꒰ めめんともり side ꒱
ぼんやりと目が覚める。
青空が広がる窓の外では、小鳥が踊っていた。
髪を整えながら着る服を探す。
私はあることを決めていた、それは__
ひなにいさんに今週の休日に遊ばないか、
と聞くことだった。
一見小さくてしょうもないことだが、
私としてはビッグニュース。
心を弾ませると同時に緊張が込み上がってくる。
みぞれさんは不自然な笑顔を見せた。
そのまま私の横を通り過ぎていく。
みぞれさんの目の周りは、真っ赤に腫れていた。
それから少し経って、朝食の時間が訪れた。
私が着いた頃にはもうみんな揃っていた。
ただ__
この前起きたことのせいか、顔を合わさない。
その時、気まずい空気が私の目の前をスッと
過ったような気がした。
席が私とウパさんに挟まれている茶子さんに
そうこっそりと耳打ちされた。
まともで真面目で、誰よりも優しい茶子さん
だからこそ、とても悩みこんでいた。
__こういう人には、悩みがよくあるから。
そして多少無言の時間が続いたものの、
無事に『ごちそうさま』と終わりを告げた。
すっかり空っぽになったお皿を持ちながら、
チラッとひなにいさんの方へ視線を逸らす。
チャンス。
ひなにいさんがリビングのドアを開けて、
部屋を出て行こうとしたからだ。
どうせなら、2人きりで話したかった。
急いで食器を食洗機に入れて、
ひなにいさんの背中を目指して歩いた。
「 もうちょっと 」そう思い、声をかけた。
だけど、その声はひなにいさんには__
__届かなかった。
レイラーに、私の声を遮られた。
私のことを気にもせず、レイラーは
ひなにいさんの元へと素早く駆け寄る。
一瞬、私のことを見たレイラーの顔は、
ニヤッと何かを企んでいるような笑顔だった。
そして私は、今起きた出来事が
悪気が起きたことだと、瞬時に理解した。
私の"恋心"を、弄んだ…?
その時、初めて私は"弟子"のことを恨んだ。
これは、裏切られたってことだろう?
私の恋なんて、
私のことなんて、
全然興味が無いってことだろう?
"師匠"なんて、ただの肩書きってこと?
レイラーなんて、レイラーなんて…
気づけば私は真っ暗な自室へ駆け込み、
机の上に丁寧に置いてある写真に__
真っ黒な油性のペンで、髪ツインテールの
女の子の顔に、大きくバッテンを描いた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。