時計の短い針が零時を回ったころ、姉がアパートに帰ってきた。
玄関に行くと、姉がドアの鍵をかけるところだった。
「姉ちゃん、おかえり」
「あれー、春樹まだ起きてたのー? っていうか私が起こした?」
振り返り僕に笑いかける。
今年二十七になる姉は艶のある黒髪をポニーテールにしていた。
服装は白いワンピースに紺色のパンプスは姉が今一番気に入っているコーディネイトだ。
「ううん、起きてたよ」
僕は口もとを緩める。
グロスを塗っている姉の唇が濡れているみたいで綺麗だった。
「そう。ならよかった」
姉はフラフラした足取りでリビングに行くと、そのまま小さなソファーに腰掛けた。
ずいぶんとお酒くさい。
僕は隣に座ると、呆れ顔を見せた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。