽やかな話の振りで見事に躱されてしまった。恐ろしいものだ。

最強である筈のベルはギルドに独りきりになる。

ベルは<シュトー>を一瞥して、そっと溜め息をついた。誰かに聞こえるように、あるいは聞こえないように。
サリフィ
そういえば、ベル、エンジェさん
それから数日が経った。

<シュトー>はサルヴィアと魔物が蔓延る森の境目に近い所に置いて来ていた。恐らくどうにかしているだろう。恐らく。

数日の間には特に何も事件は無く、アンジェは思いの外平穏な 冒険者 生活を楽しんでいた。自由なこの生活は、彼女の生活にあっているようだ。

しかし、勿論、そんな平穏なギルドの静けさも、続きはしない。
何故ならここは世界の終わりに最も近い街だからだ。
バーサーク・ベル
エンジェ・アンジェ
どうしたんだい?
ベルが声を出すのも億劫そうに返事をし、アンジェがサリフィの目をしっかりみて返事をする。

アンジェには不思議と、それが許される雰囲気がある。
サリフィ
サルヴィアの東の森に、呪顔竜テルーが大量発生したらしいのよ、退治しに行ってくれない?
ベルが少しだけ眉をあげた。
爪の先程度には興味がある様だ。
テルーはベルの好物、ゴーテルの原材料。

沢山狩ってゴーテルにすれば、タダで好物を食べ放題なのだ。
エンジェ・アンジェ
テルー…?何だい、それは?
私も行ってみたいものだ
バーサーク・ベル
面白そうじゃねぇか、行ってやるよ、このベル様が
言ってしまえば、このテルー狩りが今後のゴタゴタの発端と言えばそうなのだが───

何にせよ、ベルはギルドを意気揚々と出て行った。

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