第3話

新学期の朝
224
2017/11/15 21:01
恋
ふぅ、ふぅ…
家から全速力で走ってきたから、運動神経バツグンのわたしでもさすがに息は切れる。
でも、千江との待ち合わせ場所まであと少し…!
恋
…あ!
や、やっと待ち合わせ場所の公園が見えた!
しかも、ベンチのそばには見慣れた人影がある。時間は…7時40分。待ち合わせ時間ギリギリだ。
公園の階段を駆け上がると、千江がこちらの方を振り向いてあいさつをした。
千江
千江
あ!恋ちゃん、おはよう。
恋
おはよ!千江!
サラサラに流れる金髪。それに合わせたかのような青い眼。まるで外国人のような顔立ちの千江は、その内面も美しく、とても優しい。
そう、千江は絵に描いたような「いい子」なのだ。…そんないい子と男勝りなわたしが親友って…何回考えてもおかしい。
でも、千江は、心から信頼できるとても大切な親友だ。わたしと千江がいくら天と地程の差があっても、それは変わらない……って思ってる。
恋
はあ…はあ…
千江
千江
れ、恋ちゃん大丈夫?
恋
うん、大丈夫ダイジョーブ…
ゼェゼェ息切れしてるわたしを気遣ってくれる千江。
千江
千江
…でも、恋ちゃんにしては珍しいよね?息切れするなんて
恋
うーん、家からダッシュで走ってきたからね…はぁ…………、よっし、行こ!
息切れが直ると、わたしは千江に声をかけた。
そのまま二人でさっきわたしが上ってきた階段を降り、肩を並べて学校へ向かう。
千江
千江
今年こそ、同じクラスになりたいよね
恋
うんうん!去年も一昨年も外れたもんね
千江
千江
私なんか、去年も一昨年も海と一緒だよ?1年は恋ちゃんがいたからいいとして、2年と3年は外れだったなぁ
???
…はずれで悪かったな
後ろから、聞き覚えのある声だとはいえ、いきなり声がかかったから、わたしと千江は、
恋
わっ!
千江
千江
きゃあっ!
と、同時に悲鳴をあげてしまった。
そしてその声の主も、
???
どわっ!何だよ!いきなり悲鳴みたいな声出すなよ!
???
おいおい落ち着けよ海。いきなり話しかけられて、二人もびっくりしたんだろうし
悲鳴に似た声を出し、その時、別の落ち着いた男の子の声も聞こえてきた。
わたしと千江は二人でほぼ同時に振り向く。
千江
千江
…海
恋
…明もいるじゃん
海
よっ!お二人さん
明
おはよう、相川、香豪
あー…新学期の朝からこいつらか…
えーっと、簡潔に紹介しますとですね、海は千江の幼馴染。小学生ながら大人並み…いや、それ以上の頭脳の天才。ほら、たまーにいる天才児それが海なんだ。優等生なのに性格はチャラいし、おまけにヒョロヒョロのガリガリだし、なぜか女子に人気あるし。まあ、よくわかんない男子と言っときますか。
明はその仲良し。体つきもしっかりしてて、性格までしっかりしてる…でもちょっとドジなのがたまにキズなんだよねぇ。
海
おいおい何だよ。有名人かと思ったら有名人じゃないーってぐらいにどよ〜としてるぞお前ら
なんだその例えは
恋
いや、新学期の朝から早々にアンタ達と出会ってどよーんとしてんのよ
千江
千江
…うん
海
なんだよそれー!さっきもオレと同じだったから外れだとか言うしよー!お前らかなりひでーぞ
明
…海、そうとう嫌われてるなぁ…
恋
いやアンタもよ!
明
えっ!おれもぉ?!
千江
千江
いや、別に明くんはマシだと思うよ
海
だってよ、いいなあ、明は女子にモテモテで
明
…さっきの相川の言葉聞いてたのかよ海…
千江
千江
大丈夫だよ明くん、どこかの誰かに比べたら、明くんなんて18億9826万7052倍マシなんだから
明
…そ、そうか?
海
おい千江!なんだよその微妙な数字は!
恋
…千江がそんな事言うなんて…めずらし
千江
千江
そうかな?
恋
うん
海
いやいやこいつケッコーオレの前だと毒づくぜ
千江
千江
あなたもでしょ!
他の女子の前では爽やか男子ぶって!
明
はいはい、お二人さん、とりあえず話は学校へ行ってからね
少し先にいる明が手を振る。どうやらわたし達は立ち止まって話をしてたらしい。
恋
あ、はいはーい
千江
千江
行こか、恋ちゃん誰かさんはほっといて
海
誰かさんって誰だよ!
千江
千江
あなた以外に誰がいるの?
海
テメー許さん!
明
はいはい、女子に暴言吐かないようにね
と、明は海を羽交い締めにする。
海
おい!話せよっ!
恋
まあまあ、行きましょ行きましょ
海
うー…ガゥ…
おいおい、あんたはライオンか猛獣か。
でも少し落ち着いたらしく、明が羽交い締めをといても、暴れようとしなかった(だから明は猛獣かライオンかよ!)
あー、にしてもこの朝の場面で一体何文字と何行使った?
ほんと、無駄な事を見せてすいません。
まあ、上の記述の通り、無駄な場面で規定文字数かなり使ってしまったから、行くまでの通話まいてまいて…っ
…とその前に
少しだけ、わたし達が住んでいる街、九織ヶ丘(くおりがおか)を紹介しましょう。
この街は、山を切り崩して、海に面したちょっと大型の街。住宅地は高い場所に面していて、津波の心配はないし、下の方の、ビルが立ち並ぶ街(わたし達はシティと呼んでます)には、とても高いビルがたくさんあって、そこに避難できる。
一見都会街に見えるけど、千江の屋敷の裏には大きな山がある。低学年の時は、そこでよく遊んだっけ。
しかもシティの大型のショッピングモールはバスで10分の距離だから、放課後からも遊びに行けて、超便利なんだよね。
学校は小学校・中学・高校まであるんだ。
まあ、住むには最適の街ってわけ。
わたしが通っている九織小学校は、北校舎は超モダンな今風の木造校舎!数年前に建て替えられたんだって。
でもね…
1番の問題が南校舎。
なぜかというとね…それは
……続きの文を読んでください。
恋
や、やったぁぁぁぁあッ!!千江!同じクラスだよーーーッ!!
千江
千江
ほんと!?ほんとに!?
珍しく千江がコーフンした声を上げ、昇降口の靴箱に貼られたクラス表を見る。
千江
千江
ほんとだぁ!
恋
うん!あと、理子に、亜依菜に、結花に、好実に、弥生に、ことりに、神月に、陽也莉に…
千江
千江
えっ!めっちゃ仲良い子がいる!
恋
うん!今年は当たりだよねっ!
千江
千江
うん!
パチン!
二人でハイタッチを交わす。
海
おい、オレ達も恋達と同じだぞ
明
うわ、ほんとだ
まあでも、海と一緒だからいいや
海
オレも!1年間よろしくな!
明
よろしく!
と、男二人組も、わたし達と同じ動作をする。
恋
えーっと、わたし達は…
千江
千江
1組だよ。4年1組
恋
あ、ここだ
千江
千江
私と恋ちゃん、少し出席番号離れてるね…
恋
まあ、同じクラスになれただけでいいっしょ
海
おい千江、ちょっといいか?
わたし達が楽しくはなしていると、海が首を突っ込んできた。
千江
千江
ん?なぁに?海
海
そのさ…
お?お、お、お、おぉ?
この雰囲気、ま、まさか……!
海
…今年って、南校舎なんだよな?
ガックウゥゥゥゥ…
恋
そ、そんなわかりきったこと聞くなあぁぁっ!
思わず叫んでしまう
だあぁぁぁあ…っ
ほんとがっかりだあ…
なんでこいつは恋愛に疎いんだよぉ…
海
あ?なんだよ恋
千江
千江
いきなりどうしたの?恋ちゃん?
恋
いや…もういい、もういいわ…
ガクーンと肩を落としつつ、靴を脱いで、真新しい上靴に履き替える。
海
で、さっきの話の続きだけどさ…
千江
千江
うん
海
南校舎ってさ…超ボロいだろ?
千江
千江
そうだね
海
オレ、嫌だわー、あんなとこで授業受けるの
…あぁ、そうだった…
千江と同じクラスになって浮かれてて、すっかり忘れていたよ…
うちの学校の南校舎…




ギシッギシッ…ミシッ……
うわー…
噂に聞くまでのボロさ。階段を登るたびにミシミシ床がきしむ。明るい日差しが階段の上につけられる窓から差し込み、足取りを更に重くさせる。
そう、うちの学校の南校舎は木造校舎なのは北校舎と変わりないんだけど、この数十年、一回も建て替えられたことのないオンボロ校舎。なぜか、ここだけ建て替えられてないんだよねえ…
明
…知ってる?
階段を登りきったところで、明が急に立ち止まった。
明
この南校舎、ボロいだけあって幽霊とか見たーって噂が多いんだって。
え?ウソッ、まじ?な、なんでそんな大切なことを先に言わないのよ!い、いきなりこの南校舎が怖くなってきた。
きゃーーーーーーーーっ!
……と、驚かせてすいません。わたし、そういう類のことはまーったく、信じておりません。まあ、いたらいいなぁぐらいは思ってるけど…
恋
ふーん、そぅ
千江
千江
へぇ
わたし達ふたり、ほぼノーリアクション
海
おいおい恋、千江!なんだよその反応は!
明
薄い…薄すぎる…
海
やっぱ女には、男のロマンってもんがわかんねーんだな
明
この気持ちがわかるのは、同じ男だけだ!
海
なーっ!
訳もわからず、肩を組むふたり(男のロマンとはよくわかんないんで、ノーコメで)
4年1組の教室に入ると、さっそく数人の女の子達が駆け寄ってきた。
理子
理子
おはよーっ!恋!千江!
真っ先にわたしに抱きついてきた女の子は南寺理子。わたし達の友達だ。
恋
…お、おはよ…理子…とりあえず、話して…
理子
理子
あぁ、ごめんごめん、苦しかった?
千江
千江
うん…
とりあえず、新しい机にランドセルを置き、みんなの輪に入っていろいろ、春休みの出来事を言っていると、休憩時間終了のチャイムが鳴った。
亜衣菜
亜衣菜
よかったー、恋ちゃんが隣の席で
恋
うん、わたしも友達が隣でよかったー
席についても、わたしは、今年隣の席になった小川亜衣菜と喋っていた。
海
オレも後ろだぞ
…といってきた海は完全に無視して…
しばらくすると、教室のドアがあいかわらずミシミシときしみ音を出し、誰かが入ってきた。
30代前半ぐらいの女の、優しそうな先生だ。
白河先生
みなさんおはようございます。私は、今年4年1組の担任となった白河です。よろしくね
先生がそういうと、みんながパチパチと拍手をした。とうぜん、わたしもだけど。
白河先生
は、拍手だなんて…私、あがり症だから、ただでさえ緊張してるのに…
先生が冗談めかした口調で、顔を抑えてそういうと、クラス中がどっと湧いた。
優しそうなだけでなく、面白い先生だなぁ
白河先生
…はい、それと、集会でも紹介して貰うんだけど、先にみんなには、言っておくね…、それじゃあ、みなさんに転校生を紹介します!
おおーっ!
クラス中から歓声が上がった。
やった!わたし、転校生を迎えるの、初めてなんだよね。心臓が高鳴り始める。
白河先生
…それじゃあ、虎谷君、入って。
先生がそう言ったのを合図に…ひとりの、男の子が教室に入ってきた。クラスのざわめきが更に高まる。
なぜなら、その子はとても美少年だった。涼しげな表情に、切れ長の目はとてもかっこいい。
亜衣菜
亜衣菜
うわぁ、かっこいい…ねえ、恋ちゃん
亜衣菜が、こちらをふりむき、素直な感想を口にした…でも、
亜衣菜
亜衣菜
…恋ちゃん?
亜衣菜の問いに、わたしは答えなかった。そして、わたしの表情を見て、少し顔を強ばらせる。なぜなら…
恋
…え?
わたしの顔が青ざめて、凍り付いていたから

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