第14話

6,829
2024/02/23 13:33





















スタッフ「とにかく!着いてきて下さい!」








森本「あっ、はい」





『は、はい……』












今にも死にそうな顔で訴えてきたスタッフさんの勢いで、








私と慎ちゃんはエレベーターに乗った。













〘 1階へまいります。〙







その音声と一緒に、エレベーターは大きく揺れた。






沈黙の中、私は首を傾げながら考えた。









…… 急展開で良く理解出来ていないが、北斗くんは殴るような人では無いはず。









あったとしても何かしら重大な事があるかも。










……道枝くんと、どういう関係なんだろう。









そう考えていると















森本「……北斗が何で殴ったのか、経緯は分かりますか?」










しばらく黙っていると、慎ちゃんが口を開いた。









スタッフ「それが分からないんです。何か揉めているのなら分かるんですけど……」








『え、理由も無く?』







スタッフ「周りから見ると、そうなんです」










森本「…………」







『………?ますます分からない………』












壁に寄りかかりながら、足をジタバタさせたり





唸っていると









森本「ふはっ笑、鈍感にも程があるねぇ」








ドヤ顔で言うからに、何か分かった様子。









スタッフ「え、分かったんですか?」






『えマジ、教えて!』









森本「え、あ、スタッフさんは分かるけど、あなたちゃんまで分からんとは、」







『何それ、意味わかんないけど教えて!』









そう言って揺さぶっているのに中々答えてくれない慎ちゃん。










自分で気付いた方が後々良いしね、なんて言って教えてくれない。








後々知っても意味ないのに!














そうして3人で取っ組み合いをしていると















ガコガコガコッ!!













『ぉわっ、!』







森本「!?」







スタッフ「おわぁぁがぁぁぁ!?」









『うるさ』













エレベーターが急停止してしまった。











エレベーターの階を表示しているランプが消えていて、どうやら故障している様だ。









森本「マジかよ……」






スタッフ「いや今1番起こっちゃいけない奴」








『とりあえずこのボタン押してみよ!』










そう言って私は緊急呼び出しボタンを指さした。









森本「え、頭良い」






スタッフ「普通それ呼ぶでしょ」







森本「あマジ?」







『だったらどうやって乗りきんのよ』









森本「力づくで開ける!」













そう言ってる間に、私はボタンを押した。









カチ









ピピッ


















《はい〜!コールセンターです〜!何か問題が起こりましたか?》







『あの、エレベーター止まっちゃったんですけど、どうしたら良いですか?』






《かしこまりました〜!今すぐ修理を手配致しますので、2時間くらいお待ち下さい〜》










ピピッ









『え』








スタッフ「2時間て笑笑笑」






森本「そんなに手こずるものなの?!」










『分からんけどめちゃくちゃ暇じゃん』








スタッフ「えそれな??どうするんだ」







森本「とにかく、ちょっと北斗に電話してみる」







そう言うと慎ちゃんはポケットからスマホを取り出し、





素早い手つきで北斗くんに電話を掛けた。











ブーッブーッブーッ







森本「………出てこない、」






何度もかけ直したのに出てこない北斗くん。






私からかけるとスタッフさんにバレてしまうので私からは何も出来なかった。








スタッフ「誰か仲裁に入っていてくれ……」






森本「もうみっちーグチャグチャになってるかも笑!」






『そんな怖いこと言わないでよ!』












ピピッ





《皆さん大丈夫ですか〜??》






絶望していた中、明るい声がエレベーター内で響いた。










スタッフ「大丈夫も何もねぇよぉ!!!!」






森本「うわ、怖い」





『この人キャラなんか変わってね?』





スタッフ「怖いよぉ〜!!!!」








《安心して下さい〜!只今修理の者が到着致しましたのであと1時間くらいになりました〜》







スタッフ「それでも1時間かよ」





『こら』





森本「でも長いね」






『んね』










スタッフ「あ、そう言えばUNO持ってる」







森本「おーいそれ言えよぉ!」






『暇つぶしになるからやろー!』










なんやかんやあって、私達は仲が解けてUNOを始めた。









ここまで仲良くなれたのはスタッフさんのおかげかも?(











森本「UNOって言ってない(イケボ)」








スタッフ「うげ、キモ」






森本「お前は男だからときめかなくていーんだよ!」






『いやうちもときめかない』






森本「つら」












なんて言い合いをしながら時間が経つ。






どんどん座る体制がリラックスしてきて、



北斗くんの事を少し忘れかけてきたその時











ガタガタガタガタ








森本「?治った?」






スタッフ「えそんな感じする?」






『いや、しな』












ザバアァァァ












『いいいぃぃぃ!?』







スタッフ「うおぉぉぉぉぉおおぁぁ!!!」











何と天井の隙間から大量の水が降り掛かってきた。








全てがスローモーションに見えて、


スタッフさんの顔に勢いよく叩きつけられた水。






慎ちゃんは頭を守るも隙間から全身へと降り掛かる。








直ぐに降り掛かる量は止まり、よくあるSFの溺死みたいにはならずに済んだ。(












スタッフ「なぁんで水がぁ!!!???」






森本「何かあるある」






『いやある訳無い笑笑笑』






スタッフ「このエレベーターどうなってんだいよぉ!?」




何故水が降り掛かってきたのか考える隙も与えず



寒い、という感覚が全身を覆った。













『寒い寒い寒すぎる!!!!』








スタッフ「ヘブシッッッッ!!!!」







森本「くしゃみ独特、笑」













その上会社ではスーツが基本なので下着が透けて見えた。











『あーー!!!!目ぇ潰して!見ないで!』








森本「いや、もう遅い」






『は?』





スタッフ「お、俺はまだ見てない!!健全健全健全健全」








『降りたら2人とも覚悟しろ』






スタッフ「いや俺マジ関係ない!」








森本「てかそれより俺ら凍死するくね??」













そう。慎ちゃんの言う事が正論で、このままでは私たち全員死んでしまう。







体温が皆下がっている状態で、あと何分過ごすのだろう。






長時間だとかなり危険だし、もし助かっても体調を崩す可能性は高い。









そして、今日の最高気温は今年史上最悪の5°







マジツイてない。










《大丈夫ですか?聞こえますか?》





『聞こえるけど、大丈夫じゃないです!』






森本「今日俺命日かも」






《あと15分ですので、頑張ってくださーい!》









応援の言葉すらバカにしているようで、





私は少し遠ざかった。








森本「大丈夫?……耐えれる?」







『うん、大丈夫、』










腕を擦りながら寒さに耐えて、大きな鏡に頭をコテン、とする。








スタッフ「あーもう、俺、眠い」






森本「え?寝るなし!寝るなしお前!!!!」






『マジか』









スタッフさんは白目状態でいびきをかき始めた。






うるさいなんて思っている暇もなく、私もつられて意識が遠くなっていった。

















プリ小説オーディオドラマ