第101話

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2023/06/13 03:00





「おはようございます!」


6人揃った撮影の日。バラバラと集まったメンバーへ挨拶をすると、強弱・タイミング、皆さんそれぞれに挨拶を返してくれた。

その中でも松村さんはすぐに私の前に現れた。ふふと微笑むその姿はとても整っていて、毎回新鮮に驚ける。

えっ、顔良すぎ。朝のコンディションとは思えない。


北斗「岡田さん、前髪跳ねてるよ」

「えっ…」


松村さんがご自身のおでこを指先でトントンと叩く。私はそれを見て、慌てて両手で前髪を押さえた。


「直りました?」

北斗「直りました。」


前もこんなやりとりしたなぁ、と振り返る。ずっと跳ねかしたままでいるところだったので、小さく両手を合わせ感謝を伝える。


樹「準備できた?いける?」

「はい、田中さんと森本さんから順番にお願いします!」

慎太郎「はーい!」


まずは二人組ずつのカットから。

全員衣装の方向性が良い。意表を突くスタイリングでもあり、彼らに絶対的に似合う形に落とし込んでいる。衣装さん、助かります!


北斗「楽しそう。」

「はい、とても楽しいです。天職です。」

北斗「それは、…そう言ってくれるのが1番嬉しい」

「?そうなんですか、?」

北斗「誰かが用意した居場所だって言ってた、岡田さんが、そう言ってくれると、」


松村さんが少しだけ言葉を詰まらせて、優しい眼差しが一瞬揺れた。


北斗「俺も嬉しい、本当に」


ああ、本当にこの人は、この人のことが、


「松村さん、」

北斗「ん?」


私が少し小さな声で呼びかけると、私に目線を合わせるように少し屈んで耳を寄せてくれた。
その姿勢に甘えさせていただき、私も耳打ちするように、片手を口元に添えて小声で応える。


「かっこいいです、誰よりも。」

北斗「えぇ?今日どうしたの?」

「別に、いつも通りですよ。」

北斗「そお?絶対そんなこと言わないじゃない。」


松村さんは驚いたように仰け反って、わざとらしく手を顎の下に持っていき、うーんと唸った。


「はい。今までずっと思ってました。うちの松村はかっこいいんだぞって、6人全員魅力的だぞって。」

北斗「岡田さん、、。」

「今まで松村さんにも、皆さんにも、ちゃんと伝えられなくて。だからきちんと伝えたくて、と思いまして。はい。」


ハッキリ伝えるために口にしたものの、恥ずかしさで溶けてしまいそう。もう赤くなっててもいいから、全部彼に届いてしまえばいいのに。そんなことまで考えていた。

のに。


北斗「伝わってたよ。」

「え?」

北斗「なんで?言葉だけじゃないよ、そういうことは。」


それは心からの言葉。真っ直ぐ私の心に刺さる。

ねえ、泣いてしまいそう。


「…。そうなんですか。そうですか、」

北斗「そうです、そうです。」

「それなら、よかったです。」


このことは私にとって、とっておきの出来事となった。

この先何があっても、私はきっとずっと忘れない。忘れたくなかった。



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