第11話

りょう(2)
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2017/11/04 07:11
あなたと紗矢はマンションへ戻ってきて、紗矢の部屋へ。
中に入ってダイニングのイスへ座ると、紗矢がレモンティーを持ってきてくれた。
あなた

ありがとう。

紗矢
いえいえ。
紗矢もイスに座った。
あなたはもらったレモンティーを一口飲んで、ふぅと息を吐いた。
だいぶ落ち着いてきた。
紗矢はタイミングを見計らっていたのか、あなたがコップを置くのを見て切り出した。
紗矢
説明しても大丈夫?
あなた

うん。

紗矢
それじゃあ、説明するね。
どこから話そうか。
りょうの本名は相模涼(さがみりょう)。
あなたの隣に住んでいた、いわゆる幼なじみで昔から仲が良かった。
家が隣同士だったから、もちろん小・中学校は同じで高校も同じところに通っていた。
登下校はほとんど一緒だった。
ところが高校2年生の夏、涼は学校に来なくなり、後に転校した。
あなたは涼が学校に来なくなった頃から病気で入院していたという。
紗矢
すごく仲よかったから、みんな付き合ってるのかってからかい気味に聞いていたけど、2人とも顔真っ赤にして違うって言ってた。
私は、付き合ってなくてもお互いに好きなんだろうなと思ってたけどね。
優しく微笑みながら話していた紗矢が、急に悲痛な表情になった。
紗矢
所詮夢の話だと思ってたから、りょうが相模涼のことだって分からなかった。
今日の弟くん見て、気がついたよ。
あなた

…涼が、その後どうなったかは知らない?

紗矢はごめんと言いながら、悲しそうに笑った。
紗矢
学校に来なくなったと思ったら、何の説明もなく転校したとだけ伝えられて。
どこに行ったとかは全然わからない。
あなた

そっか。
ありがとう。

紗矢
ううん、これだけしか分からなくてごめんね。
あなた

充分だよ。
本当にありがとう。

あなたはこれからどうするかを考えていた。
紗矢の話を聞いて、思い出したわけじゃない。
過去を知っただけだった。
まだまだ分からないことばかりだ。
その時、実家にアルバムを見に行こうと考えていたことを思い出した。
あなた

…アルバムを見たら、何か思い出すかな。

紗矢
見てみる価値はあるかもね。
あなた

…うん。
一度実家に帰るよ。

紗矢
1人で大丈夫?
あなた

うん。


あなたは玄関で靴を履き終えると、くるりと紗矢の方へ振り返った。
あなた

紗矢、ありがとね。

あなたがにこっと笑うと、紗矢も笑ってあなたを抱きしめた。
紗矢
気をつけてね。
あなた

行ってきます。

あなたは紗矢の部屋を出て、最寄駅へと歩き出した。

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