私が休むと選択した部対抗リレー。
男子の先輩が代わりに出てくれることになったらしい。
友達が走っていたりするのを見て、自分も出たかったな、と思う。
運動部はやっぱり速かった。
なんと帰宅部も出場していて、何故かトラックではなく校舎の周りを一周。
「すごっ!!」って、思わず私も拍手してしまった。
いろんな部活が、いろんなものをバトン代わりに走っていて、すごく面白かった。
すっと出てくるのは、そんな感想。
そしてその後、学年別クラス対抗リレーも行われた。
琳音は第三走者。
周りと差をつけて走らなければならない、割と重要な役割。
手を抜くとか、許されない。
でも、そんな重要な役割を任された琳音は、内心めちゃくちゃに緊張していた。
そんなことを考えたって、もう遅い。
第一走者は、すでに走り始めようとしていた。
走る距離は100m。トラックの半周。
ちゃんと走る以外の選択肢なんてない。
…でも。
先生見てくれないし、なんて思ってしまった自分を吹き飛ばす。
_ほら、もうすぐバトンが回ってくる。
順位としては、6クラスあるうち、4位くらい?
なんでもいいか。元から、1位を獲る気なんてないし。
第二走者の子が、叫びながらバトンを繋いでくれる。
何も謝る必要なんてないのに。
私も頑張って走ったけれど、一人ギリギリ抜かすくらいしか出来なかった。
アンカーもみんな速くて、結果は4位。
こんなもんか、とかしか思えない自分が恥ずかしくなってくる。
そう。謝ることなんて一つもない。
なんなら、謝るべきは私の方だ。
そして、そうこうしているうちに2年生のリレーが始まった。
もう琳音には、2年生と言われたらまずD組を探す癖がついてしまっている。
だって、先生は………。
…と。第一走者が走り出した。
私は途中から飽きてきて、そこから3年生のリレーが終わるまで、相賀先生をこっそり眺めていることにした。
ハッとして顔を上げる。なんだ、もう終わったのか。
指示に従って、自分のクラスの団席に戻る。
クラス対抗リレーは全体で最後の種目。
これから、学年でどのクラスが強かったか、みたいな表彰が行われる。
団席に着いて、他愛もない会話をしていた。
_その時だった。
マイクを通した誰かの声が、運動場に響き渡った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。