却説、私もそろそろ資料室から出ようかな。
そんな考えが頭に過った時、
私の携帯端末に一つの通知が届いた。
何かと思って端末の画面を見てみると、
メールが届いているのが判った。
そのメールの送り主は……
メールの内容は
「もう一度会いたい」という類いのものだった。
私はそのメールを見つめたまま立ち尽くしていた。
乱歩さんへの想いは捨てると決意した。
だからもう彼には会わないと思っていた。
だけれど、彼からのお誘いに
私の心がゆらゆらと揺らめく。
もう、これが最後。
だから、あと一度だけ……
一度だけ、彼に会いたい。
そうしたら、きっと終われる。
ちゃんと、ケジメをつけられる。
だから____
私は乱歩さんのメールに、
返信のメールを打ち込んだ。
本当は「また会えると考えるだけで嬉しい」だとか、「私も会いたかった」という文字を打ちたかった。
だけれど、それだと自分の気持ちを押さえられなくなりそうだと思い、「OK」とただ一言だけ返信した。
中原幹部に「外を散歩してきます」と
置き手紙を置いておこうと思い、
幹部の執務室へ向かっていたとき
丁度向こうから歩いてくる幹部と会った。
中原幹部の歯切れの悪い反応に少し気になったけど、幹部の優しさに感謝することにした。
私は、幹部にそう告げて
廊下を歩き進んだ。
“乱歩さんにもう一度会える。”
その事を考えただけで
私の私の足が少し軽くなったような気がした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。