第2話

第二話 ゲームの中に入っちゃった!?
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2023/07/15 13:00
目を開けると、そこには見たこともない景色が広がっていた。
水川優
水川優
ここ、どこだよ…?
藤坂ひより
藤坂ひより
なに、この服?
神崎由奈
神崎由奈
え、夢?
周りには、急いで荷支度をする人たちがいた。
さっきまでいたはずの私の部屋とは違い、どうやらどこかの村らしい。
村人A
ほれ君ら、急がないと"奴ら"に見つかるぞ!
水川優
水川優
"奴ら"?誰、それ
すると、奥の方にいた、牛のような角が生えた人間ではない生き物がこっちの方に来た。
藤坂ひより
藤坂ひより
ひっ、なんか来る…!
??
おい貴様ら、見ない顔だな?ちゃんと名簿に載ってるのか?
水川優
水川優
名簿?何のですk
優を遮ったのはさっきのおじいさん。
村人A
す、すみません!!私の孫たちが大変失礼しました!
謎の生き物に土下座をし始めた。すると、生き物は満足したのか、「ふんっ、次回からは気をつけろ」と偉そうにおじいさんに命令した。
藤坂ひより
藤坂ひより
あ、ありがとうございます…!
ひよりがお礼を言ったのに、おじいさんはひよりを無視して、
村人A
早く村を出るぞ!!
と叫ぶ。
神崎由奈
神崎由奈
夢にしてはうるさいな……
水川優
水川優
夢じゃねえよ、ほら
そう言って優は私の頬をつねった。
いっっった!!
…てことは、夢じゃないの?
神崎由奈
神崎由奈
ちょっとは手加減してよ!
怒る私を見て笑う優。ひよりはそれどころじゃなさそう。
藤坂ひより
藤坂ひより
なに2人とも呑気に笑ってるの!まだよく分からないことはたくさんあるけど、とりま早くここを出よう!
私も優も、ひよりの意見に賛成してすぐにあそこを出た。
───あそこを出ると、私たちはあのおじいさんを質問攻めにした。
水川優
水川優
ここはどこなんですか?この服は?
神崎由奈
神崎由奈
あの謎の生き物は何なんですか?みんなは?
藤坂ひより
藤坂ひより
ちょっ、2人とも、おじいさんが困ってるよ…
ひよりに言われて見ると、おじいさんはすっかり困り果てていた。おじいさんの奥さんだと思われるおばあさんも、困っていた。
村人A
…えっと、ここはルスーニ村じゃよ。それと、…その服は、伝統の服じゃろ?なあ、ばあさん?
村人B
ええ、そうですよ、おじいさん。
あの生き物は、魔王の手下の魔物たちですよ。
みんなというのは…よく分かりませんがねえ。
神崎由奈
神崎由奈
ルスーニ村?…それどこ?ひより、知ってる?
ひよりは定期テスト学年一位。そんなひよりなら、なにか知っているかと思って聞いたが、ひよりは頭を横に振った。
水川優
水川優
日本じゃない…よな。しかも、魔王って…ゲームじゃあるまいし
藤坂ひより
藤坂ひより
ゲーム……
もしかして、あのゲームが関係してるんじゃない?
神崎由奈
神崎由奈
え、てことは、ひよりが言いたいのは…
ゲームの中に入っちゃったってこと!?
村人A
ゲエム?何じゃそりゃ?
水川優
水川優
ああ、こっちの話です
どうすればいいの!?ゲームの中に入ったって…意味分かんない!!
藤坂ひより
藤坂ひより
どうしよう…どうしたら元の世界に戻れるかな?
村人B
よく話はわからないがね、魔王を倒したら、その『元の世界』っていうのに帰れるんじゃないかねえ?
魔王を倒す……かあ。
村人A
だいたいそこのお兄ちゃん、勇者じゃないのかい?そんな立派な剣もって
え?あ、本当だ。優が勇者?あの泣き虫な?昔、夜遅くにやってたホラー映画を見てシクシク泣いてた、あの優が魔王を倒す?
神崎由奈
神崎由奈
あの優が勇者?はえー、意外
水川優
水川優
『あの』ってなんだよ、『あの』って
村人B
お嬢さんたちだって、魔法使いと弓使いじゃないの。きっとあなたたちなら魔王だって倒せるわよ
本当だ、ひよりは弓を持ってる。そういえば、ひよりは弓道部のエースだった。
…ということは、私が魔法使い。
藤坂ひより
藤坂ひより
てことは、魔法が使えるんですか?ここは
村人A
そうじゃよ。わしらも火をつけるくらいの簡単な魔法なら使えるが、魔法使いは高度な呪文まで使えるじゃろ?
おじいさんが私に期待の眼差しを向けてきた。
神崎由奈
神崎由奈
ゔっ………
水川優
水川優
由奈には無理だろ
神崎由奈
神崎由奈
出来るよ!失礼な!
…あ。
藤坂ひより
藤坂ひより
じゃあやってみてよ!
ひより💢
神崎由奈
神崎由奈
い、今は充電が足りないから無理!!
水川優
水川優
充電……?ふうん
あ、優、絶対信じてないな。まあ私がでまかせ言っただけなんだけど。
藤坂ひより
藤坂ひより
魔王はどこにいるんですか?
村人A
ここはルスーニの森じゃ。だから、…北の方じゃな
村人B
まあ、おじいさんたら適当な説明を。ここから西にいったらアルチアという町があるから、そこから南のマイラオという港町まで行くといいですよ
おじいさんとは違い、だいぶ丁寧な説明をしてくれたおばあさんにお礼を言うと、私たちは歩き出した。
神崎由奈
神崎由奈
ていうかさ、まだ状況が掴めてないんだけど、魔王を倒しに行くんだよね?
藤坂ひより
藤坂ひより
そうだね
水川優
水川優
人、足りなくない?
神崎由奈
神崎由奈
それな?
そう。私たち3人だと、全く勝てる気がしない。
藤坂ひより
藤坂ひより
仲間欲しいね〜
同志いないかな?
なんて話しながら進んでいると、魔物が出てきた。
魔物
おいお前ら!どこに行くんだよ!?
水川優
水川優
魔王のとこ
優がバカ正直に答えた。ひよりを見ると、ひよりも目尻を押さえていた。
魔物
お、おお……な、なら通すわけにはいかねえなあ!!
魔物でさえ驚いたみたい。さすが優。
水川優
水川優
こっちには仲間がいるんだ!一人のお前とは違う!
いやでもそれって、魔物が仲間を呼ぶパターンでは…
魔物
ふんっ、俺はそこらの奴とは一味違うんだ。
俺は分身が作れるんだよ!!
あ、違った。
魔物が叫んだと思うと、一瞬でたくさんの魔物の分身が現れた。
藤坂ひより
藤坂ひより
ああーあ
水川優
水川優
行くぞ、ひより、由奈!
神崎由奈
神崎由奈
うん!
藤坂ひより
藤坂ひより
はーい!
ひよりは実力を見せた。さすがは弓道部エースだ。それに比べて優は、ただアニメの勇者を必死に思い出して振るだけ。キレが無さすぎて驚く。
神崎由奈
神崎由奈
ちょっ、w優wwなにその振り!wwwめっちゃキレ無くて驚くわwww
水川優
水川優
うるっさいなー!お前だって、魔法使いのくせに魔法使えてないだろ!今なんの呪文があるんだよ!?
神崎由奈
神崎由奈
言うからね?えっとね……『梅雨の時のじめっとした湿気と、頭痛を起こすことができる、ズツーユ』。……今んとこ、これだけ
藤坂ひより
藤坂ひより
それいつ使うの?www
魔物
……ブッ、ガハハハハ、ズツーユ!?wwwwww
魔物が急に爆笑しだした。私は腹が立ったから、ズツーユを使ってやった。
神崎由奈
神崎由奈
ズツーユ!!
すると、魔物は更に笑いだした。
魔物
アッハハ、まったくなにも感じないわ!wwwwww
しかし、突然真顔に戻った。
藤坂ひより
藤坂ひより
な、なに急に……
そして、だるそうな顔を浮かべた魔物。よく見ると、額に汗が滲んでいる。
水川優
水川優
よ、よく分かんないけど、今がチャンスだ!
藤坂ひより
藤坂ひより
う、うん!
優とひよりは魔物をここぞとばかりに攻撃しだした。
魔物
グアアアッ、……魔法使い、お前なら魔王様だって倒せるさ………
そう言って魔物は力尽きた。
神崎由奈
神崎由奈
ふっ、当たり前でしょ
私がドヤると、優とひよりは呆れ気味。
水川優
水川優
はあ、由奈、お前……楽しそうだな
藤坂ひより
藤坂ひより
ほんと、羨ましい
神崎由奈
神崎由奈
でしょー?…って、新しい呪文をゲット!
水川優
水川優
お!まじか、どんなの?
藤坂ひより
藤坂ひより
今度は頼むよ?
神崎由奈
神崎由奈
もちろん、任せて!えーっと?…『足の小指を机の角にぶつけた時の痛みが起こる、コユカビド』?
藤坂ひより
藤坂ひより
うーん…まあ痛いけどね?分かるよ、気持ちは
水川優
水川優
うん、地味に痛いよな
そんな話ながら歩いていると、森に入った。
神崎由奈
神崎由奈
あれ、これどこ?
藤坂ひより
藤坂ひより
えーと、確かね、『アルチアの森』だったような
水川優
水川優
じゃあ、もうすぐアルチア?
藤坂ひより
藤坂ひより
そうじゃない?
??
おいおいお前ら、通行手帳はあるか?
水川優
水川優
通行手帳?
??
ああそうだ。ここを通るのは、通行手帳を持つ者のみ。もし無いなら、俺を倒してから通れ!
水川優
水川優
上等だ!ひより、行くぞ!
神崎由奈
神崎由奈
え、私は?
藤坂ひより
藤坂ひより
由奈は引っ込んでて!
神崎由奈
神崎由奈
ひどっ!
魔物
グフフ、仲間割れか?
神崎由奈
神崎由奈
は!?違うし!私のはとっておきなの、とっておき!
そして、魔物が息切れてきたとき。ひよりが言った。
藤坂ひより
藤坂ひより
由奈、新しい呪文の力見たいから、呪文唱えてよ
魔物は私が魔法使いだというのを知って驚いた。
ふふ、もっと驚け!
神崎由奈
神崎由奈
コユカビド!!
魔物は最初、頭に?を浮かべていたが、数秒後、
魔物
ギャアアア!!!
と絶叫した。その後も、ジンジンしたのかヒイヒイ言いながら優とひよりにボコボコにされていた。
魔物
魔法使い、お前……許さないからな…
そう言ってまたもや魔物は力尽きた。
水川優
水川優
由奈、お前不安だったけど、案外使えるじゃん
神崎由奈
神崎由奈
案外ってなに、案外って!!
藤坂ひより
藤坂ひより
まあまあ落ち着こう、2人とも。もうアルチアの森は出たから、アルチアじゃない?
ひよりの言う通り、もうアルチアに来ていた。
神崎由奈
神崎由奈
とりあえず、どっかの店入りたい
水川優
水川優
それな。あそことか良さげ
優が指差したのは酒場。「暴れん坊酒場」
藤坂ひより
藤坂ひより
『暴れん坊酒場』………かあ……
そうして私たちが入るのをためらっていると、後ろから大きな男の人が来た。
??
??
入らないのか?邪魔だから退いてくれ
神崎由奈
神崎由奈
す、すみません!
男の人は迷わずカウンター席に座ると、主人と話し始めた。
水川優
水川優
あれはかなりの常連だぞ…
と、優が呟く。その通りだ。「いつもの」と言うだけで飲み物が運ばれてきたのだから。
水川優
水川優
早く入るか
神崎由奈
神崎由奈
え、あ、うん
藤坂ひより
藤坂ひより
怖いの?由奈
神崎由奈
神崎由奈
ち、違う!
私はかわいいひよりがあの男の人に気に入られないか、怖いだけ!
酒場の主人
酒場の主人
いらっしゃーい!…あれ?お兄ちゃんら初めてだよね?
水川優
水川優
は、はい
酒場の主人
酒場の主人
おー、じゃあヒューゴ、付き合ってあげろ
??
??
はあ?何で俺が………
いいよ、俺はヒューゴ。よろしく
水川優
水川優
俺は優
藤坂ひより
藤坂ひより
ひよりです
神崎由奈
神崎由奈
由奈です!
ヒューゴ
ヒューゴ
ユウ、ヒヨリ、ユナ?よろしく
そう言ってヒューゴは微笑んだ。よく見ると、私たちと同い年くらいかもしれない。
神崎由奈
神崎由奈
ここの常連なんですか?
ヒューゴ
ヒューゴ
ん?ああ、もう7年目ぐらい
藤坂ひより
藤坂ひより
7年目…!何歳なんですか?
ヒューゴ
ヒューゴ
18だよ。君らは?13くらい?
…若く見えるってこと?それとも幼いってこと?
水川優
水川優
ヒューゴと同い年
ああそっか、優は6月生まれだから18なのか。私とひよりは早生まれだから17。
神崎由奈
神崎由奈
私とひよりは17
ヒューゴ
ヒューゴ
え!?うそ、同い年?若く見えるね
クールな印象のヒューゴが驚いているのは、驚きだ。
藤坂ひより
藤坂ひより
ヒューゴ…さんは、ここに住んでるの?
ひよりは人見知りだから初対面の人を呼び捨てできないんだよね
ヒューゴ
ヒューゴ
ああ、元々はレボマっていう、隣町にいたんだけど、親が仕事でここにいることが多くて。で、親が死んでからはここの親父に育ててもらったようなもんだよ
酒場の主人
酒場の主人
『ここの親父』なんてつれないこと言うなよ〜お前は俺のかわいい甥っ子だろ?『叔父さん』って呼べよ〜
ん??ということは、ヒューゴのご両親が亡くなって、ヒューゴは叔父さんである、ここの主人に育ててもらったんだ。
藤坂ひより
藤坂ひより
叔父さんなんですか?ヒューゴさんの
酒場の主人
酒場の主人
ああそうだよ、こいつの父親は俺の兄貴だ。兄貴も昔は『伝説の剣士』なんて崇められたんだよ。俺も『剣豪』なんて呼ばれて、こいつに剣を教えたのも俺だよ
ヒューゴ
ヒューゴ
『伝説の剣士』…そんな人が魔王に倒されるかな
私たちは空気が重くなって気まずくなり、料理を頼んだ。
水川優
水川優
おじさん、肉ください
酒場の主人
酒場の主人
あいよ
ヒューゴ
ヒューゴ
君らはどこから来たの?この町は初めてだよね
私たちは顔を見合わせた。ゲームの中に入ってしまったのだから、彼らは日本なんて国は知らないだろう。
神崎由奈
神崎由奈
えーっとね、日本って国の、桜町ってとこに住んでるんだ
私たちは桜町に住んでる。そういえば、梨奈とお母さんは心配してるかな。優とひよりのご両親だって必死だよね。特にひよりのお父さんがすごい探してそう。
ヒューゴ
ヒューゴ
ニホン?の、サクラマチ?聞いたことないなぁ
そりゃそうだよね、世界が違うんだもん。
ヒューゴ
ヒューゴ
3人はいつから友達なの?
神崎由奈
神崎由奈
私と優は幼馴染で、私とひよりは中学校で初めて会ったの
ヒューゴ
ヒューゴ
チュウ…ガッコウ?何それ、何するの?
ああ、ここでは中学校もないのか。
藤坂ひより
藤坂ひより
勉強するの。小学校、中学校までは義務なんだよ
ヒューゴ
ヒューゴ
へえ、サクラマチは変わったところだな
まあね。
ヒューゴ
ヒューゴ
そういえば、ニホン?って国の出身なんだろ?なんでこんな町に来たんだ?王都とか、行くとこはたくさんあるだろ?
魔王を倒しに来たって言ったら戦闘が始まるかな?まあいざとなったら私の呪文で倒してやる!
水川優
水川優
魔王を倒しに来たんだ、元の世界に戻るために
バカああ!私今、正直に言うか迷ったのに!
ヒューゴ
ヒューゴ
目的は一緒…か。でも、『元の世界』っていうのは?
藤坂ひより
藤坂ひより
…信じられないかもだけど、元の世界だとこの世界を『ゲーム』って呼ぶんだ。で、こっちに来ちゃったの、なぜか。で、この『ゲーム』をクリアしたら戻れるかなって
ヒューゴ
ヒューゴ
『ゲーム』。へえ、面白いな
驚くことに、ヒューゴの理解は早かった。完全に理解しているわけではなさそうだけど、それでも大半は理解しているだろう。
神崎由奈
神崎由奈
ヒューゴ、『目的は同じ』って言ったよね?なんで魔王を倒したいの?
ヒューゴ
ヒューゴ
…俺の母親は早くに死んで、父親が育ててくれたんだけど、魔王を倒しに行って帰ってこなかったんだよ。だから俺は仇を討ちに
この流れなら、いけるかも…!
神崎由奈
神崎由奈
ヒューゴ、仲間にならない!?
ヒューゴ
ヒューゴ
……は?
藤坂ひより
藤坂ひより
ちょ、由奈!?
水川優
水川優
おい由奈、勝手に決めんなy
ヒューゴ
ヒューゴ
いい…よ
神崎由奈
神崎由奈
いいの!?

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