〈隼side〉
はぁ………最悪だ……
なにこの状況…
ナオちゃんに手を引っ張られて
気付けば会社の近く
フリ。なんだろ
好きだ。って言えねぇのは
誰のせいだよ…
そう言い放ってから
会社の中に入って
ナオちゃんと別れる
楽屋に着いて
少し荒めにドアを開けたら
俺そんな分かりやすい……??
まぁね。というか、確実に。
きっと、亜嵐くんは
あなたちゃんのことで、色々あってる。
なんて知るはずがない
亜嵐くんと玲於のそんな会話
俺にとってはヒヤヒヤしかしなくて
ナオちゃん、何もしませんように…
うんうんって笑っていった涼太くん
やっぱ王子ってあんな人のこと言うんだわ…
亜嵐くんのよし、出るよー
って声に皆楽屋を出て
撮影のカフェまで向かう。
近いから車では行かずに歩きなんだけど
後ろに居る皆のペアの女の子達が色々言ってて
”歩きとかありえなくない?”
”うちらのことなんだと思ってんだよってね”
”近いからとか意味分かんないし”
”可愛い靴汚れちゃうじゃんね”
”はっきり言って疲れるわ”
”てか、バレたら大変じゃない?”
”それな、うちら芸能人なんだからさ~”
見事にペアの子一人一人が愚痴ってて
玲於が小声でそう呟く
玲於のその言葉に
他のメンバーもそう思ってたらしく
うんうん。って深く頷いて
皆聞いてないふりをしながら
気付けばカフェに来てて
中から
はい!もう大丈夫ですよ!
って声が聞こえて
サラさん。って人の隣であなたちゃんが笑ってて
俺も話そ!
って思って行こうとすると
腕を誰かに掴まれる
振り向いたらそこにはナオちゃんが居て
ナオちゃんが勝手に進めて
もう衣装の俺らはこの前とは違うカウンターに座る
カメラ「じゃあ撮っていきますねー」
目の前に居るあなたちゃんは
俯いてカップを綺麗にしてて
その顔は、今にも泣きそうで。
絶対勘違いしてる……というか
あれは勘違いしない方がおかしいか…
謝りたい。今すぐ。
違うよ。って誤解を解きたい
なのに出来なくて。
それがすごく悔しい
カメラ「隼くん大丈夫?」
カメラ「顔!元気ないよ!笑」
ナオちゃんが俺の肩を叩きながら
って、
あなたちゃんの前で
一番言ってほしくないことを言った
後ろにいたメンバーにも聞こえたのか
そんな声が聞こえる
違う。って言おうとしても
”被害を及ぼしたくないなら、”
って言葉が頭をよぎる
あなたちゃん。
って呼ぼうとしたら
って亜嵐くんの声。
後ろを向くと結構衣装にかかってて
衣装「あー…替えあるので!」
衣装「すみません…着替えれるところありますか?」
完全にタイミングを逃して
衣装「お願いします!」
そうやって二人が裏に入っていって
あぁそっか。
亜嵐くん、わざとか。
もう駄目じゃん。俺…
〈あなたside〉
私の前で、
一番聞きたくなかった言葉。
やっぱり、付き合ってたんだ…
前をふっと見ると俯いてる隼くん
その顔は苦しそうで
ねぇ、なんでそんな顔するの?
って聞きたいけど、私は聞ける立場じゃない
あぁもう無理だよ……
って思ってたら
亜嵐くんがコーヒーこぼして
着替える為に一緒に裏に行く
私達がエプロンに着替える為の所
カーテンの中に亜嵐くんを入れて
私は椅子に座る
カーテンの中から話してくる亜嵐
なんて嘘
って、見透かされてる声
その声を聞いたら涙が一気に溢れだして
”あなたちゃんのこと嫌いになんてならないから!”
って笑顔で言ってくれた隼くん
それだけで舞い上がってた私
涙が溢れて止まらなくて
ずっと泣いてたら
カーテンが開く
戻ろうとしたら
腕を引っ張られて暗い視界
なんで自分の気持ち押し込むの。
って言葉に
また涙が溢れて
好きだけど
ついさっき知ってしまったことは
すごく苦しくて、胸が張り裂けそうな事実。
そう言って離れる亜嵐
亜嵐の顔を見ると微笑んでて
落ち着いたら来なよ。
って頭に手を優しく置いて出ていった亜嵐
私はどうすればいいかも分からなくて
椅子に座ってまた少し泣いた
〈亜嵐side〉
隼…あの子と付き合ってるなんて
ほんとかよ…
もしかしたら嘘かもしれない。
って俺の予測で
あなたに、信じてあげて。って言った
お店の中に戻ると
そっかそっか。
って言ったサラさんって人は
多分察してて
待機する所に戻ると
そんな会話をして
気付けば俺の撮影も終わって
会社に戻る
楽屋に入ると
隼は皆からの質問攻め
皆に聞かれても黙ってる隼
メンバー皆、隼があなたのこと好きなのは
薄々気づいてて
話したと思ったら、
もう無理。って…
とか言ってきて
んなの、付き合ってる。って認めたみてぇじゃん
”最初から好きじゃない”
その言葉に何故かイラッっとして
あの時のあなたの涙。
隼が好きだからこそ流した涙なのに
今の隼は
そんなの関係ない。って言ってるみたいで
そう言い放って楽屋を出る
俺が貰う。って言ったのは
隼に危機感を持ってほしかったから言ったけど
普通に雰囲気悪くなったわ…
まぁでも
今の隼は自分を持ってねぇ。っつーか
流れに任せてフワフワしてる感じがして
俺はすげえ嫌だから
これでいいんだ。って廊下で深呼吸をした
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。