街灯の光に照らされた公園の時計を見ると午後8時半を回っていた。
春だから少し肌寒いけど、もうそれを気にするのも今日まで。
公園のひんやりとしたベンチに座って今僕が書いているのは最期の手紙。
今日は中学校の入学式だったけど抜け出して来た。まあ来てくれる人は誰一人として居ないし、今日で僕はもう居なくなるから。
死ぬまで迷惑しかかけない人生だったな。
いや、死んでもか。でももう引き返そうなんて思わない。だって今帰ったら「遅い」ってお母さんの彼氏に殴られるし。
多分もう何処にも僕の居場所なんて存在しない。
だからもうこれで良いの。
「自分の人生は自分で決めるもの」なら、僕はただその言葉通りにしただけ。
書けた。最期の手紙。
あ、橋行く前に最期に好きだったジュース買お。
警察とかが来る前に。
無事にジュース買えたし橋行こ。
橋には少しだけ桜が散ってて、その橋の下からは川の流れる音が聞こえる。
ここで自分が作ったお弁当を食べた。冷えてて味は何とも言えないけど、そんなのもどうでもいい。途中でもう食べる気力も無くなってきたから残した。
そのまま川を眺めてると、
僕が残したお弁当の余り。
ごめんけど今はこれぐらいしかあげれる物がない。
その猫もお腹が多少満たされたのか僕の足元に来た。
少し撫でると「もっと」と言わんばかりに近寄って来たから、その場に胡座をかいて座ると足の上に乗ってきた。それからしばらく撫でてると寝てしまった。
この子が起きて僕の元から離れたらこの橋から飛び降りることにした。
この橋は人通りも全くなくて落ち着くなぁ。
警察も来ないし。
そんなことを猫を撫でながら考えていると自分も段々と眠気が来てしまい意識を手放した。
目が覚めると辺りは真っ暗で持ってきた腕時計を確認すると10時半。
もう足の上に猫は居なくて帰ったんだと確認しながら自分の結んでいた髪を解いてさっき書いた紙を吹き飛ばないようにお弁当箱を上に置いた。
橋の欄干を慎重に飛び越えて、やっと準備が整った。後はもう此処から飛び降りるだけ。
ヤバい、橋の向こうから人が来た。
僕はもう一度欄干を飛び越えて元の位置にあったお弁当箱と最期の手紙とさっきのジュースを抱えて全力で走った。
そして向かった場所は、
橋の下の川だった。
傍まで来ると急いでお弁当箱と紙とジュースを投げてそのまま川に靴のまま入った。
このまままっすぐ行けば流されてもうあっちも追えない。
無我夢中でただ深い所に行くことだけを考えながら足を動かした。
追いつかれてしまった。けど、もう深い所のすぐ傍だ。
来れる訳が無い。
と思ったのに、その人はなんの迷いも見せずに川の中に入って来た。
違う。他の人を巻き込みたい訳じゃない。
お願い止まって。
その時の僕はもう足がほぼ浸かっていて流されるギリギリ。
そんな中あの人はどんどんこっちに向かってくる。
でも別の怖さもあった。それはこの人に何かされるのではないかという恐怖。
そんな恐怖が沸いてきて足がついに動かなくなってしまった。
もう僕の手はその人に掴まれていた。
それが逆に怖くて僕は、
振り払ってしまった。
その申し訳なさとこの人への恐怖が少し和らぐ様な気持ちが混ざり合って涙が出てくる。
この人、僕の気持ちわかった、?
でも、今ここでこの人の手を取っても辛いのは変わらない。
そしたらその人は僕と同じ所まで来てしまった。
そして僕達2人は川から上がってまた橋に来た。
そう言って上着を脱ぎ始めたとき、
その人の背中から少し見えたものは、刺青だった。
え、待って今なんて言った?
え、?
まあ、流れに身を任すか、
俺、?
(帰り道)
するとその猫は僕の足元に来た。
また撫でたら満足したのか帰って行った。
久しぶりに撫でられた。気持ちが良い。
わかってたけどやっぱり怖い、
(中に入り)
入りたいけど、僕の体、
きっと、もっくんなら、
そう、僕の体には痣や傷が沢山あるから、見るだけで不快になる人も居ると思う。
(風呂場)
(シャワーの音)
(ポチャン)
(ギュッ)
そう言ってりょーちゃんは部屋に戻って行った。
そして組員を集めた。
もうとっくに深夜だけどそんなのは関係ない。
りょーちゃんをあんな姿にして追い込んだ奴に今は怒りが収まりきらない。
しかもりょーちゃん細いから女の子みたいだった。きっと食事もろくにさせてくれなかったんだろう。
絶対に居場所を突き止めて地獄に落としてやる。
ここで一旦切ります!めちゃくちゃ長くなってしまいすみません💦
スクロールお疲れ様でした!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!