第26話

25.
31
2024/03/29 22:03
五限は国語。

由歌は国語の時間が近づいても、ソワソワした雰囲気すら見せない。

思っていることが大体顔や行動に出る琳音からしたら、羨ましいものである。

内心穏やかではないだろうが。
有栖 琳音
有栖 琳音
今日はどうすんの?話しかけに行く?
如月 由歌
如月 由歌
…いや、いいや。
有栖 琳音
有栖 琳音
本当にいいの? 今週の国語、今日で最後じゃん
如月 由歌
如月 由歌
いいよ、別に。どうせ明日もここで給食食べるでしょ
有栖 琳音
有栖 琳音
それ単純に羨ましすぎるんですけど
坂田先生含め学年担任の先生は、給食を食べるときのクラスが、月1ペースでローテーションしている。

今は坂田先生がA組だ。
有栖 琳音
有栖 琳音
…よし、授業終わったら話しかけに行くか
如月 由歌
如月 由歌
私の話聞いてた?
はぁ、と由歌が諦めたように息を吐く。
由歌は琳音と違い、冷やかされるのも強引に連れて行かれるのも得意ではない。

そんなことは重々承知である。

でも、話しかけたいと思っているのに行けないのであれば、強引に連れていくしかない。

それに、由歌も馬鹿ではない。

本当に嫌なら、自分の口で嫌と言える。
有栖 琳音
有栖 琳音
(…まぁ、気持ちはわかるけどね)
‪”‬好きだからこそくる恐怖‪”‬ 。 


足は動かないし、頭は真っ白。

何を話せばいいのか分からなくなって、結局何も出来ないまま終わる。
有栖 琳音
有栖 琳音
(私の場合は、考えることを放棄しないと口が動かないんだよね)
何を話せばいいんだろう、とか、変に思われたらどうしよう、とか。

そういう不安が出てくるから。

全ての思考を停止しないと、準備していた言葉は出ない。
如月 由歌
如月 由歌
……はぁ、分かったよ
やっと由歌の了承の言葉を得て、自分の席へと戻った。
有栖 琳音
有栖 琳音
せーんせっ!
授業後、坂田先生の元へ、由歌と向かう。

坂田先生の周りにいるのは、琳音たちだけではない。

だから、ある程度の話の流れを作った後は、そっとその場を離れる。

話の流れを作れば、大体その周りの子たちはそれにノってくれる。


由歌が話し始めたら、琳音はいつも通りその場を離れる。
有栖 琳音
有栖 琳音
(坂田先生と話したいのは、私じゃないし)
…どうしてだろうか。

時折楽しそうな笑顔を浮かべる由歌を遠目で見る。

思わず顔を歪めてしまう。
有栖 琳音
有栖 琳音
(………ずるい)
何に嫉妬しているのだろう。

どうして、相賀先生と私に重ねてしまうのだろう 。
有栖 琳音
有栖 琳音
(私も、あんな風に話せたらな)
あんな風に、笑いかけてもらえたらな___。

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