マンションから愛知県にある実家までは電車で3時間ほどかかる。
あなたは電車に揺られながら、涼のことを考えていた。
実家に着いた頃には、すでに日が沈んでいた。
あなたはドアを開けて中に入った。
すると、音で気づいたのかリビングから母が出てきた。
母はリビングに戻り、あなたは2階の自分の部屋へ。
部屋の中は引っ越す前と変わっていなかった。
母がこまめに掃除をしておいてくれたのか、ほこりがたまっていることもない。
アルバムは本棚の一番下にしまってあった。
一冊出して、開いてみる。
一番最初に目に入ったのは、オムライスを食べている写真だった。
まだ3歳くらいのあなたの隣には、同じくらいの歳の男の子が写っている。
そうだ。
あなたの母はよくオムライスを作ってくれた。
涼の両親は共働きで、よくあなたの家に預けられていたので、母のオムライスを一緒に食べていた。
涼と一緒にオムライスを作ったこともあった。
さらに見ていくと小学校の入学式や、運動会、遠足など行事の写真から日常的な写真までたくさんあった。
写真の多くは涼と写っているものだった。
徐々に記憶がよみがえる。
アルバムの上にぱたぱたと雫が落ちる。
アルバムをさらにめくっていく。
写真の中の涼は夢の中のりょうと全く同じだった。
アルバムの最後のページの写真は、高校2年生の体育祭でやるはずだった応援団の写真だった。
高校の体育祭は9月に行われる。
写真はその準備の時のものだろうから、夏休み中に撮ったもののはずだ。
紗矢の話とつじつまが合う。
声をかけられ振り向くと、部屋の入り口に母が立っていた。
母は驚きもせず優しく微笑んでいる。
その様子にあなたが驚いた。
母は部屋に入り、あなたの前に座って話し始めた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。