第26話

キミが居るから Ⅲ
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2023/04/10 11:00
翌日は俺もノアも休みだった。


蝉の音で再び目を覚ますとそこにはちゃんとノアが居て、眠ってる間に俺はTシャツを着せられていて、風邪引くと思って着せてくれたんだと安心して、また眠った。


眠っていたら「啓ちゃん、起きれる?」と聞かれてる気がして薄っすらと目を開けると、ノアがほんとに居て心配そうに俺を見つめている。
NOA
啓ちゃん、もうすぐお昼だよ。
啓永
ん。
NOA
ご飯作ったから。
啓永
ん。
NOA
起きれる?
昨日はごめん。しんどくさせて。
ほんとだよ・・・と思ったが、甘えたのも何回も求めたのも俺だから。
NOA
もし無理だったらここまで運ぼうか。
海外ドラマかよ。した翌日に体調を心配し、彼氏がキッチンに立ち、少し下手な料理をベッドまで運んで来て軽いキスを落として笑い合う。
それも悪くはないと思ったが、そんなのはいらない。
啓永
おきれるから、だいじょぶ。
何とも甘ったるい舌足らずな話し方になって、自分でもびっくりした。
啓永
やっぱ起きれない。
NOA
じゃ、ご飯持ってこようか。
啓永
違う。そうじゃない。
NOA
じゃあ何。
啓永
運んで、俺を。
焦っているノアに、両手を広げた。

そうしたらノアが「け、啓ちゃん、おはよう」って笑いながら俺を抱きしめる。俺の男は史上最高にカッコ良い。

お姫様だっこなんて柄じゃないから、俺はそのままノアに真正面から飛びついてノアの腰に足を回した。
NOA
また、この体勢だね。さい・・・。
啓永
最近、これ好きだねって言ったら〇す。
NOA
でも・・・。
啓永
良いから早くご飯食べよ。
恥ずかしいから誤魔化したが、俺は最近この体勢が好きだ。ノアのものって、あと、ノアは俺のものって感じがする。

だって俺、地面に足ついてないのに、周りの景色が動くから。
俺の目に映る二人で選んだ家具も、二人だけの空間も、真っ白な壁も、どれもが二人だけのもので、俺達の愛の巣だってことを実感する。


俺を抱っこしたノアは両手が塞がっているから、片足で寝室のドアを閉めた。
今のなんか彼氏っぽい。と思った。
恥ずかしいからノアの首元に顔を埋める。
NOA
啓ちゃん、よく寝れた?
啓永
ん、寝た。
NOA
ご飯、食べれる?
啓永
食べる。
NOA
いっぱい食べれる?
啓永
いっぱい食べる。
顔をノアの首に埋めてるから見えないけどお前、ニヤついてんじゃねーよ、俺の寂しかったあの期間の埋め合わせを今日しろ。

俺はダイニングテーブルの椅子に座らせられたが、ノアに巻き付けた腕を離せない。

まだきっと寝惚けてる。
NOA
ちょっと腕離してもらえるかな?
そうして、ぎゅっと抱き着いた。
NOA
昼ご飯、持ってこなきゃだから。
なんだこれ、離さなきゃ離さなきゃと思ってるのに離せない。もうちょっとだけ………
啓永
まだ、ただいまって俺に言ってない。
真剣な顔をしていたのに、突然、はっとするノアの顔が愛おしい。

昨日、俺が、おかえりって玄関で押し倒されながら言った後、お互い必死でこいつはまだ、ただいまって俺に言っていないことを、俺は少し最中も気にしていた。
朝起きたら忘れかけていたが、またふと思い出した。
NOA
啓ちゃん。
啓永
何だよ。
NOA
啓ちゃん、ただいま。
啓永
・・・・・・おかえり。
NOA
ただいま、ほんとに会いたかった。
啓永
知ってるー。
ふふっと笑い合った。

安心してる自分がいる、俺が昨日と今日2回おかえりって言ったから、だから、ただいまって3回言うようなこいつが大好きだ。

ノアを開放すると、ノアはすっとんで昼ご飯を取りに行く。

やっと覚醒して来た自分自身に、少しの間でも寂しくなる俺は重症だな、と苦笑いする。


久しぶりに食べたノアの温かいご飯は美味しくて「啓ちゃん、今、ダイエットしてない?大丈夫?」って心配されるくらいにいっぱい食べてしまった
NOA
洗濯物しなきゃ。
啓永
悪かったな。何もしなくて。
NOA
じゃ、洗濯物してくるよ。
洗面所に消えてくノアの後ろ姿を見つめた。昨日散々恋人らしいことをしたくせに、何でお前はいつも一歩進んだら一歩後退するんだよ。ノアの後ろを追いかけると洗濯機を回していたから、後ろから抱きついた。

すると驚いているノア。
啓永
こうしたらダメ?
NOA
だ、ダメじゃないよ。
でも、啓ちゃんが・・・。
啓永
ん?俺が何?
NOA
啓ちゃんが、朝から可愛いから。
啓永
じゃあ、今日ずっとくっついてていい?
NOA
いいよ。
それから冷蔵庫の整理も抱きついたまました。整理したのはノアだけど。
洗い物も抱きついたまました。洗い物したのはノアだけど。
掃除機も抱きついたまま、かけた。かけたのはノアだけど。あ、掃除機の充電の仕方は教えてもらったから今度してみようとは思う。ノアはしなくていい。って言ったけど。


やっと家事が終わって、 まぁ、俺はしてないんだけど、ソファーに2人で座る。離れて座ろうとするノアの手を掴んで隣に座らせると、その膝の上に座る。もちろん向かい合わせで。必然的に視線が合い、自分でやったくせに恥ずかしくてノアの首に顔を埋める。




今日は寂しかった分、たくさん甘えよう。





𝐹𝑖𝑛.

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