第8話

D19×LA18 恋の芽生え Ⅱ
961
2024/01/21 09:00
前回の続きです。

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LA18Side


『変なことになっちゃっててすみません』


朝起きてスマホを見たら、宏斗から一言だけメッセージが来ていた。


(変なことって…………)


寝起きの頭でしばらく考えて、答えを見つけ出す。


「……宮城が言ってた、付き合ってるって話?」


別に気にしてないんやけど。


(宏斗も被害受けとるし)


どっちかと言えば、俺よりも宏斗の方が困るやろ。


『お互い様やろ。あんまり気にしてない』


送信すると、すぐに既読がつく。


……もしかして、俺が返信するの待ってた??


『それなら良かったです!』


『誰から噂聞いたん?』


『大弥さんです。たまたま街中で会って、ちょっとだけ話をしたんです』


(宮城、誰構わず言いすぎやろ……)


後輩のコミュニケーション能力の良さに、歳上ながら感心する。


『まぁ、また宮城には文句言っとくわ』


『はい笑!お願いします笑!後、もし良ければなんですけど……予定が空いてたら一緒に食事行きませんか?』


宏斗からの突然の食事の誘い。


確かに、最近会ってないもんなぁ……と思い返す。


ユーチューブとかネットとかで、宏斗の動向はそれなりに把握してたけど。


あ、これ変な意味で言っとるんじゃないからな。


宏斗の'先輩’として、知っておいた方が良いなって思っとるだけやから。


『食事、俺も行きたい。いつ空いとる?』


『来週の日曜日とかどうですか?』


『りょーかい。じゃあ、俺が予約しとく。また連絡する』


『了解しました!』


その後、可愛い犬のスタンプが送られてくる。


その犬が、俺に話しかけてくるときの宏斗の表情に似ていて、思わず笑ってしまった。


(宏斗と食事、ちょっと楽しみかも)


なんて、柄にないことを思った。









「今日行くお店ってここですか?お寿司屋さん?」


「そう。なかなかオシャレやろ?寿司もめっちゃ美味しいし」


「雰囲気が大人っぽいですね。由伸さんらしいです!」


時はあっという間に過ぎ、約束した日曜日の午後六時過ぎ。


最寄り駅で待ち合わせして、一緒に店まで来た。


どんな店にしようか悩んだ挙句、結局俺のイチオシの寿司屋にしてしまった。


(宏斗が嫌な顔してなくて良かった)


ホッとする。


生魚って嫌いな人多いから心配だったんだけど、宏斗は別に嫌いではなさそう。


ほんとは食べれるかどうかLINEで聞いたら良かったんだけど、なんか聞きづらかった。


(これも全部宮城のせいやからな……)


脳天気な顔をした後輩を思い浮かべたが、すぐに頭の中から追い払う。


まぁ、今は宏斗との時間を楽しまないと。








「そのとき柳さんが、めちゃくちゃ面白かったんですよ!……由伸さん、聞いてます?」


「あー、聞いてる聞いてる」


寿司を各々頼み、お酒を飲み始めて三十分ぐらい経った頃、宏斗の口調がおかしくなってきた。


柳さんが面白いという話は、これで三回目だ。


……宏斗、相当酔ってるな。


「それよりも、とりあえず水飲め」


「はぁーい」


元気の良い返事とともに、俺が渡した水をちびちび飲み始める。


……なんか、宏斗の動きって小動物っぽいな。


試合中はめちゃくちゃカッコイイのに、こういう可愛いところのギャップにファンはやられるのか……。


妙に納得する自分がいる。


(まぁ、宏斗は俺の自慢の後輩やもんな)


そこに変な意味とかはない、はずだ。


たぶん。


「……由伸さん、僕たちって付き合ってる疑惑出てるんですよね」


「あぁ……。それがどしたん?」


まさか宏斗の方からこの話題が出てくると思ってなくて、無意識に体が強ばる。


「……よくよく考えてみたんですけど、僕、由伸さんなら良いかなって」


「良いって……何が?」


宏斗の言葉の真意が分からなくて怖い。


(……なんで俺、怖がっとるんやろ。……もしかして俺、宏斗に変に思われたり、嫌われたりするのが怖いって思っとる?)


自分自身の訳の分からない感情にも怖くなる。


「本当に由伸さんと付き合っても良いかなって」


一瞬、何を言われているか分からなかった。


「……はぁ!?なんで急に!?」


(宏斗の考えとることが分からん!!付き合うって何!?)


「だって由伸さん、野球上手いし、一緒にいて楽しいし、可愛いし、カッコイイし」


「……そんな奴、他にもいっぱいおるやろ。それに、俺ら男同士やし」


そうは言ってみるものの、宏斗に告白されたことが嬉しいと思う自分もいる。


(……俺、なんかおかしくなってる)


宏斗のことは、ただの後輩としか思ってなかったのに。


「恋愛に性別なんか関係ありませんよ。それよりも、由伸さんの気持ちが聞きたいです」


「……嫌いじゃない。けど……宏斗は宏斗やもん」


「でも、嫌いじゃないんですよね。なら、良いです。今はそのままで。これから好きにさせれば良いんです」


ニッコリ笑う宏斗。


その顔にゾクゾクする。








……知らない間に、俺も宏斗のことを好きになってたのかもしれない。


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