第11話

ココロオドル。
24
2024/03/27 11:59
ボクはハラを抑えながらトイレから出る。
ハハはどこかに電話をしていて、ボクがトイレから出てきたことに気づいていない。
今がチャンスだ…。
そう思ったボクは、カバンといつもは持たない貯金をもって家を出る。
冷たい空気がボクのハラに溜まっていく。
そのたびに出てきそうになるモノをグっと抑え、ボクはひたすらハシル。
ヒュっ……。
コキュウを整えるために必死にクウキを吸う。
吸って…

吸って…

吸って…

クルシクなるくらい。
スッテ…。
吸った空気を吐いてしまったら、ホントウにハいてしまう気がして、怖くて。
ただ。
吸う。
クウキを吸いすぎて、頭がイタイ。
それとも、ボクがクルッてるからイタイのか?
わからない

分からない

ワカラナイ
ナナ
おい!
!!
ボクは、ふりかえる。
ナナ
………。
ナナは何も言わず、ボクの横を通り過ぎていく。
………ハッ。
ボクは息を吐く。
吸って吐いてを繰り返す。
………なんで。急に。
ボクのツクエにはいつも通り落書きがされていて、カナとアカリがボクをあざ笑う。
ナントナク…。
このセイカツには慣れた。
だって、コイツラが…どんなやつだか、ボクはもう、知っているから。
そのまま、休み時間が始まるチャイムが鳴る。
おい。
ボクは廊下を通り抜け、カナに声をかける。
かな
………。
カナはボクに気づいていた。
だが、知らないフリをして去ろうとする。
そうはさせない。
お前さ、分かってんだろ?
ボクはハキハキと喋る。
ソラのこと。
かな
………
カナは逃げようとする。
 
だが、ボクはそれを追いかける。
いや、わかったフリをしてんだろ?
かな
…ッッ!
カナは涙目でボクの方を振り返る。
話がしたい。
ダレモいない教室を知ってるんだ。
そこで話そう。
かな
…………
カナは周りをキョロキョロと見渡したあと、コクリと小さく頷く。
引っかかった。
ボクは笑みがこぼれないよう、必死に顔を作る。
かな
ねぇ。
かな
なんで…あんたが…その
かな
わたしが…。
なに?
もっとハキハキ喋ってくんない?
かな
そんなこと。
かな
……わかってるよ。
かな
…………
カナの手はフルエテいる。
カナの手がフルエレばフルエルほど、ボクのココロは高揚する。
この感覚をボクは知っている。
昨日…ナナを押し倒したトキの感覚とよく似ている。
でも、ナナを押し倒したトキよりも明らかに、ボクは興奮している。
ココロオドル。
かな
ワタシは…
かな
その。
かな
ソラの…。
かな
だから…。
なに?
さっき注意されたばかりだろ?
ハキハキ喋れよ。
かな
そんなこと…はじめから分かってるよ…。
ああ。駄目だ…。

ココロのコエが勝手に漏れていく。
じゃあ、なんでハキハキ喋んないんだよ。
かな
………
カナは唇を強く噛みしめる。
かな
あんたなんかに…。
かな
何がわかるの!?
カナの目から涙目が一筋こぼれ落ちる。
その顔を見ると、ヤッパリ…。
ココロオドル。

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