俺は、正義感が強い。
「会長ぉー、今日出す課題見せて!」
「昨日バイト夜まであって忙しかったんだよーなーお願い!」
「!え、会長サマが直々に教えてくれるの⁉︎」
「まじ⁉︎一条俺にも教えて!」
俺は一条宙。
持ち前の正義感の強さと何故か頼られがちな体質のおかげで、俺が通う高校の生徒会長を務めている。
クラスメイトや部活の後輩は勿論、何故か先生にまで頼られてしまうんだよな…
「おお、一条くん、ちょうどいいところに」
「今日もまた何かと頼られていたみたいだな」
「ははは、それだけ一条くんがみんなから頼りにされてるってことだな」
「実は、一条くんに私からも頼みがあってね」
「…君のクラスに転校してきた棗瑞樹という生徒を覚えているかい?」
「身体が弱いというか、少し素行が良くないというか…まあ、君の言う通り保健室に通っていて授業にはあまり出ていないんだ、そこで、一条くんから声を掛けてやってほしいんだ」
「うーん、まあニュアンスは少し違うような気もするが…まあ、一緒に授業に出るよう声を掛けてやってくれないか?」
先生が何やら曖昧な口調で言う。
まあ要するに声を掛けてくれってことだよな。
「!本当か?頼りにしているよ」
棗くんか…挨拶程度でしか話したことがないけどどんな人なんだろう…
ガラッ。
「!あら…生徒会長の一条くん?」
棗くんについて何も知らない俺は、まずは保健室に行って話をしてみようと思った。
「え、棗くん?彼なら多分屋上にいるんじゃないかな」
「ええ、さっき私が来るまではここにいたみたいだけど、廊下ですれ違って階段を上っていくのを見たの」
…保険医の先生が保健室に不在の間は保健室にいて、戻って来たら出て行った…?
どうしてそんなことを…
「…一条くん、もし棗くんと仲良くなりたいなら、先生はあまり賛成はしないよ」
「棗くんは何ていうか…素行が良くないから、一緒にいたら一条くんの生徒会長としてのイメージも下がっちゃうと思うの」
「どういうことって、さっき言った通り…」
「え、あ…ごめんなさい、悪く言ったつもりじゃ…」
…あんなに強く先生に反抗すべきじゃなかったな。
でも、棗くんがそんな風に下に見られる発言をされているのを見過ごせなかった。
気持ちを切り替えて、棗くんを探しに屋上へ向かう。
と…
『…ちょ、お願い待って…』
「んなこと言いながらお前も乗り気だっただろ?ほら、準備しろよ」
屋上の方から何やら話し声が聞こえてくる。
『…っだめ…ま、待ってってば!』
「待てねーよ!俺はお前と…」
…何か嫌がらせでもしてるのか?
止めないと…!
ガチャッ。
俺が屋上のドアを開け、言い合いを止めに入ると…服がはだけて抱き合っている男子生徒二人がいた。
…って、片方は棗くん…⁉︎
涙目だけど…
「うわまじか、生徒会長じゃん!やべ!」
『!え、ちょ…』
もう一人の男子生徒が、慌てて服を着て棗くんを置いて屋上から出ていく。
俺が棗くんに自分のカーディガンを羽織らせると…
『…会長のせいであいつ逃げちゃったじゃん』
棗くんはそう言って俺の手を握る。
棗くんは俺の手を…棗くんの胸元に当てる。
押し倒され…何故かズボンのチャックに手をかけられる。
棗くんに…唇を奪われる。
棗くんが俺に抱きつく。
…!もしかして…
俺は、棗くんに服を着せ、その場を立ち去った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。