あなたと紗矢はマンションへ戻ってきて、紗矢の部屋へ。
中に入ってダイニングのイスへ座ると、紗矢がレモンティーを持ってきてくれた。
紗矢もイスに座った。
あなたはもらったレモンティーを一口飲んで、ふぅと息を吐いた。
だいぶ落ち着いてきた。
紗矢はタイミングを見計らっていたのか、あなたがコップを置くのを見て切り出した。
りょうの本名は相模涼(さがみりょう)。
あなたの隣に住んでいた、いわゆる幼なじみで昔から仲が良かった。
家が隣同士だったから、もちろん小・中学校は同じで高校も同じところに通っていた。
登下校はほとんど一緒だった。
ところが高校2年生の夏、涼は学校に来なくなり、後に転校した。
あなたは涼が学校に来なくなった頃から病気で入院していたという。
優しく微笑みながら話していた紗矢が、急に悲痛な表情になった。
紗矢はごめんと言いながら、悲しそうに笑った。
あなたはこれからどうするかを考えていた。
紗矢の話を聞いて、思い出したわけじゃない。
過去を知っただけだった。
まだまだ分からないことばかりだ。
その時、実家にアルバムを見に行こうと考えていたことを思い出した。
あなたは玄関で靴を履き終えると、くるりと紗矢の方へ振り返った。
あなたがにこっと笑うと、紗矢も笑ってあなたを抱きしめた。
あなたは紗矢の部屋を出て、最寄駅へと歩き出した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!