第8話

8。(莉犬くん登場回)
894
2022/09/12 05:45
ジェル
ジェル
……
特に話もせず、ぼーっと歩く。
 





話をしなくても焦らないのは気が合う証拠だろう。



それにしても暇だ。








いや、もう日も落ちたけど。
さとみ
さとみ
あ、、ぁ…


突然さとちゃんに袖を握られる。
 


ぱっとさとちゃんを見ると顔を真っ青にして座り込んでいた。




まるで何かに怯えているような…
ジェル
ジェル
さとちゃん?
しゃがんでさとちゃんの肩をトントンと叩く。






びくっと肩を震わせたさとちゃんは涙目だ。
その視線は一点を見つめている。
ジェル
ジェル
どしたん?
ジェル
ジェル
怖いものでも見たんか?
さとみ
さとみ
グスッ…あ、れ…
さとちゃんが震える手で指さした先には
ジェル
ジェル
え…
真っ赤な血と赤い物が転がっていた。
何となく近づく。





と、さとちゃんに引っ張られる。
さとみ
さとみ
いや、ッ…行かないで…ぇ…
震えながら泣くその姿は子猫のようで、思わず撫でてしまう。
ジェル
ジェル
大丈夫やから。大丈夫。な?
さとみ
さとみ
グスッ…じ、じゃあ、ッおれも行く…っ
ジェル
ジェル
ええよ、すぐそこやし。


予想外の一言に内心驚きながらも、踏み出そうとする子猫に微笑んでしまう。

ふるふると震えながら首を横に振る。


さとみ
さとみ
じぇる、死ぬのやだ…ッ
さとみ
さとみ
もう、…っひとりにしないで…グスッ
袖をギュッと握りながら上目遣いで訴えるさとちゃん。






この世でこれに勝てるやつはおらんな。
ジェル
ジェル
大丈夫w死なへんってw
ジェル
ジェル
じゃ、一緒に行こか?
さとみ
さとみ
う…ん…コクコク


そっと近づく。
ジェル
ジェル
…人?
さとみ
さとみ
…そうみたい…



耳?
ジェル
ジェル
犬…?
さとみ
さとみ
血まみれ…
真っ赤な犬耳の男の子っぽいな…




試しに耳を引っ張ってみると、ピクピクっと耳が動いた。
ジェル
ジェル
…生きてるっぽいな
ななもり。
ななもり。
まぁ、死にかけっぽいね。
横から聞こえた聞き覚えのある声。





さとちゃんがびっくりして半泣きになる。
ジェル
ジェル
お、なーくん。
さとみ
さとみ
(((( ˙꒳​˙  ))))プルプルプルプルプルプルプル
ななもり。
ななもり。
待ってwさとみくん俺wなーくんw
さとみ
さとみ
なーく…
??
??
……い゛ッ…
 突然赤い人が呻き声をあげる。



声を出せるのか?
さとみ
さとみ
ひぁッ?!?!?!
ジェル
ジェル
ばか。静かにしてて。
さとみ
さとみ
うぇ…ごめんなさい…(泣)
ななもり。
ななもり。
さとみくんちょっとこっちおいでw
さとみ
さとみ
うぇぇ…なーくん…(泣)
ジェル
ジェル
とりあえずこいつをどうにかしないと…
ジェル
ジェル
君、生きてる?
頭をそっと撫でると声を発してくれる
??
??
っ…誰…敵…?
敵?


誰かに追われてるっぽいな
ジェル
ジェル
ううん、敵じゃないで。
ジェル
ジェル
こんな所でどうしたん?
??
??
敵…じゃ、ないのか…
??
??
ゴフッ…ゲホッゲホッ…
安心したらしい、

と、突然吐血し始める。
ジェル
ジェル
…とりあえず連れて帰るか…


救急車呼んだらやばそうだし。
??
??
お、願いだ…助けて…くれ…
ジェル
ジェル
言われなくても助けるやろ。
ジェル
ジェル
酷くなるから喋らんといてや。
??
??
あぁ…、ありがとう…



とは言ってもこんな血まみれの人を連れていく訳にも…
ななもり。
ななもり。
あ、ジェルくん!俺ワープできるよ?
ジェル
ジェル
へ?


え、ワープ?何その漫画みたいな能力。
ななもり。
ななもり。
よいしょっ!
え、ぇ?



ただ真っ白な世界に意識が飛んだ。
トンッ





ジェルくんのお家のリビングに着く。
ななもり。
ななもり。
ふぅ…
 ドサッと音はしたが、声が聞こえないので振り向いてみると、さとみくんとジェルくんがあの人を連れて倒れていた。
さとみ
さとみ
……くら、くらするッ…
頭を抑えながらゆっくり壁にもたれかかるさとみくん。



…俺ワープしただけだけど。
ジェル
ジェル
…………
ななもり。
ななもり。
うぇぇぇぇ?!




…元々猫人間だからなぁ…
 


何か魔力的なものがあるのかもしれない。
さとみ
さとみ
じぇる…じぇる…
ユサユサ
ジェル
ジェル
ん…
体を揺らすと、顔をしかめるジェルくん。
ななもり。
ななもり。
さとちゃん、ジェルくんごめんね?!
ななもり。
ななもり。
魔力的なのがあるのかも、、
さとみ
さとみ
う、だいじょぶ、、
ななもり。
ななもり。
そう、?
ごめんなさい…(´;ω;`)



2人?3人?に謝りながら水を取りに行った。
さとみ
さとみ
……ゲホッ…ゲホッ…
真っ白い世界に連れられて、着いた先は見覚えのある玄関だった。
 突然吐き気が襲ってきて、その場にしゃがみこむ。










周りを見ると、たぶんドヤ顔で立っている後ろ姿のなーくん。










横で倒れているジェル。
さとみ
さとみ
う、ッ
耐えきれず出たうめき声でなーくんが振り向き、
あわあわし始める。
ななもり。
ななもり。
うぇぇぇぇぇぇ?!
だいぶびっくりしたみたい。
それよりジェル。






やばくね?
ぼーっとする頭を起こしながら、ジェルに声をかける。
ジェル
ジェル
ん…
意識はあるみたい。
ななもり。
ななもり。
 さとちゃんジェルくんごめんね?!
漫画のように謝るなーくん。






高校生のくせに子供っぽくてかわいい。
ななもり。
ななもり。
魔力的なのがあるのかも、、
元捨て猫だからな……
さとみ
さとみ
う、だいじょぶ、、
ななもり。
ななもり。
そう、、?
半泣きで謝るなーくん。




水を差し出してくれる。
ジェル
ジェル
…それより、こいつを早く…
ななもり。
ななもり。
あ、ちょっと待ってとりあえず…



ななもり。
ななもり。
寝室までワープするね!
 
待ってバカか。
さとみ
さとみ
はッ、
また白い世界に飛ばされ、意識が飛んだ。
ななもり。
ななもり。
…………



やったわ。




バカじゃん俺。




さとちゃん気絶しちゃった………
ジェル
ジェル
っ…く…
ななもり。
ななもり。
……俺のバカ…
ジェル
ジェル
っ、さと、ちゃ、ッ
ジェルくんがさとちゃんのところにゆっくり行く。
ジェル
ジェル
なーく、こいつ、ッ
そう言って赤い血まみれの子を指さした。
ななもり。
ななもり。
うん、ごめんッ…
ジェル
ジェル
だいじょぶ、ッ…
ジェル
ジェル
早くッ…
ななもり。
ななもり。
うん、っ
俺は半泣きで返事をして、赤い子の手当をしに行った。
ジェル
ジェル
ん…っ、
さとちゃん…
さとちゃんの横に寝っ転がる。






さとみ
さとみ
う、っ
さとみ
さとみ
だめ、ッ
ジェル
ジェル
寝てるのかな?






嫌な夢でも見てるのかな?
さとみ
さとみ
…め、だめ…っ、
さとみ
さとみ
やだ、置い…な…で、





夢の中で何か嫌なことをされているのだろうか、








服をぎゅっと握って言う言葉には重みがあって。
さとみ
さとみ
ひとりにしないで…、ッ



ジェル
ジェル


特に強く、はっきり聞こえた。







さとちゃんの中で強く思っていることなのだろうか、、




無意識のうちにさとちゃんを抱きしめていた。
さとみ
さとみ
うぁ、ぁ…や、…め…ッ
ジェル
ジェル
ひとりじゃない、ッ…




言おうと思っても、言葉が出なくて。
さとみ
さとみ
だれ、ッ



夢の中でも誰かに抱きしめられたのだろう、










涙声で震えながら問いかけている。
さとみ
さとみ
うそだ、っ…し…ら……ッ




また言葉が朧気になっていく。




でも、声は涙声になっていき、手が震え始める。
さとみ
さとみ
…たすけ、っ
さとちゃんが助けを求めた。







絶望のそこにいるような、そんな声で
ジェル
ジェル
……ぁ、



そこで力はなくなり、静かに眠りに落ちた。
??
??
…んっ…
ななもり。
ななもり。



一通り手当てを終えて、点滴を繋いでぼーっとしていた時だった。
??
??
…ここは…?
ななもり。
ななもり。
あ、!



赤色の子が起き上がった。

思わず声が漏れる。
??
??
君は…?
ななもり。
ななもり。
俺はなn


うわ゛ぁぁぁぁぁッ!



さとちゃぁ?!?!?!?!?!
??
??
ビクッ
ななもり。
ななもり。
ビクッ


悲鳴…とジェルくんの声。
ななもり。
ななもり。
ごめん、少し待ってて。
??
??
…うん。
そのまま部屋を後にした。
ななもり。
ななもり。
さとみくん?!
慌てて2人がいた部屋に駆け込むと、さとみくんがジェルくんに抑え込まれていた。
さとみ
さとみ
う゛ッ、やだ、…俺は…!
ジェル
ジェル
さとみ、落ち着いて。

手を上で固定されている。




ジェルくんもいつもはさとちゃん呼びなのに、今はさとみ呼びになってる。


ただ事じゃなさそうだ。
さとみ
さとみ
なーくん、助けッ…
ななもり。
ななもり。
ジェル
ジェル
ジェル
ジェル
なーくんおったん?!
ジェル
ジェル
急にさとみが暴れ出したんや…
ななもり。
ななもり。
ぇ?


情けない声が漏れた。



あんなに優しくてちょっと控えめなさとみくんが?



さとみ
さとみ
っ、!
ジェル
ジェル
さとみ!


またさとみくんが暴れ出す。
??
??
あらら…ここ精神病院?
ななもり。
ななもり。
あの赤い子!
ななもり。
ななもり。
え、来ちゃダメだよ!
ジェル
ジェル
あの赤いやつ!
??
??
言い方…w


赤い子はくすっと笑うと、さとみくんの方を見始めた。
??
??
その桃色の子が暴れてんの?
今でもさとみくんは暴れている。



その時だった。







スルッ
ジェル
ジェル
…は、!


ジェルくんがさとみくんの手を離してしまった。
さとみ
さとみ
っ、!
ガタンッ



さとみくんがドアの方にダッシュする。
??
??



ガタンッ!ダンッ‥!



まさに音速で赤い子とさとみくんが消えた。












ジェル
ジェル
ぁ……!

ジェルくんが口を抑えて崩れ落ちる。





ジェルくんの視線の先を見ると、
ななもり。
ななもり。
………!









さとみ
さとみ
………
















うつ伏せにされたさとみくんの頭に銃口が向けられていた。

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