第12話

No.12 捨てられない想い
1,085
2024/01/02 07:00



却説さて、私もそろそろ資料室から出ようかな。

そんな考えが頭に過った時、
私の携帯端末に一つの通知が届いた。


何かと思って端末の画面を見てみると、
メールが届いているのが判った。

そのメールの送り主は……
あなた
乱歩さん…


メールの内容は
「もう一度会いたい」という類いのものだった。
あなた
……
私はそのメールを見つめたまま立ち尽くしていた。




乱歩さんへの想いは捨てると決意した。

だからもう彼には会わないと思っていた。


だけれど、彼からのお誘いに
私の心がゆらゆらと揺らめく。



もう、これが最後。

だから、あと一度だけ……
一度だけ、彼に会いたい。

そうしたら、きっと終われる。
ちゃんと、ケジメをつけられる。



だから____


私は乱歩さんのメールに、
返信のメールを打ち込んだ。


本当は「また会えると考えるだけで嬉しい」だとか、「私も会いたかった」という文字を打ちたかった。





だけれど、それだと自分の気持ちを押さえられなくなりそうだと思い、「OK」とただ一言だけ返信した。





中原幹部に「外を散歩してきます」と
置き手紙を置いておこうと思い、

幹部の執務室へ向かっていたとき
丁度向こうから歩いてくる幹部と会った。

中原幹部
あなたか。ンな慌ててどうしたンだ?
あなた
ち、一寸ちょっと外の空気を吸いたくて…
外出許可をもらえますか?
中原幹部
……
あなた
あの、幹部…?
中原幹部
……あ、すまねェ。
中原幹部
少し考え事しちまった。


中原幹部
その…無事帰ってこいよ。
あなた
わ、判りました。


中原幹部の歯切れの悪い反応に少し気になったけど、幹部の優しさに感謝することにした。
 
中原幹部
またな、あなた。
あなた
はい。行ってきます。

私は、幹部にそう告げて
廊下を歩き進んだ。


“乱歩さんにもう一度会える。”


その事を考えただけで
私の私の足が少し軽くなったような気がした。

プリ小説オーディオドラマ