第12話

記憶(1)
170
2017/11/04 10:24
マンションから愛知県にある実家までは電車で3時間ほどかかる。
あなたは電車に揺られながら、涼のことを考えていた。
あなた

(涼は実在する。仲が良かったって言ってたけど、どうして私は忘れているのだろう。…あの夢も少しは関係してるのかな。悠くんの態度も気になる。)



実家に着いた頃には、すでに日が沈んでいた。
あなたはドアを開けて中に入った。
すると、音で気づいたのかリビングから母が出てきた。
お母さん
あれ、あなたじゃない。
どうしたの?
あなた

ただいま。
ちょっと用事があって。
…アルバムって私の部屋にあるよね?

お母さん
アルバム?
そうじゃない?
ところで、ご飯食べた?
あなた

うん、電車の中で食べてきた。

お母さん
そう。
あとでりんご剥くから、降りてきてね。
あなた

わかった。

母はリビングに戻り、あなたは2階の自分の部屋へ。
部屋の中は引っ越す前と変わっていなかった。
母がこまめに掃除をしておいてくれたのか、ほこりがたまっていることもない。
アルバムは本棚の一番下にしまってあった。
一冊出して、開いてみる。
あなた

あ、オムライス。

一番最初に目に入ったのは、オムライスを食べている写真だった。
まだ3歳くらいのあなたの隣には、同じくらいの歳の男の子が写っている。
あなた

…涼だ。

そうだ。
あなたの母はよくオムライスを作ってくれた。
涼の両親は共働きで、よくあなたの家に預けられていたので、母のオムライスを一緒に食べていた。
涼と一緒にオムライスを作ったこともあった。
さらに見ていくと小学校の入学式や、運動会、遠足など行事の写真から日常的な写真までたくさんあった。
写真の多くは涼と写っているものだった。
あなた

思い出した…!

徐々に記憶がよみがえる。
アルバムの上にぱたぱたと雫が落ちる。
あなた

っ…涼!

アルバムをさらにめくっていく。
写真の中の涼は夢の中のりょうと全く同じだった。
アルバムの最後のページの写真は、高校2年生の体育祭でやるはずだった応援団の写真だった。
あなた

体育祭、そういえば参加してなかったなぁ。

高校の体育祭は9月に行われる。
写真はその準備の時のものだろうから、夏休み中に撮ったもののはずだ。
紗矢の話とつじつまが合う。
お母さん
なに泣いてるの?
声をかけられ振り向くと、部屋の入り口に母が立っていた。
お母さん
懐かしくなった?
あなた

ううん、違う。
思い出したの。

お母さん
…そう。
全部?
母は驚きもせず優しく微笑んでいる。
その様子にあなたが驚いた。
あなた

お母さん、知ってたの?

お母さん
当たり前でしょう。
あなたの母親よ?
あなたが忘れていただけ。
…全て話した方が良さそうね。
母は部屋に入り、あなたの前に座って話し始めた。

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