翌日は俺もノアも休みだった。
蝉の音で再び目を覚ますとそこにはちゃんとノアが居て、眠ってる間に俺はTシャツを着せられていて、風邪引くと思って着せてくれたんだと安心して、また眠った。
眠っていたら「啓ちゃん、起きれる?」と聞かれてる気がして薄っすらと目を開けると、ノアがほんとに居て心配そうに俺を見つめている。
ほんとだよ・・・と思ったが、甘えたのも何回も求めたのも俺だから。
海外ドラマかよ。した翌日に体調を心配し、彼氏がキッチンに立ち、少し下手な料理をベッドまで運んで来て軽いキスを落として笑い合う。
それも悪くはないと思ったが、そんなのはいらない。
何とも甘ったるい舌足らずな話し方になって、自分でもびっくりした。
焦っているノアに、両手を広げた。
そうしたらノアが「け、啓ちゃん、おはよう」って笑いながら俺を抱きしめる。俺の男は史上最高にカッコ良い。
お姫様だっこなんて柄じゃないから、俺はそのままノアに真正面から飛びついてノアの腰に足を回した。
恥ずかしいから誤魔化したが、俺は最近この体勢が好きだ。ノアのものって、あと、ノアは俺のものって感じがする。
だって俺、地面に足ついてないのに、周りの景色が動くから。
俺の目に映る二人で選んだ家具も、二人だけの空間も、真っ白な壁も、どれもが二人だけのもので、俺達の愛の巣だってことを実感する。
俺を抱っこしたノアは両手が塞がっているから、片足で寝室のドアを閉めた。
今のなんか彼氏っぽい。と思った。
恥ずかしいからノアの首元に顔を埋める。
顔をノアの首に埋めてるから見えないけどお前、ニヤついてんじゃねーよ、俺の寂しかったあの期間の埋め合わせを今日しろ。
俺はダイニングテーブルの椅子に座らせられたが、ノアに巻き付けた腕を離せない。
まだきっと寝惚けてる。
そうして、ぎゅっと抱き着いた。
なんだこれ、離さなきゃ離さなきゃと思ってるのに離せない。もうちょっとだけ………
真剣な顔をしていたのに、突然、はっとするノアの顔が愛おしい。
昨日、俺が、おかえりって玄関で押し倒されながら言った後、お互い必死でこいつはまだ、ただいまって俺に言っていないことを、俺は少し最中も気にしていた。
朝起きたら忘れかけていたが、またふと思い出した。
ふふっと笑い合った。
安心してる自分がいる、俺が昨日と今日2回おかえりって言ったから、だから、ただいまって3回言うようなこいつが大好きだ。
ノアを開放すると、ノアはすっとんで昼ご飯を取りに行く。
やっと覚醒して来た自分自身に、少しの間でも寂しくなる俺は重症だな、と苦笑いする。
久しぶりに食べたノアの温かいご飯は美味しくて「啓ちゃん、今、ダイエットしてない?大丈夫?」って心配されるくらいにいっぱい食べてしまった
洗面所に消えてくノアの後ろ姿を見つめた。昨日散々恋人らしいことをしたくせに、何でお前はいつも一歩進んだら一歩後退するんだよ。ノアの後ろを追いかけると洗濯機を回していたから、後ろから抱きついた。
すると驚いているノア。
それから冷蔵庫の整理も抱きついたまました。整理したのはノアだけど。
洗い物も抱きついたまました。洗い物したのはノアだけど。
掃除機も抱きついたまま、かけた。かけたのはノアだけど。あ、掃除機の充電の仕方は教えてもらったから今度してみようとは思う。ノアはしなくていい。って言ったけど。
やっと家事が終わって、 まぁ、俺はしてないんだけど、ソファーに2人で座る。離れて座ろうとするノアの手を掴んで隣に座らせると、その膝の上に座る。もちろん向かい合わせで。必然的に視線が合い、自分でやったくせに恥ずかしくてノアの首に顔を埋める。
今日は寂しかった分、たくさん甘えよう。
𝐹𝑖𝑛.
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。