第17話

馬鹿みたい
1,062
2019/01/17 12:25

〈隼side〉

はぁ………最悪だ……


なにこの状況…



ナオちゃんに手を引っ張られて
気付けば会社の近く
隼
ナオちゃん、もう良いんじゃない?
ナオ
なにが?
隼
ナオ
ねえ隼、
私達付き合ってるんだよ?

フリ。なんだろ
隼
フリでしょ?
ナオ
そうだけど

言った翌日にあの子と手繋ぐってなに?
隼
……っ…それは
ナオ
好きじゃないなら
あんなことしない方がいいよ


好きだ。って言えねぇのは
誰のせいだよ…
隼
……うん、

じゃあ、俺楽屋行くから

そう言い放ってから

会社の中に入って
ナオちゃんと別れる

楽屋に着いて

少し荒めにドアを開けたら
玲於
玲於
うわっ、びびった。
隼かよ……
亜嵐
亜嵐
どうしたの、
なんか荒ぶってんね
隼
まぁ……
裕太
裕太
何かあったんやな
龍友
龍友
隼のペアの子か?
隼
え?
龍友
龍友
図星やんな、笑


俺そんな分かりやすい……??
玲於
玲於
やばいんじゃねぇの
ペアの子
隼
んー…まぁね…

まぁね。というか、確実に。
亜嵐
亜嵐
気をつけろよ
隼
ありがとうございます


きっと、亜嵐くんは
あなたちゃんのことで、色々あってる。

なんて知るはずがない
亜嵐
亜嵐
よし、撮影行きますかーー
玲於
玲於
今日どこっすか?
亜嵐
亜嵐
またあのカフェだって!
玲於
玲於
まじっすか?!
亜嵐
亜嵐
そうそう、企画担当の人が気に入ったらしくて


亜嵐くんと玲於のそんな会話

俺にとってはヒヤヒヤしかしなくて


ナオちゃん、何もしませんように…
涼太
涼太
隼、相当悩んでるっぽいね
隼
え?
涼太
涼太
やばいよ、顔に出てる笑
隼
あ、まじっすか
大丈夫っすよ!笑
涼太
涼太
ちゃんと相談しろよ?笑
隼
はい!笑

うんうんって笑っていった涼太くん


やっぱ王子ってあんな人のこと言うんだわ…



亜嵐くんのよし、出るよー
って声に皆楽屋を出て


撮影のカフェまで向かう。



近いから車では行かずに歩きなんだけど


後ろに居る皆のペアの女の子達が色々言ってて




”歩きとかありえなくない?”

”うちらのことなんだと思ってんだよってね”

”近いからとか意味分かんないし”

”可愛い靴汚れちゃうじゃんね”

”はっきり言って疲れるわ”

”てか、バレたら大変じゃない?”

”それな、うちら芸能人なんだからさ~”

見事にペアの子一人一人が愚痴ってて

玲於
玲於
…はぁ……なんなの

玲於が小声でそう呟く
隼
聞こえるよ玲於、
玲於
玲於
だってそうだろ
心綺麗なやつ一人も居ねぇじゃん

玲於のその言葉に

他のメンバーもそう思ってたらしく

うんうん。って深く頷いて


皆聞いてないふりをしながら


気付けばカフェに来てて


中から


はい!もう大丈夫ですよ!

って声が聞こえて
亜嵐
亜嵐
お願いします!
玲於
玲於
お願いします
涼太
涼太
お願いしまーす
隼
お願いします!
裕太
裕太
お願いします
メンディー
メンディー
お願いします!
龍友
龍友
お願いしまーす!
サラさぁぁん!
サラさん
もー、笑
うるさいよ笑
貴方
貴方
あっはは笑

サラさん。って人の隣であなたちゃんが笑ってて
俺も話そ!
って思って行こうとすると


腕を誰かに掴まれる



振り向いたらそこにはナオちゃんが居て
隼
…なに?
ナオ
私達から撮影しよ?隼
隼
え?
ナオ
あの!私達が最初にします!

ナオちゃんが勝手に進めて

もう衣装の俺らはこの前とは違うカウンターに座る


カメラ「じゃあ撮っていきますねー」

目の前に居るあなたちゃんは
俯いてカップを綺麗にしてて


その顔は、今にも泣きそうで。



絶対勘違いしてる……というか


あれは勘違いしない方がおかしいか…

謝りたい。今すぐ。
違うよ。って誤解を解きたい


なのに出来なくて。



それがすごく悔しい

カメラ「隼くん大丈夫?」
隼
え?



カメラ「顔!元気ないよ!笑」
隼
あ…すいません…笑
ナオ
もー隼!緊張しすぎ!笑


ナオちゃんが俺の肩を叩きながら











ナオ
私達付き合ってるんだから、笑顔で写ろ!
って、


あなたちゃんの前で
一番言ってほしくないことを言った
亜嵐
亜嵐
え………
玲於
玲於
まじかよ……

後ろにいたメンバーにも聞こえたのか
そんな声が聞こえる


違う。って言おうとしても


”被害を及ぼしたくないなら、”
って言葉が頭をよぎる
隼
…っ……


あなたちゃん。
って呼ぼうとしたら


亜嵐
亜嵐
あっ、やべ
コーヒーこぼした

って亜嵐くんの声。



後ろを向くと結構衣装にかかってて


衣装「あー…替えあるので!」


衣装「すみません…着替えれるところありますか?」
貴方
貴方
あっ、ありますよ!

完全にタイミングを逃して

衣装「お願いします!」
貴方
貴方
はい!
亜嵐、こっち
亜嵐
亜嵐
うん


そうやって二人が裏に入っていって



あぁそっか。

亜嵐くん、わざとか。






もう駄目じゃん。俺…




〈あなたside〉
ナオ
私達付き合ってるんだから、笑顔で写ろ!

私の前で、


一番聞きたくなかった言葉。





やっぱり、付き合ってたんだ…







前をふっと見ると俯いてる隼くん

その顔は苦しそうで




ねぇ、なんでそんな顔するの?
って聞きたいけど、私は聞ける立場じゃない





あぁもう無理だよ……


って思ってたら





亜嵐くんがコーヒーこぼして


着替える為に一緒に裏に行く
貴方
貴方
ここの中で着替えて!
亜嵐
亜嵐
うん、ありがと

私達がエプロンに着替える為の所

カーテンの中に亜嵐くんを入れて


私は椅子に座る
亜嵐
亜嵐
ねえあなた

カーテンの中から話してくる亜嵐
貴方
貴方
ん?
亜嵐
亜嵐
…その……大丈夫?
貴方
貴方
え?
亜嵐
亜嵐
いや、隼とあの子が……って

俺らも知らなかったから
貴方
貴方
……うん…大丈夫


なんて嘘
亜嵐
亜嵐
嘘でしょ
亜嵐
亜嵐
大丈夫なんかじゃないくせに


って、見透かされてる声




その声を聞いたら涙が一気に溢れだして
貴方
貴方
………っ……なんでだろうね…
亜嵐
亜嵐
え?
貴方
貴方
……私…心のどこかで…期待してた……

隼くんは…って…
貴方
貴方
でも、違った……

隼くんには付き合ってる人が居て………



私………なにしてるんだろ…

”あなたちゃんのこと嫌いになんてならないから!”

って笑顔で言ってくれた隼くん



それだけで舞い上がってた私
貴方
貴方
ほんと………馬鹿みたい…


涙が溢れて止まらなくて



ずっと泣いてたら



カーテンが開く
亜嵐
亜嵐
あなた
貴方
貴方
…っ、よし着替えたね!

行こっか…

戻ろうとしたら


腕を引っ張られて暗い視界
貴方
貴方
…どうしたの…
亜嵐
亜嵐
強がらなくていいから
貴方
貴方
なにが…
亜嵐
亜嵐
隼のこと、好きなんでしょ。

好きなままで良いじゃん。
貴方
貴方
駄目だよ…付き合ってるのに…
亜嵐
亜嵐
……でも好きじゃん


なんで自分の気持ち押し込むの。

って言葉に


また涙が溢れて
貴方
貴方
……好きだよ……

好きだけど

ついさっき知ってしまったことは

すごく苦しくて、胸が張り裂けそうな事実。
亜嵐
亜嵐
うん、

だったら少しくらい信じてあげて

そう言って離れる亜嵐

亜嵐の顔を見ると微笑んでて
亜嵐
亜嵐
俺の大事な後輩だから、笑

落ち着いたら来なよ。

って頭に手を優しく置いて出ていった亜嵐


私はどうすればいいかも分からなくて


椅子に座ってまた少し泣いた




〈亜嵐side〉


隼…あの子と付き合ってるなんて


ほんとかよ…




もしかしたら嘘かもしれない。
って俺の予測で


あなたに、信じてあげて。って言った


お店の中に戻ると

サラさん
あれ、あなたは?
亜嵐
亜嵐
あぁ、なんか仕事思い出したみたいで
すぐ終わらせて戻ってくる。
って言ってました

そっかそっか。
って言ったサラさんって人は


多分察してて


待機する所に戻ると

玲於
玲於
亜嵐くん
どうでした
亜嵐
亜嵐
ん、?
あぁ、まぁ多分違うだろう。
って俺は思う
玲於
玲於
俺もっす
亜嵐
亜嵐
だよな~…

そんな会話をして



気付けば俺の撮影も終わって
会社に戻る


楽屋に入ると

隼は皆からの質問攻め
龍友
龍友
なあ隼、あれまじなん?
メンディー
メンディー
え、冗談だよね?
隼
………
裕太
裕太
どういうことなん?
涼太
涼太
隼、何かあるの?
隼
………
玲於
玲於
おい、どうしたんだよ

最近おかしいじゃん


皆に聞かれても黙ってる隼
亜嵐
亜嵐
ねえ隼。
このままだと色々中途半端じゃん
亜嵐
亜嵐
あなたのことも、あの子のこともさ


メンバー皆、隼があなたのこと好きなのは
薄々気づいてて
裕太
裕太
すれ違ってたりしたらやばいんちゃう?
隼
………俺、もう無理なんすよ
玲於
玲於
は?
亜嵐
亜嵐
え?
隼
あなたちゃんのこと
亜嵐
亜嵐
どういうこと?

話したと思ったら、

もう無理。って…
隼
亜嵐くん、あなたちゃんのこと
お願いします

とか言ってきて
亜嵐
亜嵐
何言ってんの?

んなの、付き合ってる。って認めたみてぇじゃん
亜嵐
亜嵐
付き合ってんの?
隼
…はい
亜嵐
亜嵐
あなたのことは…

好きじゃねぇの?
隼
……最初から好きじゃないっす…

”最初から好きじゃない”


その言葉に何故かイラッっとして
亜嵐
亜嵐
意味分かんねぇ
亜嵐
亜嵐
じゃああなたの気持ちはどうなんだよ
隼
え?
亜嵐
亜嵐
隼だから大丈夫だと思ったのに


あの時のあなたの涙。

隼が好きだからこそ流した涙なのに



今の隼は

そんなの関係ない。って言ってるみたいで
隼
どういうことっすか、?
亜嵐
亜嵐
こんなの隼じゃねぇよ
龍友
龍友
亜嵐くん、落ち着け
亜嵐
亜嵐
もういいわ。
あなたは俺が貰う


そう言い放って楽屋を出る


俺が貰う。って言ったのは


隼に危機感を持ってほしかったから言ったけど
普通に雰囲気悪くなったわ…




まぁでも
今の隼は自分を持ってねぇ。っつーか

流れに任せてフワフワしてる感じがして
俺はすげえ嫌だから



これでいいんだ。って廊下で深呼吸をした

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