早朝、七時半。約束通り、朝井と夜久は二人で登校していた。二人の周りの人々は、二人が話しながら歩いているのを信じられない物を見ているような目で見ている。そんな中、登校中の高校生だらけの人混みの中を掻き分けて二人の元へやってきた者がいた。
陽気に挨拶をしたのは朝井と夜久の共通の友人、上遠野亜季だった。上遠野は小学校の時、二人と同じクラスになってからずっと仲良くしている。二人が喧嘩した際に止められるのは彼女だけと言われており、色々な人に頼られているが、当の本人は「一度止めてもまたすぐ喧嘩するし意味ない。正直早く呪い解けて欲しい」と思っている。
夜久が簡易的に、夜久の主観も交えながら土曜、日曜の出来事を説明すると、上達野は悪態を添えながら、まるで知っていたと言うような反応を示した。
朝井は怪しくない、と反論したが、それを聞く前に上遠野は後ろから友達と思われる人物に呼ばれ、朝井と夜久の元から離れてしまった。
朝井が怒り混じりの大声を出すと、周りが騒がしくなった。周りがざわざわし出した為、朝井は一度冷静になり、梅雨の占い結果を思い出す。梅雨はいつも話さないような人と話すと、視野が広がると言っていた。そこで朝井は後悔した。「乙女座の占いも聞けばよかった……」と。朝井の視野が広がったとしても、夜久の占いに対しての偏見がなくならないとまず話にならない。だが試しにやってみようという精神で、梅雨について話すことにした。
朝井は必死に夜久を説得させようとしたが、夜久に言われたことに、少し納得してしまった。確かに、おかしな話ではある。嫌いな人との腐れ縁をどうにかしてほしい、という状況で、朝井と夜久は別れる、というのを目的にしている。なのに、仲良くすればいいというのが梅雨の提案である。それでは、別れるのが目的ではなく、ずっと隣にいても不快ではないようにするために嫌いという感情をなくす、というのが目的に変わってしまっている。
そう言い、夜久は歩みを早め、どんどん遠ざかって行ってしまった。朝井の「……意味わかんねえ」という呟きは、高校生の人混みに消えていった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。