あなた「理事長の狙いは松村と京本ですよね?」
八掛の言葉に、彼女の表情筋がぴくりと僅かに動いた。
理事長「…狙い?」
あなた「この言葉が合ってるかわからないけど、贔屓にしてる彼らの同好会予算を増やしてあげたい。
でも理事長とはいえ、大きな動きをするとさすがに…だから彼らが分かりそうな謎解きの内容を企画して、学友会に指示した。
『謎そのものに接触する』は、ここで理事長に声をかける、が正解のトリガー。
それに、ミスターの北斗、そして私とのデートを景品にしたら、みんな庇って参加すると思ったとか?…それは考えすぎかな。」
理事長「…なるほど?」
あなた「あれ?大体、合ってますか?」
理事長「あっぱれね!」
もう何も隠すものはないと言ったように、彼女は帽子や伊達メガネを取った。
それそれは満足そうな微笑みを浮かべ、言葉を続ける。
理事長「彼らと関わり合いになりたいわけじゃない。
でもこんなに胸をときめかせる対象久しぶりで、つい個人的感情が動いちゃったわ。」
あなた「大学のトップすらも魅了するなんて…。私もさすがに驚きましたよ。」
理事長「魅力的よねぇ!あっところで、私からあなたに聞いてもいいかしら」
あなた「ええ、どうぞ?」
理事長「どうしてお友達たちも出し抜いてまで、一人勝ちしたかったのかしら?」
理事長の問いを受けて八掛は吹き出した。
先ほどまでの自信に満ちた微笑みや、余裕な微笑みとは違う。
どこか困ったように片眉を下げ、照れ笑いを浮かべている。
あなた「うーん。
…ミスターが私以外の人とデートするとか、私、許せないんですよねえ」
理事長「あら。」
あなた「内緒ですよ。」
二人、人差し指を立てて微笑み合った。
階段下の壁向こうの六人は出るに出れず、座り込み小声で囁きあっていた。
ジェシー「あなた健気〜!」
樹「俺が一人勝ちしてあなたとデートすれば良かったじゃん」
慎太郎「まああなたが知らない男とデートされなくて良かったわ」
髙地「てか俺ら惜しかったよね」
京本「ほんとだよ途中まで合ってたもん」
北斗「…。」
五人(北斗うれしそ〜だなwwwww)
そして、謎解きゲームの終了を告げる学内放送が流れた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。