第3話

ヘタレ脱却の第一歩
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2019/12/23 09:09
クラスメイト
クラスメイト
番場くん。
明後日あさってのクリスマス、私と一緒に出掛けない?
予定あるかな?

クラスの女子に呼び出され、用件は予想していたものだった。


俺のどこがいいのか分からないが、なぜかいつもこうして好意を向けられる。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
ごめん。
先約がある

これが一番、誰も傷つかない回答。


当日は家にこもっていれば、誰にも気付かれないし。
クラスメイト
クラスメイト
えっ。
先約って彼女? 私よりも先に誘ってきた人?
番場 悠一郎
番場 悠一郎
(面倒だな……)

こういうタイプは、はっきり言わないと引き下がらない。


もういっそ、好きな人がいると言ってしまおうとしたところ。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
……あ

視線を横にずらすと、千都世の姿が見えた。


どうやら、先に俺たちに気付いていたようだ。


千都世が決まりの悪そうな笑みを浮かべる。
菅原 千都世
菅原 千都世
ご、ごめん……。
悠一郎を捜してたら、偶然通りかかって……

俺はしめたとばかりに千都世を手招きした。


そして、恐る恐る近づいてきた千都世の手を取る。


自分でやっておきながら、心臓が口から飛び出そうだ。
クラスメイト
クラスメイト
え、誰?
番場 悠一郎
番場 悠一郎
この人と、クリスマスに出掛けるから

もちろん、そんな約束はしていない。


千都世なら、色々と察して合わせてくれるはずだ。


目配せをすると、千都世は軽く動揺を見せたものの、頷いてくれた。
クラスメイト
クラスメイト
そう……分かった
番場 悠一郎
番場 悠一郎
うん、ごめん

さすがに諦めたのか、彼女は帰っていった。


その姿が見えなくなったところで、千都世の手を離す。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
助かった。
話を合わせてくれて
菅原 千都世
菅原 千都世
……あれ?
クリスマス、出掛けるんじゃないの?

千都世は、今俺が言ったことを本気にしたらしい。


今度は俺が戸惑う番だった。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
(こ、これもチャンスだよな……!?)

千都世は、昔から人の好意に鈍感な節がある。


そこにつけ込んで悪いとは思うけれど、誕生日のご褒美として甘えるとしよう。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
……やっぱり、出掛けよう。
クリスマス
菅原 千都世
菅原 千都世
うん!
両家みんなで出掛けたことはあったけど、ふたりでは初めてだよね

千都世は、本当に嬉しそうに頬を緩めた。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
(か、かわいい……!)

俺の心臓が一際大きく跳ねる。


思わず口角を上げてしまいそうになって、慌てて口元を手で隠した。
菅原 千都世
菅原 千都世
どこに連れていってくれるの? お兄ちゃん

千都世は首をかしげ、からかうような言い方をする。


一時的なお兄ちゃんとはいえ、まだ弟扱いされているようだ。


長年の癖はそう簡単に抜けない。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
秘密。
楽しみにしといて

強がって答えたけれど、プランもなにも立てていない。


照れ隠しに、千都世の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。
菅原 千都世
菅原 千都世
わっ!
番場 悠一郎
番場 悠一郎
いつも千都世が俺にやってるから。
お兄ちゃんの間は、俺が千都世にする

乱れた髪を整えながら、千都世は驚いていた。


しかも、その頬には赤みが差していて。


なぜか、俺もつられて真っ赤になってしまった。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
そういえば、俺に何か用があったんじゃないの?

さっき、千都世は俺を捜していたと言ったのだ。


気を取り直して聞くと、千都世は目を左右に泳がせた。
菅原 千都世
菅原 千都世
用はあったはずなんだけど……ごめん、なんでもない!
番場 悠一郎
番場 悠一郎
千都世?

千都世はきびすを返し、そそくさと逃げていった。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
(これはもしかして……脈ありか?)

ようやく、千都世が俺を男として意識し始めたのかもしれない。


だが、相手はあの超鈍感な千都世。


期待してはいけない。
番場 悠一郎
番場 悠一郎
クリスマス、どこに行くかな……よし

予期せずして、クリスマスデートの約束を取り付けられた。


今までの俺だったら、きっと誘えなかっただろう。


誰も見ていないところで、小さくガッツポーズをした。


【第4話へつづく】

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