いつも,花瑠も花梨も言葉を覚えるようになった頃から南のことを''ママ''と呼ぶ。
でも1人……
最近,夏都は南のことを''ママ''と呼ばなくなった。
あんなにママっ子で毎日のように ママ と呼んでいた夏都。
南はそれが最近の悩みだった。
実は夏都もバレエを習っている花瑠と同じように,水泳、ダンスと毎日習い事で大忙し。
紗夏のお言葉に甘えて,花瑠、花梨を預けることにした。
久しぶりに二人の時間を作ることに。
リクエストに応え、お好み焼き屋さんへ。
ここのお好み焼き屋はメンバーと別れて日本に帰る時に立ち寄った思い出のお店。
あの時はミルクを飲んでいた夏都がお好み焼きを口にした。
ほっぺをいっぱい膨らませてお好み焼きを冷ます夏都。
大きな瞳を南に向けて口に入れた。
息子が沢山食べてくれるだけで何より。
夏都は食べる南をじーっと見つめた
''おかあさん''
夏都からは初めて出た言葉だった。
ずっと悩んでたことがいざ目の前になり,思わず夏都に問いかける
すると食べようとしていたお好み焼きをお皿に戻し,顔を俯けた。
「えー!なつくんママって呼んでるのー!?」
「かっこわるーい。女の子みたい」
「僕はお母さんって言ってるのになー!」
「なつくん赤ちゃんみたいや!」
話を聞けば,友達にからかわれたのがすごく恥ずかしかったから。
夏都は傷ついていた。
気づけばお好み焼きを食べていた時の,笑顔の夏都は消えていた。
実は,言葉を発するのが3人の中でいちばん遅かった夏都。
そんな夏都が1番最初に発した言葉が''ママ''だった。
自分を持つこと。
今までずっと我慢していた気持ちがようやく吹っ切れた様だった。
悩みが打ち解けた夏都は大好きなお好み焼きをおなかいっぱい食べた。
名井家で夏都は真ん中。
真ん中は放って置かれがちで1番向き合う機会が少ないかもしれない。
子供一人一人と向き合うことの大切さを南は強く感じた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。