꒰ めめんともり side ꒱
『 ウパパロン 』と書かれた板が掛かってある
ドアの前で、私は深く深呼吸をする。
そして軽くコンコン、とノックした。
負けたくないのは分からんでもないが、
そんなに威張るもんなのかなぁ。
男性だけど…まぁいいか、と思い、
私はなんの躊躇いもなくドアを開ける。
私が口にした言葉を聞いた途端、
ウパさんは目を逸らし、唇を噛みしめた。
ウパさんからの問いに、私はにっこりと微笑む。
꒰ ウパパロン side ꒱
Latteさんと2人で話してたんだ。
最初は、特に問題なかった。
だけど、予想外なことをLatteさんが言った。
そう言って引きつった笑顔を見せた。
そんな私にもっと疑いが濃くなったのか、
私のことをじーっと見つめてきた。
思わず頬がぽっ、と暖かくなる。
私は何も言えなくなり、黙りこくってしまった。
それがいけなかったんだろう。
視界の外でLatteさんは声を張り上げる。
__性別って、嘘ついちゃいけないの?
ただ私は、男になりたかった。
好きな人に、近ずきたかっただけなのに。
ねぇ、Latteさん__
" 俺のこと、覚えてる? "
ネットで知り合った女性がいた。
何かとプライドが高く、気が強かった。
その人にも、自分のことを男だと言った。
日を重ねるごとに私達の仲は深まっていく。
時には喧嘩をした。
だけど、すぐに仲直りする。
たった1人の親友がこの人で良かったと、
心から思えるほどだった。
そして、私達は実際に会ってみることにした。
私が女だと分からなくさせるため、
できるだけ顔を隠すような服を身に纏う。
人が多く行き交う噴水の前で、辺りを見回す。
すると__
大声を上げながら誰かに強く背中を叩かれた。
俺は瞬時に後ろへ振り向く。
そこには__
その愛くるしい声は、何回も何回も聞いた、
Latteさんの声そのものだった。
そう言いながら私の頬をつんつん、とつつく。
Latteさんは黒髪ボブで赤い瞳。
黒白のワンピースのようなものを着ていた。
Latteさんは頬をぷくっと膨らませながら
上目遣いでそう聞いてきた。
少しの間私はうーん、と唸る。
そして小さく耳打ちした。
必死にぶんぶんとLatteさんは首を横に振る。
その様子を見て私はくすくすと笑った。
そんな幸せな時間が、
今では遠い昔のことに思える。
それからしばらくたった頃、
私は『無期限活動休止』という選択を選んだ。
色んな人に止められたり、慰めてくれた。
でも、" 新しい世界 "に旅立ちたかったから。
このことをきっかけに、
Latteさんと話す機会がぱったりと無くなった。
あの声を、また聞きたい。
そんなことを何度も思う。
でも、気づけば私は他の所で活動を始めていた。
『 インターネット依存性 』
そんな言葉が私の頭を過ぎったこともあった。
スクロールお疲れ様です!!
今回はこちらの企画に参加致しました🙌
GW投稿リレーです!!
明日は
( この小説かは分かりませんが )
みゆみう様の作品が投稿される予定です!!
ぜひ見てみてくださいね〜
それでは👋
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!